2020年7月25日、再再読。初読みの時の感想がこれだけど。感動は変わらないな。
天切りの親分に逢いたいねぇ。これを読んだのがもう6年も前になる。闇がたりの魅力は色褪せることはないのだから。
 

No.042 2014.3.22(土)
天切り松闇がたり 第五巻 ライムライト/浅田次郎/集英社/2014.1.30 第1刷 1500+5%

イメージ 1
オオ! 天切り松のとっつあん、まだ生きていたのか!
と、本屋の店頭で妙にテンションがあがってしまった。
天切り松こと、“仕立屋銀次”の跡目まで言われて、たって固持した“目細の安吉”一家の若い衆(わかいし)村田松蔵を“語り手”とするシリーズも「第一巻 闇の花道」が登場したのは、1999年。続いて「第二巻 残侠」「第三巻 初湯千両」「第四巻 昭和残侠伝」が2005年。それから9年の歳月を経て、天切り松の復活ほど嬉しいものはない。
収録は、例によって“目細一家”の松蔵の兄弟分と親分のエピソードを入れた6篇。指先をツメ研ぎで研ぐ親分・安吉の器量。小頭・二百三高地一番乗りの生き残り“説教寅”。獲物の目の前で仕事する“玄の前”のおこん姐さん。松蔵の“天切り”仕事の師匠・栄治は育ての親“根岸の頭領”の檄に答え、自分を捨てた生みの親“花清”の隠居所へ天切りを仕掛ける。
そして白眉。昭和7年、世界の映画スター“チャップリン”が来日した。その翌日5月15日の夜、犬養首相がチャップリンを官邸に招き夕食会を計画した。海軍士官と陸軍士官学校の生徒による5.15事件のまさにその夜だった。
敵対する検事“おしろい”の白井の挑戦で、“書生常”こと常次郎が、百面相の誇りを賭けて“チャップリン暗殺計画”の阻止に動いた。チャップリンに化けた書生常が官邸で食事中、刺客たちが乱入した。

歴史上の事件と、江戸前の人々が色濃く風俗を残す明治、大正、そして昭和初期の東京を舞台に語る天切り松は、今回も絶好調だった。
人情と義理ごとを後生大事に持ってきた“江戸前”の人間たちの姿に、今では郷愁さえ覚える。
この申し訳なさは、いったいどこから来るのだろうか。
目細の親分の男気や、説教寅の道理は、今こそ必要なのではあるまいか、と思いながら、時に笑いそして泣きながらの読了。
今さらだが、こういう“芸”はやはり浅田次郎親分の真骨頂だろう。見逃せないシリーズ最新作。

―五・一五事件の前日に来日した大スター・チャップリンの知られざる暗殺計画とは…。粹と仁義を体現する伝説の夜盗たちが、昭和の帝都を駆け抜ける。
…喧嘩てえのは力じゃあねえぞ、男意気だ。…

愛と感動の侠客伝。語り口が懷かしい。
★★★★★