No.055 2023.5.5(金)
虹果て村の秘密/有栖川有栖/講談社文庫/2013.8.9 第1刷 552+10%/初出2003年10月ミステリーランド/2012年8月講談社ノベルス
ジュブナイル・ミステリ、いわゆる少年少女つまりティーン・エイジを対象にした『ミステリーランド』の一作として講談社レベルから発刊されたシリーズの1つ。
主人公たちは小学校6年生(12歳)の上月秀介と二宮優希。
秀介は刑事の父がいて警察官の厳しさを知る。将来の夢は推理作家。親子の警察官は目指さないようだ。
優希は売れっ子推理作家二宮ミサトが母親だが、秀介とは反対に将来の夢は刑事。
二人は夏休みを利用して優希の母親の実家でミサトの夏の仕事場に旅行に出る。ミサトは九州での講演会が終わり次第合流するつもり。
二人が向かったミサトの『別荘』は、都会から遠く離れた山村。虹のかかる伝説にちなみ『虹果て村』と呼ばれている静かな里だ。
二人をミサトが合流するまでとの約束でミサトの従妹の藤沢明日香が保護者に。
しかし村は高速道路建設の賛成派と反対派に二分されてしまっていた。
のんびりと夏休みを過ごすはずの山あいの村。そこでにわかに巻き起こる殺人事件。しかも現場は密室…!?
将来の推理作家の卵と刑事の卵は、真っ先に駆けつけてみるのだが……。
赤い真っ赤な大型バイクに乗る島谷光が休暇中の刑事だったり、台風の接近で崖崩れの為に村全体が閉ざされてしまったりと、本格ミステリならではのお約束設定。
限られた人数。閉ざされてしまった狭い地域。犯人はこの中にいる!
秀介と優希の謎解きが始まる!!
虹の伝説はどうした、等とつまらぬツッコミは置いといて。
非常に丹念に練り上げられたプロットに唸る。見事なまでに解決に至る道筋を優希が解明していき、犯人に迫っていく様はまさに『探偵=刑事』物語の構成。
次第に明らかにされる真実を、滔々と語る優希の風格さえ感じさせる語り口はお見事。脱帽の解決は全てを謎に答えを出すのだった。
ジュナイブルはハッキリ言って初めての読心地で、元気一杯の子供たちにすっかりやられてしまった。これは実にローティーンに読んでもらいたいミステリであり、本を読むのは楽しいことだと感じてほしい為の入り口のような作品だろう。面白いぞ!!
他のキャストとしては…
風間春彦/カメラマン。建設反対派
笹本慎/郷土史家。建設反対派
島谷豊明/宇宙人を信じる陶芸家。反対派。光の叔父
烏賊崎恭子/中学教師。賛成派
国松正志/工務店と民宿経営。賛成派
西尾陽一/工務店経営。賛成派
小室/駐在
新堂連太郎/雑誌記者。二宮ミサトのファン
陶芸家の出で立ちには大笑いしてしまう。なかなか面白いキャスト配置だ。
—内容紹介を引く……
「夜に虹が出たら人が死ぬ」という村の言い伝え通りに発生した“密室殺人”の謎に少年&少女探偵が挑む!
懐かしくも新しい本格ミステリの逸品。
推理作家になるという夢を持つ12歳の秀介(しゅうすけ)は、同級生の優希(ゆうき)と虹果て村で夏休みを過ごす。「夜に虹が出たら人が死ぬ」という村の言い伝え通りに、男性が密室状態の自宅で殺害される。折しも土砂崩れのため犯人と共に村に閉じこめられた二人は知恵を振り絞り謎に挑む! 本格ミステリの名手による珠玉の推理。
本作品は2003年10月「ミステリーランド」シリーズの単行本として刊行され、2012年8月にノベルスとして刊行されました。
そうそう。
ミステリとどうして『ミステリー』の音引きが無いのか、初めて知った。なるほど『ミステリー』となるとイベントになるのか。ミステリー・ツアーとよく言うものなあ、等と頷いてしまっているのだ。
★★★★★