No.198 2015.11.26(木)
群青のカノン 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート2/福田和代/光文社/2015.9.20 第1刷 1400円+税
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 航空自衛隊の音楽体に勤務する佳音を主人公とする、“青春ミステリ”の第2弾。前作『碧空のカノン』は、ブラスバンドが好きなものにとっては、非常に面白く楽しいものだった。この方は、こういうものも書くのかとかなりビックリした。随分と失礼なことなのだが。

 

 本書は確かに「ミステリー」ベースだろうが、全般的には物語色の強い作品かとも感じる。それぞれの章に描かれる「バスが消えた」り、「迷子の幼児の親探し」という謎よりも、そこまでに至る過程の物語の面白さに重点が置かれているような印象を受ける。
 いわゆる“普通小説”のカテゴリーになるのか。カノンと渡会のやり取りが、あるいは次でもっと違う展開が待っているのかと思わせる。その意味で念を押すように、結婚し産休中の“お蝶夫人”狩野夫人が赤ん坊を抱いての登場で、なおさら次は違う展開か、と思わせているのが、妙に楽しみでもある。
 航空中央音楽隊から転属で沖縄へ渡った渡会が、対空機関砲の射手に抜擢される展開には、かなり驚いた。しかしそれも、音楽隊も「自衛官である」のだから当然なのか。カノンがその報告を耳にした時の“涙”は、いったいどこへ繋がっていくのだろうか。
 
 内容紹介を引く…
―鳴瀬佳音は航空自衛隊の音楽隊で、日夜アルトサックスの練習に励む自衛官。陸海空自衛隊合同コンサートに出演するため浜松へやって来た佳音たちは、リハーサルへ向かう。ところが、バスが駐車場から消えてしまい(!?)そのバスには佳音たちの大事な物が隠されていた…。そして、佳音と腐れ縁の渡会三曹との恋についに進展が!? なぜかいつもトラブルを呼んでしまう佳音が仲間たちと小さな謎を解き明かす、読むと元気が湧いてくる爽やか青春ミステリ。―
 
 一言。福田さん。最後の展開は、ちっとも「落ちない」です。こんなラストはひどく陰鬱な終わりの印象になります。マーチングは明るく楽しく元気に。ラストは、笑って終わってほしい、と願います。これじゃ、なんだか、救われないような……。
 ★★★★1/2