No.074 2011.6.6(月)
プリンセス トヨトミ/万城目学/文藝春秋/2009.3.1 第1刷 1571円+5%
 これは「最高傑作」だったのだろうと思う。この2009年の時点では。と、一応弁護しておいて。
 実は、残念ながらこの本へのコメントはあまり良いことは言えない。
 読み方が違っているのか。一人の登場人物への“イライラ”と“ムカツキ”が最後まで尾を引いてしまった。
 物語としても、中途半端に“解決”されてしまい、【どうして?】がとうとう解決されずじまいになってしまったような、消化不良を感じている。この作家の物語性の出現がとても不思議なので、真剣に読まないとまずいかも知れない。
 「鴨川ホルモー」に留保を付けてしまった手前、どうしても“構えて”しまい、その意味でも少し読み方を変えないとならないかも知れない。
 今回の登場人物はとても良く理解できるし、構えていない自然さが造形の良さを促す。しかし、たった一人の“主人公”は別。
 会計検査院。新聞などではよく目にするし、ニュースでも聞く名前だがさてその実態はと言われると、本文にあるように「知らない」と言うしかない。読んで分かったのは「三権から独立している機関」、つまり“行政”“立法”“司法”の【三権】からまったく独立した機関と言う不思議な立ち位置の事。誰がこの会計検査院を統べるのだろう。会計検査院自身が統べる?すべての【権】から独立して、超然と佇んでいる機関?
 それでいて「強制権はない」らしい。あくまでも。では、何の権限もなく政府の予算執行の問題点、矛盾点を指摘するのか?
 詳しくは本文参照。と言うほかない。
 物語は、三人の「会計検査官」が東京駅から西へ“のぼる”。大阪府庁とその周辺の団体への会計検査のため。
 副長・松平。無類のアイスクリーム好きで一日5本のアイスクリームを食べながら、眉の縦皺と冷静な糾弾で論戦も辞さない“鬼の松平”と呼ばれる男と、その部下二人。
 一人は、ずんぐりむっくりの“ミラクル鳥居”と呼ばれる検査官。ラッキーが服を着ているような男で、別の意味での“エース”でもある。
 もう一人は内閣法制局からの出向で、フランス人とのハーフである旭・ゲーンズブール。クールビューティの評判を院内で持つ国家公務員試験の主席合格者。
 この三人が巡り会ったのは「社団法人OJO」という不明の法人だった。
 対する大阪代表は、空堀中学校2年B組の生徒だった。生まれたのは男としてだが、子供の頃から「女の子になりたい」と願掛けをしていた真田大輔は、遂に決意し学校へ「セーラー服」で通学する事に決める。その大輔の幼友達・茶子は、大輔の守護者だった。この二人の関係を軸に大阪編があり、そこに会計検査院の三人が絡んでいく。
 大阪には得たいの知れない高揚感がある。気取らない庶民の町であり、経済の町だ。その大阪という「地方」がもし一つの目的を持った男たちの「ある者を守り続ける」事が伝統だったとしたら。
 物語の概要は大きい。が、しかし、これはもしかしたら“大阪人にだけしか理解できない行動”なのではあるまいかと、次第に思うようになってしまう。
 大阪の人以外に「豊臣秀吉」がそれ程多くの“意味”を持たないのではないか。と。
 「たった一人の気に入らない男」松平。この男の行動すべてが嫌いになってしまう。冷静沈着に“大阪国”を追いつめるのはいい。しかし、絶対に好きにならないタイプ代表のような「立ち居振る舞い」が好きになれない。
困ったものだ。
 この本に関しては、申し訳ないが留保にしたい。キャラクターたちは、十分に立ち上がり歩いて呼吸しているのだけど。殺人事件を扱った推理小説の“動機”がどうしても納得できないように。これだけで、二百万人の“男たち”が“四百年”も続けるだろうか。
 やはり、大阪人の為の物語、なのかも知れないと思うのだけど。どうだろう。
 
ゴメン、やはり分からない部分だと思う。
あ、そうだ。映画は見ない事にするかな。
この「鳥居」の役は、塚地以外に考えられないだろう。それがネックかな。
すみません。大阪の皆様。
北の蝦夷はその辺がよくわかんない(笑)。