今年も残り3日。あっという間だった。いろんなことがあり過ぎていまだに信じられない思いでいる。これを読んだ頃は、まさかこんな年末になるとは思いもつかなかった。今更だが未来がどうこう言っていられるうちは幸せな日々だったんだ。

今年は現在141冊読んだ。その中でも田村隆一のエッセイに出会ったことは僥倖と言えるかもしれない。若いひとはそもそも「田村隆一って誰?」かもしれないが。

 

No.033 2023.3.26(日)

ぼくのミステリ・マップ 推理評論・エッセイ集成/田村隆一/中公文庫/2023.2.25 第1刷 1200+10%

 ひたすら読む。戦後すぐの混乱期に「暇をもて余していた海軍上がりの」詩人田村隆一が、ひょんな事から再生期の早川書房で雑誌の編集・翻訳にあたる事に。

 発刊当時『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン日本版』の黎明期ならではの壮絶で爽快な『翻訳ミステリ』に賭けた証言者、田村隆一流ミステリ論。

 読んでいると次々に懐かしい本や作家の名前が出てきて、ひたすら笑いながら読み進む。

 そのうちにどうしても読みたい本が出てきて、真夜中にぐったりするくらい探し回ったりするのだ。こんな体に悪い事はないかもしれない。

 

 それにしても、中にも出てくるのだがひたすらバイタリティの塊のような編集者・翻訳者の方々がいたからこそ翻訳書が読めたのだと感謝しきりだ。

 クイーン、クリスティー、ロスマク、スピレーン、そしてチャンドラー……。綺羅星のように輝く作家たちの名前が尽きない。ありがとうの言葉以外に見当たらない。

 

—内容紹介を引く……

一篇の詩を生むためには、

我々はいとしいものを殺さなければならない

これは死者を甦らせるただひとつの道であり、

われわれはその道を行かなければならない……(「四千の日と夜」より)

 『荒地』同人として鮎川信夫らとともに日本の戦後詩をリードした国際的詩人にして、早川書房の初期編集長兼翻訳者として海外ミステリ隆盛の基礎を築いた田村隆一(1923-1998)。

アガサ・クリスティの翻訳に始まり、「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」の出発、「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」の創刊……その比類なき体験による、彼にしか語りえない数々の貴重なエピソードとユーモアは、詩(ポエジー)と戦慄(スリル)の本源的考察を通して、やがて21世紀の我々をも刺し貫く巨大な文学論・文明論へと至る……人類にとって推理小説(ミステリ)とは何か?

 聞き書き形式でポーからロス・マクドナルドまでのクラシック・ミステリをガイドするロング・インタビュー(旧版『ミステリーの料理事典』『殺人は面白い』所収)を中心に、クロフツ『樽』やクイーンの四大『悲劇』といった翻訳を手がけた名作の各種解説、クリスティとの架空対談、江戸川乱歩や植草甚一にまつわる回想、生島治郎・都筑道夫ら元早川出身者との対談など、推理小説に関する著者の文章を単著初収録作含め精選し大幅増補した、まさに田村流ミステリ論の決定版。生誕100年記念刊行。

目次

1(ぼくとミステリー大いなる誤訳人生/ミステリは特別料理ー味、知恵、ユーモア/ぼくの好きな料理ーこれがグルメの条件です)/2(F・W・クロフツ/アガサ・クリスティ/ジョルジュ・シムノン/エラリイ・クイーン)/3(金銭出納簿ー江戸川乱歩/風呂の中のミツマメー植草甚一/諸君、ユーモア精神に心せよー対談・生島治郎/EQMMの初期の頃ー対談・都筑道夫)/資料編 〈解説〉押野武志

 

 田村隆一(タムラリュウイチ) 1923(大正12)年東京生まれ。詩人。明治大学文芸科卒業。第二次大戦後、鮎川信夫らと「荒地」を創刊。戦後詩の旗手として活躍。詩集『言葉のない世界』で高村光太郎賞、『詩集1946〜1976』で無限賞、『奴隷の歓び』で読売文学賞、『ハミングバード』で現代詩人賞を受賞。ほかに『四千の日と夜』など。推理小説の紹介・翻訳でも知られる。1998(平成10)年没。

 

 とにかく、知らない名前がなくて非常によかった、ような気がする。これが全く知らない名前ばかりならば、いったいお前は何を読んできたんだとなってしまうから。

 若い人たちにこの「手引書」はどんどん読んでほしいと心から願わずにいられない。読みなさいね!!

 ★★★★★