No.133 2021.10.16(土)

民王 シベリアの陰謀/池井戸潤/角川書店/2021.9.28 第1刷 1600+10%

 第二弾、なのだけど読んでいないのでその辺はよく分からない。続編と言うからには、設定が同じなのだろうと思う。登場人物たちは、主人公の内閣総理大臣・武藤泰山。その息子・翔。股肱の秘書・貝原茂平。官房長官・狩屋孝司。泰山の妻・綾。無敵の公安警視・新田。なんとなく、水戸黄門の構成人物群にも似ているような……。

 そう言えば、池井戸潤の作品を読むのは随分久しぶりだ。やたらと経済的な物語に比重が片寄っているようで、おまけに一種のパターンが確立しているようで、主人公が強大な敵の前に風前の灯火に陥る。しかし、起死回生の技術が認められ最後は大逆転で勝利を得るのだ。これも、どうみても水戸黄門的なイメージが強くなってきて、経済的小説があまり得意ではなく、進んで読むことも無くなってしまった。

 江戸川乱歩賞でデビューした作家だけに、実力も折り紙付きなのだが。読者と作家の微妙な相性というものか。

 

 今回の物語は、武藤内閣の改革の目玉となっていた元プロレスラーのマドンナ・新環境大臣高西麗子がパーティーのスピーチの最中に突然暴れだし、入院してしまう。その血液中から「未知のウイルス」が見つかる。

 ワクチンも処置薬もない全く未知のウイルスに翻弄される泰山。

 ようやく大学を6年賭掛けて卒業した息子の翔も民間の食品メーカー・アグリシステムに就職し、それなりの日々を送っていたが、課長命令で京成大学の並木又次郎教授の研究室に、共同開発している“マンモス”風味の人口肉の試料を届ける。そこで、並木教授がいきなりウイルスに感染している場面に遭遇し、研究室の眉村紗英が襲われる寸前に助ける。

 

 シベリアの永久凍土から発見されたマンモス。そのマンモスの肉からウイルスが。その発見をしたのは、二十年前に亡くなってしまっていた紗英の父……。陰謀論で国会前を占拠する群衆と対峙する泰山。

 未知のウイルスにどうやって対応するのか。まるで、現在置かれている日本の新型コロナウイルスに翻弄される状況を彷彿とさせる物語の展開に、どうなることやらとワクワクして読む。しかし、思いもしない展開になっていき、そして事件の真相は……。

 

—内容紹介を引く……

 人を凶暴化させる謎のウイルスに、マドンナこと高西麗子環境大臣が感染した。止まらぬ感染拡大、陰謀論者の台頭で危機に陥った、第二次武藤泰山内閣。ウイルスはどこからやって来たのか?泰山は国民を救うべく、息子の翔、秘書の貝原とともに見えない敵に立ち向かう……!!『民王』待望の続編!……。

 

 あくまでも個人的な印象なのだが、ウイルスとの戦いは二の次で、描かれているのは政治の世界では薄汚い駆け引きがあり、本当に喫緊の政治が出来ない状態だとか。陰謀論の台頭に対処するとか。そっちの「対人間同士の戦い」に重点が置かれているのが妙に思えた。それに、陰謀論は違うと言いつつ、結論的にはどうしても「ウイルスばらまき陰謀」がよく分からないままだった。面白いのか、ちょっと……。

 ★★★★