No.141 2023.12.27(水)

地雷グリコ/青崎有吾/角川書店/2023.11.27 第1刷 1,750+10%

 短編5篇を纏めたトータルで長編になるというスタイル。連作短編でもなくラストシーンを感慨深く味わった後では、これは一人の少女の心に秘めた全ての友情物語なのだと思っている。物語の核心にあるのは、友情。変わらぬ、変わろうとしない大きな友情をめぐるロールプレイング・ストーリーなのだ。

 

 物語の構図としては、5種類のゲームを天才的なきらめきで勝ち進み、念願の勝負、つまり簡単に言えば「ラスボスとの戦いに勝利」する、いわば昔ながらの博打打ち映画的な印象を受けつつ、主人公や登場人物たち、そして舞台となるのが高校というのが微妙な色合いか。

 

 ゲームの内容が凝りに凝っていて、最後のけじめのゲームはポーカーなのだが中味はスティング並のコン・ゲームになっていてかなり際どい。実際にはあり得ないのだが、一気に読んでしまう吸引力を持つ危ない作品かも知れない。

 

 それにしても、こんな戦いが平然と「ゲーム」と呼ばれる方に戸惑う。小説なのだから何を持ってしてもOKなのだ。それは十分理解しているのだが。と、ここまで書いてやっと作者の意図に気付く。

 

 あくまでも「ゲーム」。それが本質なのだ。

 

—内容紹介を引く……

 射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。

 平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは……ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5篇。地雷グリコ/坊主衰弱/自由律ジャンケン/だるまさんがかぞえた/フォールーム・ポーカー

 

 頭脳戦を文字で読むのは、目から情報がドンドン列を成して入ってくるので情報量の取捨選択があまり得意ではなくさらにいえば脳みそのCPUが劣化している高齢者にとっては、ゲーム理論を理解するのに時間がかかったり、これはいくらなんでもルール違反だろう、と最初に戻ってルールを確認したり……。頭の柔らかい若者には大歓迎される、といえば語弊があるがやはり読書は頭の柔らかなうちに訓練しておくのが一番だな、と本書とは違った感想を持ってしまった。

 ★★★★1/2