No.051 2017.4.18(火)
凍てつく街角/ミケール カッツ クレフェルト/ハヤカワ・ポケット・ミステリ=長谷川圭/2017.2.15 第1刷 1700+税イメージ 1
 相変わらず北欧のミステリーが凄い。本書もデンマークの作家の翻訳本。
 ある事件(最愛の妻エヴァが強盗に襲われ殺害され、それを自分が発見してしまった。事件は迷宮入りしてしまう)をきっかけに休職となり、後悔と自責の念のなかで酒浸りになり生きる刑事ラウン。友人たちの励ましも届かない。運河に浮かべた古ぼけたボート“ビアンカ”で飼い犬のメッフェと過ごす。そんな彼を自暴自棄な酒浸りの生活から引きずり出したのは、友人で行きつけのバーのバーテンジョンソンからの依頼だった。店の清掃を任せていたリトアニアから来た女の娘マーシャが行方知れずになっている。探してほしいというものだった。
 マーシャを探すことになったラウンは、しぶしぶコペンハーゲンの裏社会を訪ね歩くが手がかりは皆無……。唯一手に入った証言からラウンは一人スウェーデンのストックホルムへ飛ぶ。
 裏社会を牛耳るロシア人スラヴロスの率いるギャングの影がちらつく。窮地に立ったラウンはロンドンでの警察研修で知り合ったスウェーデン警察のカールを尋ねるが、ロシア人ギャング団の摘発にあまり乗り気ではない。
 「売春が法律で禁止されている国スウェーデン」。しかし、警察内部の動きは鈍い。
 仕方なく、凍てつく街でたった一人行方不明のマーシャを追う。
 剥製を作ることに取り付かれた男。同居していた男の博打の借金でロシア人ギャングに売られ最下層に落ちて行く若い女性。愛する者の突然の死を受け入れられず、酒に逃れようとする男。
 酔いどれ休職中のデンマークの警官。母親とリトアニアから出稼ぎに来ておカネのために売春に走り悪の組織に売り飛ばされる若い娘。幼い頃の父と母の離婚に母を殺害した過去を持つ剥製に異常に拘る富裕な男。その三人の人生がストックホルムの地下室で交錯する時、人が生きる意味が伝わってくる。
 誇り貴き“ハードボイルド”主人公が、欲と退廃の街をさまよう時、愛と哀しみのバラードが鳴り響く。
デンマーク発、警察小説の新シリーズ開幕!

―内容紹介より引く…
 酒浸りの生活を送るコペンハーゲン警察の捜査官トマス・ラウンスホルト、通称ラウン。ある事情で休職中の彼は、友人から頼みごとを持ちかけられる。二年前から行方不明になっているリトアニア出身の女性マーシャを探してほしいというのだ。家出か、それとも事件か?
 気が進まないながらも引き受けたラウンは、尋ね歩くうちに彼女の失踪に国際的な犯罪組織が絡んでいるのではないかと疑いはじめる。一方そのころ、若い女性だけを狙う猟奇殺人者が獲物を求めて街をさまよっていた…デンマークの人気サスペンス!―

 著者は1966年の生まれでデンマークのコペンハーゲン近郊で育ち、脚本家・映像プロデューサーを経て2006年に作家デビュー。2013年に発表された本書は20カ国で刊行されているという経歴だ。
 確かに、映像的である。ただ、とっても残念な事にハイライトの対決シーンにはもの足らなさと覚えた。すんなりし過ぎ、かも知れない。主人公のタフさは十分に伝わって来るので、劇的シーンのアッサリ感がもう少し派手になればと思うのだが、作品そのものはとても優れたハードボイルド・ミステリに仕上がっている。
 ★★★★1/2