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No.016【密姫村】(乾ルカ、角川春樹事務所、2010.10.28、1500円+5%)
 え~と、少し時間が余りました。
 朝からずっと原稿待ちが続いていて、まさかこういう羽目になるとは思ってもいなかったので、手持ち本がこれ一冊です。で、読み終えてしまいました。熟読です。けっしてパラ読みではありません。何回か、後戻りしてみたりで私にしては【非常に】ゆっくりと読了しました。もう、他に「本」は持ってきていません。このまま、待ちが続くようだと“禁断症状”が出ます。活字中毒者特有の「何でも字が書いてあれば読んでしまう」状態に、なります。
 困りました。どうしましょ。
 16時。まだ「今日」が終わるには8時間、確かにみっちりと残っています。でも、4時間は寝るので残りは4時間です。さて、どうしましょ?
 
 乾さんの作品は、現世と幻世の境目が曖昧で、ホラーでもありサスペンスでもあり私小説でもあるという、ある種とんでも本の世界にあるのが魅力。「ホラー」と意識しないでもいつの間にか「ホラー」の世界に引きずり込むのが得意だ。
 今回の物語は、何となく「宙ぶらりん」のまんま、終わってしまったような、取り残され方をしてしまった気がする作品になっている。いいか悪いかは読む人の判断にあるのだろうし、あちこちでかなり「好意的」が読後感や、「非好意的」が評価が入り交じっている。
 主観で書かれているモノを同一の線上で評価することの無意味さを別にしても、個人的には「不満タラタラ」の読後感しか持てなかった。
 最初に書いたように「何回か後戻り」しながらの読書は、記憶にある限り「ロシア文学」以来のことか。どこへ、何の筋で私を引っ張っているのか、トンと見当が付かなかったせいだけど。
 「アリの生態」を観察するために、その村にやってきた山下夫婦。日本には存在しないはずの「アリ」を前年に旦那さんが見つけていた。そして、遭難し危ないところを助けてくれた村だった。
 しかし、医者である妻はどことなく「居心地の悪さ」を感じていた。村人たちは“高齢化が進んでいる”にも係わらず、「医者いらず」で「元気そのもの」の暮らしをしているように見えたのだ。無医村で診療と内心思っていた妻は、健康診断も拒否されることに驚く。「医者はいらん」と。
 その後、「医者はいらん」の衝撃的な事実が明らかになる。
 このあたりから、物語は次第に「変な方向へ」ねじ曲がって行くんだな、と思いながら読む。
 あれ?でも、思っているのと全然違う方向だぞ。
 「天上」の世界の話は、どこをどうとっても「ラブ・ストーリー」であり、許されない恋を貫こうとする二人の逃避行以外に読みとれない。「ホラー」はどうした?「アリ」の正体は、まさか“チラッと”かいま見せる【密姫様】の風体の事か?
 笑劇のラストとでも言うべき、とっても私にとっては「肩すかし」でした。あ、これ相撲の決まり技だ。「肩すかし」、なんという事でしょう。期待が裏切られる様。う~ん。残念。
 新進気鋭の作家と期待していたのだけど、★は付けられない結果に。お~い。もしかして私の読み方が違うの?