No.017 2023.2.12(日)

祝祭のハングマン/中山七里/文藝春秋/2023.1.10 第1刷 1750+10%

 途中まで漫然?と刑事ドラマと思って読んでいた。中山作品の警視庁捜査一課の常連麻生班の名前がちらりと出たりするので。

 それが、自らの父親さえも殺害されてしまった主人公の境遇が一気に逆回転し始める。

 中堅ゼネコンの課長二人が続けざまに事故とも事件とも取れる急死を受けて担当班になった春原瑠衣は、同じ会社に勤める父親が何かを知っていそうな感触を受けていた。

 明日はしっかり聞こうとした矢先、現場にいた父親の事故を知らされる。クレーンで吊っていた3トンの鉄骨の直撃を受けほぼ即死だった。

 

 勤め先のヤマジへの地検特捜部の捜査も知らされるが、身内の事件の担当は出来ない。

 そんな時、目の前に曰くありげな私立探偵と名乗る鳥海が現れる。

 

 物語は、警察官としてのアイデンティティと犯罪被害者家族としての復讐心が瑠衣の中で相反した感情の渦となって吹き出る。

 

 後半は完全に「恨みはらす」事が前面に出て、仕事人的に進む。瑠衣が『依頼主兼仕事人』というとんでもない飛躍。

 結局、警察官の矜持は「法で裁けない犯罪者は自らのてで葬る」道を選ぶのだ。それもひとつの生き方だろうが、どことなく『心底同意出来ない』のも事実。私刑はけして肯定される事ではない。しかし、それを歴然真っ向否定出来ないのも事実。本当に、何とも結論出来るような軽い問題ではないのだ。

 

—内容紹介を引く……

 法律が裁けないのなら、他の誰かが始末する。

司法を超えた復讐の代行者……それが〈私刑執行人(ハングマン)〉

現代版“必殺”ここに誕生!

 警視庁捜査一課の瑠衣は、中堅ゼネコン課長の父と暮らす。ある日、父の同僚が交通事故で死亡するが、事故ではなく殺人と思われた。さらに別の課長が駅構内で転落死、そして父も工事現場で亡くなる。追い打ちをかけるように瑠衣の許へやってきた地検特捜部は、死亡した3人に裏金作りの嫌疑がかかっているという。父は会社に利用された挙げ句、殺されたのではないか。だが証拠はない……。疑心に駆られる瑠衣の前に、私立探偵の鳥海(とかい)が現れる。彼の話を聞いた瑠衣の全身に、震えが走った……。

 

一 暗中模索

二 疑心暗鬼

三 愛別離苦

四 遅疑逡巡

五 悪因悪果

エピローグ

 

 う〜ん。面白くて一気読みするのだけどその後味があまり良くないような気もするし。でも今回はどんでん返しの帝王は控えめだったので、すんなり読めてしまった。いいのかどうかわからないが。

 ★★★★1/2