No.115 2021.9.13(月)

ブラックリスト/伊兼源太郎/実業之日本社/2019.10.30 第1刷 1700+10%

 前作「密告はうたう」の続編であり、監察シリーズの第2部になる。

 前作で行確の対象だった皆口菜子が本庁に上がり、人事一課の佐良と同じ中西班に異動した。

 その中西班に能馬が新たな命令を下す。大型特殊詐欺犯罪の対象者リストが、捜査二課の主導する捜査本部から流出した。

 特殊詐欺事件の捜査本部に詰める捜査員からの流出を疑った監察は、まず捜査本部詰めの警官たちから行確を開始した。

 最初の日、行確中の捜査員の自宅を見張っていた佐良と皆口に向けて、一発の銃弾が撃ち込まれた。その銃弾は、「殺す気になれば二人のどちらかを殺すことが出来た」と佐良は、自分たちが追う対象が公安関係者の存在を疑う。その上、ライフルマークが過去の殺人事件に使用されたものと一致。その銃弾は、2年前に当時の部下であり、皆口の婚約者だった斎藤が射殺された同じトカレフから発射された弾丸だった。

 行確を続ける内に浮かび上がったのは正義感の強かった元警察官・榎本の存在だった。榎本は、正義感が強く、犯罪加害者に対して犯した罪の責任を「目には目を、歯には歯を」のそれ相応の報いを受けさせないとならないと考える警察官だった。……

 法の目をかいくぐる悪党は、犯した罪の責任を負わせなくてはならない……。

 そして、背後に「互助会」と呼ばれる【警察官の自警団組織】があることが浮かぶ。法律では裁けない悪党に正義の剣を振り下ろす謎の集団の存在だった。

 

 第二部になり、公安マターと思われた斎藤の死にも絡み、ますます混迷の度合いを増す【警察の闇】に飛び込んでいく監察官・能馬、須賀、佐良と皆口の奮闘を描いている。

 新しいメンバーとなった毛利の怪しさが際立っているのが気になるのだ。

 警察の闇を照らす明かりとなるのか。

 

……正義感なんて警察には不要だ。責任感があればいい……。

 

【互助会】解明はなるか。佐良と皆口の闘いは続く。

 

—内容紹介を引く……

 次々“犯人”が殺される。裏切り者は誰?

 容疑者は全ての警察官。

 大型特殊詐欺犯罪の捜査資料が流出し、資料に記された逃亡中の詐欺犯たちが次々と変死する事件が起きた。警察内部からの情報漏洩を疑う人事一課監察係の佐良は同僚の皆口菜子とともに、マルタイ(対象者)の刑事を行確するが、突如何者かに銃撃を受け…これは捜査妨害か脅迫か。

 組織内の熾烈な暗闘も見え隠れするが、本当の悪者はどこに潜んでいるのか!?……

 

 現代は「匿名の正義漢が巷に満ちあふれる時代」であり、何かのキッカケで個人の思惑で、何の関係もない一般の人が「あいつが犯人に違いない」との流言卑語により命を奪われるキッカケになる危険性を含む社会になっている。

 匿名の正義。SNSに溢れている「……だろう」「……に違いない」「……が気に入らないから懲らしめて」。この異常な【リンチ(私刑)】社会に一石を投じるシリーズとなっている。

 このような世界にしたのは、便利さを追求する余り心を忘れ去ってしまった企業論理が罷り通る世界にしてしまったのは、誰あろう、普通の“悪意のない市民”に他ならない。

 警鐘を鳴らす意味でも、本シリーズはトンでもない凄みを持ったものと断言する。

 ★★★★★