No.052 2022.5.7(土)

ボーダーズ/堂場瞬一/文春文庫/2021.12.25 第1刷 900+10%

「検証捜査シリーズ」が完結し、本作が新シリーズの幕開けとなる。上梓は作年末。客年は5月に堂場瞬一の驚愕ハードボイルド「ピットフォール」で全てをチャラにするほど感動したのが、本作の解説で評論家の池上冬樹氏の文章で腰が抜ける程驚く。そうなのか? あの作品はそんなバックボーンがあったのか!?今更だが(笑)……確かに、アメリカの新人の邦訳だと言われたらすんなり信じたかも知れない。

 

 新シリーズという事で警視庁特殊事件対策班(SCU)の特殊性をアピールする作品になっている。

 班長(キャップ)結城新次郎警視。49歳。公安出身で謎に包まれた私生活と孤高の刑事を思わせる。ラストでの趣味には思わずニヤリ。

 副長格の綿谷亮介警部。組対部出身で二世警官。武術の達人で将棋アマチュア三段。

 朝比奈由宇巡査部長。唯一の女性刑事。名古屋から上京し将来初の女性部長を目指す30歳。卓越した指導力と作戦立案力を持つ。

 最上功太巡査長。まだ20代でデカイ図体とドライブテクニックにパソコンに秀でている。

 本作の主人公八神佑警部補。30代後半、小学3年生の双子の女の子の父だが、授業参観で中学生が来たとからかわれる位の童顔。妻綾も元警官。故郷の兄も警官。美玖・美桜の双子。

 捜査一課出身で一年前の後輩の転落死の記憶を引きずっているのだが、特殊な視野の広さを誇り、目の記録が特殊能力。しかし、自分ではあまり気付いていないようだ。

 

 八神の異動後初の事件は、銀行立て籠り事件。その被害者が40年前の警官殺害容疑者で逃亡中の男だった事から事件はドンドン拡大していく。

 この事件の拡大は、担当課のボーダーつまり境界が曖昧な「どこの課の担当でもあり、どこの課の担当でもない」領域になっていく。そして、そのボーダーラインの事件を解決に導く「SCU」の役割が大きくなっていく。

 

 単純な立て籠り事件が、犯人と被害者が顔見知りであり、逃亡中の容疑者に資金を提供していたのが「公安のグループ」と突き止めていく。

 闇ネットを舞台とする恐喝・脅迫事件。その犯人達に資金提供していた公安警察官。明確に解決に至らない事件。八神達の役割が重大になっていくのだった。

 

 銀行殺人事件の被害者は、犯人の大学同級生。警視庁SCUの八神は真相を追い……。特殊能力捜査班の活躍を描く、文庫書き下ろしの警察小説新シリーズ。

 

—内容紹介を引く……

 東京新橋で銀行立て籠り事件発生。男性客が刺殺された後、犯人を逮捕した。警視庁SCU(特殊事件対策班)八神は、キャップの結城から被害者藤岡を調べるよう指示される。藤岡は、40年前に機動隊員殺しで手配され、公安に追われた男だった。八神は現場の銀行へ…。犯人、被害者、公安、複雑に絡む事件の真相とは? 個々の特殊能力を発揮して極悪に挑む最強の刑事チーム始動! 書き下ろし警察小説……。

 

 それぞれ読者能力を持つ警官が組んだチーム。曖昧な境界を引き受け事件を解決に導く者たちの活躍は日本伝統の「忍者モノ」的な面白さを期待させるのだ。期待のシリーズの開幕!!

 ★★★★★