順番があいかわらず前後左右(笑)にズレる。あくまでも個人の備忘録なので。

 

No.123 2022.9.26(月)

ペットショップ無惨 池袋ウエストゲートパーク18/石田衣良/文藝春秋/2022.9.10 第1刷 1600+10%

 15歳のノッポでガリガリの少女サチは、認知症の上に脳梗塞で寝たきりになった祖母の介護に追われ自由になるのは深夜の数時間。池袋東口の新しいクラブで知り合ったマコトはサチに忍び寄る黒い影から護ることに。Gボーイズのタカシと共に。……常盤台ヤングケアラー

 

 近くのコンビニでバイトしていたバングラデシュからの語学留学生クマールが雑司が谷の寺の賽銭泥棒で逮捕された。池袋署刑事課の吉岡の依頼でタカシを巻き込み張り込みすると……神様のポケット

 

 北東京一のハッカー・ゼロワンから初めての依頼が飛び込む。マッチングアプリで知り合ったアズサのバックにいる売春運営の正体だった。タカシとGボーイズも参戦しゼロワンの恋が落ち着くのを確かめるが……魂マッチング

 

 久しぶりに連絡の来たタイトから頼みたい事のあると言う人を紹介される。ペットの「ゆりかごから墓場まで」を謳い文句に展開する悪徳CGグループを徹底的に叩こうとするNPOの主宰者で女優の高坂鳴美だった。高坂の案内で出掛けた目白のCGペットの実態は動物の命をただの金儲けにしか思っていない実態だった。更にマコトにもうひとつの過激なNPO法人からも依頼が来る。高坂のNPOから抜けた同じ女優の関戸和沙だった。和沙と共に乗り込んだCGペットのブリーダーは地獄の様相でマコトはCGグループへの敵意を新たにする。……ペットショップ無惨

 

 シリーズも18作目ともなると完全にルーティン化してくるのか、真新しさはない。はっきり言ってしまうと「結末の分かっている一時間ドラマの勧善懲悪パターン」をなぞっている事になる。いわゆる『水戸黄門パターン』だ。

 マコトへの依頼から調査へ相手の素性が判明しGボーイズの王様タカシとのコラボで目的を完遂しおしまい。

 しかし、それはここまで来ると読んでいる方にとっては案外快感になっている事でもある。つまり読者の『こうでなきゃ』と言うあまりにも過酷な現実に『溜飲を下げる』作用を与え、更にマコトとタカシの犯罪とも取れる行動が『明日への希望』さえも感じさせてくれるのだ。

 その意味でも、こういうシリーズは貴重なのかも知れない。一時間で解決するTVシリーズかも知れない。だがそれを楽しみに待つファンも確実に多くいるのだ。

 辛い現実からの逃避かも知れない。それでもファンは真島誠=マコトと都立工業高校の同級生で池袋の王様タカシのスカッとした「悪徳成敗」が見たいのだ。

 

—内容紹介を引く……

 かわいいは地獄。「揺りかごから墓場まで」ペットのすべてを業務とするビジネス。その裏でマコトが目にしたのは、吐き気がする現実だった。目白の獣医を訪ねたマコトは、いろいろと問題を抱えているチワワを目にする。飼い主はそのチワワを、とあるペットショップで買ったという。CGペットはペットショップや病院、サロンなど、「揺りかごから墓場まで」ペットのすべての業務をビジネスとする総合商社で、急成長している。だがその裏でマコトが目にしたのは、吐き気がする現実だった……CGペット。表題作他ヤングケアラー、賽銭泥棒、ネットの美人局、悪質ペットショップー次から次へと舞い込む嫌な話に、今日もマコトは覚悟を決める……累計450万部突破の人気シリーズ、最新第18弾!!

 

 ペットショップは心底嫌いな空間でできる限り近づきたくもないし、かわいい〜!!を連発しながら「展示商品」をあたかも命なき物体のように騒ぐものたちには、唾棄すべき感情を持ってしまう。それは確実に一個人の感想ではあるものの、幼い頃から身近に〈働く動物たち〉と一緒に育ちその最後まで見届けてきたからかも知れない。もちろん、偏見だという意識は十分に持っている。全てのペットショップがこうではないだろうし、きちんとしたケアをしている方が多いとは思う。しかし、個人の感情に枷をはめることはできない。

 あくまでも個人の持つ感想としてだが、こんな奴らに容赦はいらない。読んでいて、どうしても偉大なSF映画「猿の惑星」を思い出してしまう。立場が逆転してしまった時に自分が「キャー、かわいい〜!!」と言うような嬌声を浴びて平然としていられるのか。

 ★★★★1/2