遡っているのではない。忘れているのだ。

 

No.124 2021.9.29(水)

炎上フェニックス 池袋ウエストゲートパーク17/石田衣良/文藝春秋/2021.9.10 第1刷 1600+10%

 池袋の又は東京のトラブルシューター(タカシ言)の真島誠。本業は西口で母と営む果物屋。ライターでもあるマコトは、池袋の街で生まれ育ち地元の工業高校を出て、父親の遺した果物屋を営む母親の従業員として働きながら持ち込まれる「若者たちのトラブル」を、持ち前の機転と頭脳で解決する。

 シリーズも本作で17作目になるのか。最近は、石田衣良の小説はこのシリーズしか読んでいない。少し、歳を重ねて来ると、なんとなく〈説教くさい〉のが鼻についたりしてしまうので、それも仕方ないかもしれないし、実年齢がどうも合わなくなってきているのも……(笑)。

 収録は4篇。今回はいずれも池袋のキング・タカシの依頼が発端になっている。Gボーイズの王様もコロナの影響が及んでいるらしいのが、少々笑ってしまうが、このご時世ならではの設定だろう。

 池袋のキング、Gボーイズの王様・タカシ。神速のジャブストレートが鬼の顎を貫く。

2人の絶妙のコンビネーションが冴え渡るシリーズの最新作は、コロナに喘ぐ池袋を舞台に、半グレの魔の手に誘い込まれたシングルマザーとその恋人でマコトとタカシの先輩を助ける……【p活地獄篇】。

 自分より弱い女子供だけを狙い、正面からぶつかり怪我をさせ逃げる黒ずくめの男を探しだし、Gボーイズが闇に連れ去る……【グローバルリングのぶつかり男】

 巣鴨のマクドナルドを集合場所にして、3つの仕事を掛け持ちで働く男の依頼は、自転車を使った宅配の商売道具の自転車にいたずらされているというもの。そして強盗事件も頻繁に起こり、マコトはトラブルシューターとしての仕事に入る……【巣鴨トリプルワーカー】。

 そして表題作……【炎上フェニックス】は現代病とでも言えそうなSNS地獄に陥ってしまう怖い物語。こんなことが日常茶飯事になっては、もはや日本は底辺国になってしまうのかも知れない、等と呆然としつつ読む。

 女子アナに執拗にストーキングしていた制作会社のAD。正体を突き止められ田舎に連れ戻されたが山で自殺。直後から女子アナに対するありとあらゆるSNS上での誹謗中傷が始まる。女子アナのホノカ。耐えられず休職し精神的にも追い詰められるが、池袋のキング・タカシを紹介され、マコトもホノカの“炎上”の始末に付き合う。そして直接会った一人の男がホノカの生命の脅威に…。Gボーイズと警察の警戒の中、そいつはラジオの公開討論会に乱入しガソリンをぶちまける!!SNSに蔓延る鬼退治。タカシの神速もジャブストレートが炸裂する!!

 

—内容紹介を引く……

 ……炎上、上等!

 ストーカーと化したADが自殺。

 「悪女」「尻軽」と大炎上し焼かれた女子アナ。マコトが接触したネット放火魔のなかに真の“モンスター”が存在した!ネット社会の闇にGボーイズが打った手とは……炎上フェニックス。

 半グレ集団に脅かされる“パパ活女子”……P活地獄篇。

 女性ばかりを狙う“ぶつかり男”……グローバルリングのぶつかり男。

 トラブルに巻き込まれた“デリバリー配達員”……巣鴨トリプルワーカー。

 現代を鮮やかに切り取る4編収録。

累計440万部突破! アニメ化、2.5次元舞台化…勢いが止まらないIWGPシリーズ第17弾

 

 上にも書いたが、やはり年齢差が気になる時期かも。タカシやマコトの世界と既に45年の差が付いてしまっている。この差は知識としての「年代常識が理解できない差」になってきている。面白く読むのだが、読了後に来る虚しさ、とでも言うべき喪失感は少しの努力ではとても乗り越えることは不可能かも知れない。あくまでも、読み手の問題なのだけど。でも、石田衣良さんは1960年生まれだから、こっちとの年齢差は僅か4歳。これは、実年齢より精神年齢の差、なのだろうか。嘆かわしい。

 

 ちなみに、衣良さんの公式Twitterで本作を語っている。

 池袋シリーズはなぜ17冊も続くのだろう

 ぼくが考える長寿の秘密とは

 キャラクター、時代のテーマ、文体……

 それに意外なポイントとは?

 やっぱりみんな

 ヤンキー文化が大好きなんだね

 17冊目も絶好調

 炎上 上等のIWGPシリーズです……衣良

 

 これはやはり個人資質だな(笑)。炎上 上等!!しっかり読み直すか!!

 ★★★★★