何と何と!! 今頃アップするのか、お前は〜!(と個人的に突っ込む)。しかし、本書は何度読んでもいい。いいものはいい。いいぞ!読めよ!!とくどくど書いておく。何事も連続が大事。

 

No.160 2021.12.19(日)

同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬/早川書房/2021.11.25 第1刷 1900+10%

 本作品は、間違いなく全ての熱き本読み心に必殺の一撃を加える超弩級作品だろう。

 冒険小説の真髄を得て、冒険小説・ミステリ・成長物語と全てを備えた(兼ねてはいない。全部それぞれ強力に持っているのだ)本来の意味での小説の王道を行く孤高の物語だ。

 更に青春成長小説に加え、戦争とは何か、生きる意味とは誰に与えられる意味なのかを深く考えさせ、驚愕の真相に至る恐るべきミステリとしての完成度がほとんど文句のつけようがないほどの完成度なのだ!!

 

 第二次大戦下の旧ソビエト連邦の小さな村。村で唯一の猟師の母と幼い頃から猟に出ていた少女セラフィマ。ある日、獲物を仕留め猟から村を望む場所に戻ったのだが、村は敗残ドイツ軍の略奪を受けていた。母とセラフィマの目の前で村の住民を蹂躙され、母はその光景にセラフィマから猟銃を受け取りかまえたのだが……。一発の銃弾が母を一瞬にして骸に変えしまう。

 相手は狙撃兵だった。凄腕の。

 たった一人の生き残ったセラフィマがドイツ兵たちの慰み者にされる寸前、赤軍がドイツ兵たちを掃討する。指揮していたのは戦争で効き指を吹き飛ばされた元狙撃兵の女性兵士イリーナだった。しかし、イリーナ達は村人や母の死体を、村もろとも焼き払われてしまう。

 セラフィマ残ったのは、村人と母の命を奪った憎きドイツ兵、そして無惨にも村を焼き払ったイリーナへの憎しみだった。その青白き復讐の炎が彼女を狙撃兵への道に向かわせたのだった。

 

 旧ソビエト連邦が舞台になり、敵役が当然「なんの理由もなくただ単に劣等スラブ民族掃討」に掲げ共産主義をこの世から抹殺しようと侵攻したナチス・ドイツ。そこに立ちはだかるのは、わずか4人の狙撃兵訓練を受けた少女たちと、その分隊を率いる〈元狙撃兵〉の教官。そして、帯同する監察のコサック人の少女もまた狙撃兵だった。

 この6人が戦火燃え盛る「スターリングラード攻防戦」から転戦し、ポーランドでの命を的にした究極のサバイバル戦へと突入していく。

 

 描かれるのは、狙撃兵という究極の戦士の生きる姿と、それが年端も行かない家族を皆殺しにされた復讐に燃える少女たちの葛藤と、次第に〈人殺し〉から〈スコア〉へと変貌していく自らの内面の葛藤を鋭く描きだす。

 

 「アガサ・クリスティー賞」受賞した脅威の新人の作品なのだ。

 戦場の全て、生きていく糧の全てを内包し、少女たちの姿を通して戦争を、人生の目的を考えさせられる作品。

 

 本作品が長編第1作であり、なおかつ「第166回直木三十五賞」の候補作になっている。

 

—内容紹介を引く……

 発売前からSNSで話題を呼び、刊行一週間で5万部を突破。

 史上初、選考委員全員が5点満点をつけた、第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作

 独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。

 「戦いたいか、死にたいか」……そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵”とは?

 

 第二次世界大戦は、世界を真っ二つに割って起こった人類史上類をみない悲惨な戦争だった。

 しかも、本書で触れているように「唯一女性兵士が前線で戦闘部隊兵士として従軍した戦争」だった。何故、旧ソ連は女性兵士を前線に投入したのか。どうしてそうせざるを得ない国政だったのか。

 これ以降、世界の軍隊で前線兵士の女性兵士が増えていくきっかけとなったのかは、定かではないが。あくまでも、後方支援要員だった女性が、武器を手に取った戦いの幕開けを描いた本作は、やはり衝撃の作品であることに間違いない。

 傑作、この二文字以外に本作品を語る術はないのかも知れない。

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