35:トモエ杯 | クラフトPとろのブログ

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クラフトPという名前で、ボーカロイド曲を作っていたり

ボカロ界では時々、突発的にいろんな「祭り」が起こる。
最近で言えば「P名言ってみろ」や「般若心経」「ファミマ入店音」などがあった。

そういうのは以前から時々行われていて、
懐かしいところでは「のぼり棒」「君にスプラッシュ」「わりばしおんな」など、
今まで、大小さまざまな祭りが行われている。

こういう祭りは、いろんなPさんの特徴が良く出て、見てる分にはすごく面白い。
何より、参加してる人がみんな楽しんで作ってるのが伝わって来て、
私は祭りと聞くとホイホイされていつも見に行っていた。

私は既存曲のアレンジなどはあまり得意ではないので、(般若心経は既存曲じゃないけどw)
そういった祭りは面白がりながらも、積極的に参加はしなかったが、
ひとつだけ参加したのが「トモエ杯」という祭りだ。

これは、始まりが面白かったのでじっと成り行きを見ていた。
最初は全く参加するつもりはなかった。


まだボカロ関係の雑誌というものが非常に珍しかった頃、
ヤマハから「ボカロを楽しもう」という本が出版された。
知りあいのPさんや絵師さんやレイヤーさんの事なども出てたので、
私も買って読んでいたが、読んでるうちに一か所、変な文章がある事に気がついた。

それは、トラボルタPの記事だった。

    巡音ルカ曲「トモエ」を発表し、
    わずか2日で殿堂入りしたという実力派のPである。

・・・・おいw 「トモエ」って誰ね?www
うん、ボカロ好きな人ならみんなわかるよね。
「トモエ」じゃなくて、その曲は言わずと知れた超名曲、「トエト」ですw

トラボルタさんには私もクロも、並々ならぬ愛情を持って特別視させて頂いてたPさんだ。
特にクロは、「よつばのクローバー」をカラオケに行ったら必ず歌う。
ボカロに限らず、世の中の全ての曲の中で1位2位を争うくらい好きだと、よく言ってた。
いつだったかは、泣きながら歌ってたのを見て見ぬふりしてあげたこともあったw

私はこの記事をすぐにクロにも見せて、げらげらとあり得ない誤植に大笑いをして、
その時はそれで終わっていた。


しかし、こんな面白い間違いをボカロ界がほっとくはずもなく、
このことはすぐに2chのボカロ本スレでも話題になり、
とうとう、

  「トモエってルカ曲作って2日で殿堂入りさせたらトラボルタPを名乗っていいんじゃね?」

と、天才的な発案をする人が現れたw
そうやって開かれたのが「トモエ杯」である。

私はこの企画の成り行きが面白くてしょうがなくて、
いろんなところでこの企画を紹介して回った。

でも、まだこの時は自分が参加するつもりはなかった。
「トモエ」というタイトルの曲はどうやっても思いつかなかったし、
また今回も、他のPさんたちの祭りを見て楽しむだけのつもりだった。


この祭りは、決められた2日間の間に殿堂入りしたら勝ち・・・というか、
それはもちろん、誰も本気で殿堂入り目指すつもりではないのは分かってて、
ひとつの遊びみたいなものだったので、
参加したPさんには「トラボルタP」っぽい名前が授与されるというのが、その商品だった。

私は祭り開始の投稿日前日まで、ちょこちょこといろんなところでこの企画を宣伝して、
その甲斐あって、仲良しの999Pさんや、読めないPこと(бεб)Pさんも、
この企画に参加してくれた。

そしてその投稿開始日がきた。
私はいつものように会社に行き、普通に仕事をしていたら、

・・・思いついてしまった、・・・「トモエ」という曲を。
あ、これ、結構いい曲になるかもww

一瞬迷ったけど、さささっと頭の中でスケジュール考えて、
もしかしたらショートバージョンなら出来るかもとクロにメールして、

「あのさ、やっぱり参加しようと思うんやけどさ・・・」
「やっぱりねー、早く作っときゃあいいんだよ、まったくさあ」
ちなみに、クロは別にいやがってるわけではない。
いつもこんな言い方なのだw

私は、あちこあこさんが描いてたトエトの絵を思い出し、
あれ使わせてもらえるようにあこさんに言っておいてー、
今夜で曲作るから、字幕とか動画とかは明日よろしくね、とクロに動画は丸投げして、
その日は速攻で帰って、晩ご飯も食べずに「トモエ」を作り始めた。


ボカロ作品作ってる方には経験あるだろうと思うけど、
DAWってたまに・・・時々、いや、よく強制終了するw
こういう作業は、調子がいい時ほど保存をするのを忘れてしまうもので、
2時間くらいの作業が一瞬で消えて、不覚にもマジ泣きした人も多いだろう。

あれつらいよね。もうこの曲作ったらん!とか思うよねw

ところが不思議なことに、しょうがないなあと渋々同じ作業をやり直すと、
2時間かかった作業が、今度は1時間もせずに出来てしまったりする。

あれ?もうできちゃった。なんで?と思うこともよくあったが、
あれはきっと、「ここどうしようかなー」と悩み考えてる時間が、
2時間の作業の内の1時間以上もあったってことなのだ。

ってことはだ、
どう打ちこむかちゃんと細かく決めてれば、めっちゃ早くできるんじゃね?と思って、
家に帰るまでに細かいところまで決めておくことにした。

私は、その日は会社で仕事をしながら、
作業開始したら「トモエ」をすぐに打ち込めるように、
就業中に歌詞を書き、アレンジを決め、帰宅した頃には脳内ではほとんど出来上がっていた。

その結果、ショートバージョンとは言え、
今までの最高速の4時間で1曲が完成した。
オケ打ち込みとギター録音と巡音ルカの調教まで全てで4時間だから、自分では異常に早い。
ふつうはこの作業に2週間かけていたのだから。

クロに音源を渡して、明日までによろしくねと動画を頼んだ。
動画が出来上がって、投稿したのが2日間の終了間際、38分前だった。

クラフトPは30分で殿堂入りする気か!wwwとか本スレで書かれてたけど、
もちろん、んなわけないw
とりあえず間にあった、参加できてよかった。

そしてじっくりと投稿した動画を見たら、
あれ?あこさんの絵が前見た時と何か違う・・・、あれっ?

よく見たら、ルカが頭にかぶってる帽子が猫じゃなくてウサギになってた!
おおおっ、耳が長いっ!!

え?も、もしかして、この動画のために描き直してくれてたのかあっ!
ありがとう、あこさん、クロ。
君たちはなんという本物のツンデレだろう。

そうやって投稿したのがこの作品だ。
「トモエ」です。



この歌詞は、高校時代の友人が、
俺、親にお前は間違って生まれた子だって言われたんよね(家族計画的な意味で)と、
笑いながら話してたことを思い出して書いた。

それってけっこうショックな言われようじゃないかと内心思ったが、
まあ、そういう空気の家庭だったんだろう。
周りで聞いてた友人は「ひでぇ」と言ってたが、本人は面白がっていた。
たぶん、ちゃんと愛されてるのが分かってたんだろうと思う。

「間違いで生まれたトモエ」って言葉を思いついたときに、
彼の事を思い出して、でもお前が生きてるのは間違いじゃないぜという歌詞を書いてみた。


ちなみにこの企画の優勝?は、
アンメルツPと生殺しPのコラボだ。

このコラボは「誤植同盟コラボ」と名付けられている。
どうやら、お二人とも同じ雑誌に載ったけど、写真や名前が間違ってたらしい。
つか、どんだけ間違えたんだ「ボカロを楽しもう」は。
名前の通り楽しませてもらったけどw

この「誤植同盟トモエ」はめでたくJOYSOUNDにてカラオケ配信されている。
すごく手のかかってるもったいないほどの楽しい作品だ。



ちなみに、
アンメルツPは英語ボカロのスィート・アンを使ってメルトを歌わせたことでこの名前がついたらしい。
2chのボカロ本スレで、アンでメルトと紹介したら、
誰かが「アンメルトヨコヨコ」と書きこんだもんだから、このP名になったんだと本人から教えてもらったw

カッコいい曲や可愛い曲も多い、音楽の幅の広いPさんだが、
私は彼の歌詞がすごく好きだ。
すごく思いを込めた歌詞を書かれる。
上辺でいいこと書いたってのじゃなくて、本当に自分自身を書いてる方だ。
つい共感しすぎてしまって、油断したら泣かされそうになる。
「あなたのようになりたい」や「レンメルツP」という曲をお勧めしておこう。


この他にも本当にいろんな「トモエ」が生まれてた。
巴投げのトモエや、トモエという妹の歌や、戸に萌えるマニアックフェチなトモエやら、
ほんとにPの数だけ様々なアイディアが出るもんだと感心したものだ。


あと、この企画ですごいなあと思った方はたくさんいるんだけど、
この人のことはどうしてもどこかで書きたかった。

それは、この企画を発案し主催したPさんで、
めでたくこの企画でP名をつけられた「とらぼのれたP」さんだ。
私は敬意を込めて、この方をPさんと呼ぶ。

この方は、音楽は全くの初心者で、わざわざこの企画のために巡音ルカを買ってきて、曲を作り、
勉強してオケを作り、調教して、動画を作って、そして見事に作品に仕上げて投稿なさった。
本当に全くの初心者なので、作品のクオリティはやっぱり初心者なんだけど、
それってさ、めちゃめちゃすごくね?

ボカロ界の盛り上がりって、有名Pのクオリティ高い作品はもちろんそうなんだけど、
こういう、とにかくやってみるぜ!
みんなやらないなら俺がやってみるぜ!って人たちに支えられてるんじゃないかなと思った。

アホみたいな企画だけど、
こういうのをどんどんやってみる人たちや、
思いついたことをいろいろ作ってみる人達、例えば妙なランキングとか、
埋もれ曲発掘のおススメ曲集とか、こないだ書いた聴き専ラジオとか、

そんな、直接ボカロ作品じゃない創作をやってる人たちのパワーが、
本当にすごいって言うのもボカロ界の大きな柱のひとつなんじゃないだろうか。


とらぼのれたPさんのも貼っておこう。
敬意を込めて。