雨の平日に。
友人のチェリー(♂)が誕生日間近だったこともあり、帰り際気まぐれに連絡をしたらたまたま近くにいて、また車で送ってもらってしまった。タクシーなら、\8,000をゆうに越える距離だ。
聞くと、弁護士事務所からの帰りだという・・・
嫌な予感は的中。
どうやら今度は、実家で同居している叔父さん(見た目バカボンのパパ)が競馬で借金を作っていたことが判明。その額およそ800万。
しかも金融会社からだけでなく、地元の自治会で集金した金も全力投入してしまっていた。
チェリーの両親は泣く泣く保険を解約し、チェリー自身も再起を図って少しずつ貯めてきた貯金を残らずその返済に充て、叔父さんの友人からの借金はことごとく踏み倒し、過払い金の返還請求をして、ギリギリ完済。悪い意味で築100年超のルックスだった彼の家は、これで完璧に風前の灯、あるいは風の前の塵に同じ、となった。
チェリーといえば、鼠講の被害で夜逃げライフの20代を送った彼である。
金があればいくらでも助けてやりたいが、自分も金には縁がない。しかし、チェリーは金に縁がないというよりも、むしろ見放されているという感じさえしてくる。ここまでの逸材は周囲に類を見ない。いったいこの先彼とその一族はどんな運命をたどっていくんだろうか。
しかも、その日ふたりで寄った焼肉屋のノンアルコールビールが品切れで、どうでもいいオモチャのおみくじが「吉」。無垢で前向きなのが救いだが、常に微妙な不幸の中に生きているのかもしれない。
実際、彼はたまに透けて見える。
誕生日おめでとう、チェリー。
おれはお前を見放さないぜ。