また古い記事ではある。どっちにしろ備忘録なのでアップするタイミングがずれてしまったと思っていればいいのだ。

 

No.016 2020.2.2(日)

騒がしい楽園/中山七里/朝日新聞出版/2020.1.30 第1刷 1500+10%

 2020年1月にデビュー10周年を迎えた中山七里。それを記念して2020年に前代未聞の新作単行本12ヶ月連続刊行し、出版社横断でキャンペーンを実施している。本書はその先陣を切る12ヶ月連続刊行企画第1弾。

 転勤により埼玉県の片田舎ののどかな幼稚園から、都内の様々な問題を隠している幼稚園に赴任してきた幼稚園教諭・神尾舞子が直面するのは、幼稚園で飼育している動物が何者かの手によって殺害され、それが一件ではなく立て続けに発生してしまった事態だった。

 神尾舞子は、「岬シリーズ」や「闘う君の唄を」で脇役で活躍し今回は主役に抜擢(!)された。巻き起こる様々な問題に、真正面から立ち向かう清々しい姿が印象的だ。

 しかし、残念ながらミステリとしての醍醐味は少々味が薄まっている。犯人像にしても最初から見え隠れしていて、手厳しいミステリーマニアには向かないかもしれない。むしろ、幼稚園教諭の仕事ってこんなに大変なんだよ、といったような「仕事ものがり」として読んだ方がいいような印象だった。犯人は、とてもシンプルで陳腐。

 

—内容紹介を引く……

 見えない魔の手から子どもたちを守ることができるのか?埼玉県の片田舎から都内の幼稚園に赴任してきた幼稚園教諭・神尾舞子。待機児童問題、騒音クレーマー、親同士の確執…様々な問題を抱える中、幼稚園の生き物が何者かに殺される事件が立て続けに発生する。やがて事態は最悪の方向へ…。12ヶ月連続刊行企画第1弾!

 

 本書を読んだのはもう2年前になるのか。この年は本当に12ヶ月連続新刊発行の偉業を成し遂げた中山七里は、現在も着々とミステリー戦線のトップランナーの地位を堅固にしている。本書のようなミステリーなのかご近所小説なのか線引きの難しいラインアップもドンドン上梓していて、ミステリー作家の枠を超えた活躍を続けている。

 それにしても、この幼稚園の姿を読むにつけ日本の子育て環境の酷さは愕然とせざるを得ない。なんとかならんものか。少子化対策よりもその前段階の「結婚推奨対策」が大切なような気がする。となると、結婚するための収入確保が十分かという問いかけも発生する。結局最大の問題点は「非正規雇用」と「派遣労働者法」の廃止、正社員にすることが賃上げも何もない彼ら彼女らへの支援なのではないか。

 

 いろんな意味で本書は「考えさせられる」のだ。人口減少を論じるのも大切だがまず減少しない若者たちへの支援に対外支援の半分でいいからするべきでは、などと思うのだ。

 ★★★★1/2