-どこ?
彼から送られてきたLINEがスマホの画面に表示される。
だけど、そのメッセージを開いて返事するなんてできない。
あたしはふぅ…とため息をつく。
そして、視線を上げる。
『あ、、、れ?』
すると、その視界に見えた景色におどろく。
この公園…
あたし、来たことある。
周りをキョロキョロと見まわすと、大きな滑り台と2コのブランコ。
あたしは立ちあがると、ゆっくりとブランコに向けて歩いた。
そして向かって右側のブランコに座った。
ピンポン…
その時、またスマホが鳴った。
あたしはスマホの画面を見た。
-どこ?
また同じメッセージが届いていた。
だけど、あたしはスマホを握りしめたまま、その画面を開く事ができなかった。
そして、ブランコに座ったまま、あの日のことを思い出していた。
彼に別れを告げた…
あの日のことを…
そんなことを考えていたら、あたしは謝らなきゃいけないって思った。
握りしめていたスマホの画面を開いた。
そして…
-ごめんなさい。
ひとことだけ、メッセージを送った。
するとすぐにメッセージが既読になり、返信が来た。
-どこにいんの?
画面を開いたまま、返信ができない。
きっと、彼はあたしを追いかけて外に出てきたんだ。
がむしゃらに…
走り回ってる。
ガラにも合わないのに…
だけど、そうさせてるのは、、、あたしだ。
『ちゃんと会って、、、話さないとダメ、、、かな。』
彼を傷つけたのは、あの日と今日の2回。
きっとこれ以上、傷つけてはいけないって思った。
あたしはゆっくりとスマホに文字を入力していった。
『ふぅ…』
そして書き終えると、ゆっくりと息を吐いた。
『うん。大丈夫。ちゃんと会って謝ろう。』
あたしはスマホを見つめて、メッセージの送信ボタンを押した。
-公園
たったひとこと。
これで彼が気付くかなんて保障はない。
だけど、彼なら気付いてくれる。
あたしは空を見上げた。
『ちゃんと、、、謝ろ。』
うん。
彼を傷つけたことに違いはない。
あの日も、今日も。
だから、あたしはちゃんと責任をとらなきゃいけないんだ。
しばらくあたしは、ブランコに座ったまま、空を見上げていた。
ギーギー…
と、ちょっと錆びたブランコが音がする。
だけど、この公園に聴こえる音はそれだけ。
『…はぁ。』
小さくつく溜息さえも響くほど、静かな公園。
ザッザッザッ……
公園の奥から、走る足音が聞えてきた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
走って乱れた呼吸も聞こえてきた。
そして…
「……理恵?」
背後から、あたしの本当の名前を呼ぶ声が聞こえた。
あたしは、少し揺らしていたブランコをピタッと止めた。
そして、小さく頷く。
「……よかった。」
彼の言葉に、あたしは何も言えなかった。
よかったって、、、なにが?
いいことなんて、なにもないじゃない。
あたしは彼を傷つけたのに…
「…隣、いい?」
彼はそう言うと、あたしの返事も聞かずに、隣のブランコに座った。
そして、深呼吸をして、呼吸を整えてる。
だけど、あたしは何も言えず、視線を落とした。
「理恵…?」
『……。』
「ホントに、、、理恵なの?」
彼の言葉に、あたしは、、、また小さく頷いた。
すると彼が小さく笑う声が聞こえた。
「ははは…そりゃ、よかった。」
彼の言葉の真意がわからない。
あたしは俯いたまま、黙っていた。