人様にそういうところを見せるのはみっともないという気がしたので、
あまりネットで口にしたことはなかったけど、
恥ずかしながら告白するが、投稿から1年過ぎた頃から、いつの間にか私は、
再生数とマイリス数をすごく気にするようになっていた。
クロには、おまいは本当は誰よりも再生数を気にしてるよねと、
これはこれで元気づけようとしてだろうけど、そう言われたことがある。
どうやら隣で見てるクロにはバレバレだったらしい。
投稿を趣味にしてる人が、再生数を気にするようになると、いろんなことがストレスになってくる。
作る時にも純粋に楽しんで作れないし、伸びてる曲に嫉妬もする。
油断すると、自分が作りたい事よりもウケ狙いを優先しそうになる。
作ってるものにだんだんと不純物が混ざってゆくような気がしてきて、
曲を作って、これは本当に自分が作りたかったものかと自問自答する事も増えた。
今だから告白するけれど、
13cmを作ってうpした時、いろんな方が日記やブログに書いてくれたが、
投稿時期が近い同じ黒リンの某有名曲を引き合いに比較されることも多くて、
13cmよりこっちの方がカッコいいねと書かれてることもあった。
その曲には何の罪もないし、私は大好きな曲だったけど、
しばらくは意識的にその作品を見ないようにしてた時期もあった。
そしてこの頃から、今まで名前を聞いた事のないPさんが突然現れて、
あっという間に殿堂入りする事も多くなっていた。
なんとなく、以前からいた自分としては、
学校の運動場の隅っこで新しい遊びを数人でやってたら、
だんだん他の人たちも参加してきて、そのうち学校みんなでやるようになって、
とうとう全国大会まで行われて、自分たちでは手の届かない体育会系の人たちが、
メダルをかっさらって行ったような、
そんな気持ちもないではなかった。
私の中である種のあきらめというか、これはもう伸びるのは無理だなと思ったのは、
「何もなかった顔で」を投稿した時だ。
この曲は自分が作りたいように作った。それは自信があった。
こう作ったら伸びるかなとか、そういう色気はなく作れたし、
反面、自分でも出来がいい作品だなという、そんな手ごたえのようなものがあった。
この作品が伸びなかったら、自分がニコニコで伸びるのはもう無理だろうなと思った。
ニコニコの投稿では、投稿してから2日後くらいまでにどう伸びるかがポイントだと思う。
初動でカテゴリーランキング100位以内に入るか、それが何日間続くか。
100位以内から落ちたら、そこから浮上する事はまずない。
それは多くのニコ厨の皆さんが、カテランから曲を探すことが多いからだ。
ボカロがすごく好きで、自分で良曲を探して回ってる方にとっては、
タグやおススメなどを巡って曲探しをするのは当たり前の方法だけど、
それはやはりかなりのボカ廃の探し方であって、
大多数のリスナーは、再生数から曲を探すものだと思う。
自分だって、例えば深くは知らない東方関係の動画を見ようとか、
エンターテインメントカテの動画を見るときには、
やっぱりランキングや再生数で見てしまう。
埋もれてる作品を発掘しようという意識は、
そのジャンルに対してある程度以上の思い入れが出来てからのことだろうと思う。
「何もなかった顔で」はたしか、3日くらいカテランに残って、
再生数は7千位だったと思う。
もちろんこれは、今思えば、非常にありがとうございます!と感謝する数字だが、
当時の私はこの数字に感謝しながらも、
自分が数万再生するのはもう無理なんだなとも思った。
これで私はちょっとあきらめがついた。
開き直ったともいえるかもしれない。
今思えば、「何もなかった顔で」があっという間に数万の再生をしていたら、
きっとその次に「テレホでネスケ」は投稿してなかっただろう。
そんなふうに遊んでる余裕はなく、
私はたぶん、何かを見失って「何もなかった顔で」に似た曲を作っていたかもしれない。
きっとこれはこれで良かったことなのだろうと、今は素直にそう思う。
ツイッターや日記や掲示板などで、よく有名Pへの憧れ、殿堂入りへの憧れ、
そういうものを書いたPさんの言葉を目にすることがある。
正直な気持ちだろうと思う。
いろんなPさんがいろんなストレスを抱え、生活の中心に創作活動を置き、
仕事してる時も、ご飯食べてても、風呂に入ってる時もいつも創作の事を考え、
大変な努力をして時間をかけて作品を作って、
それを投稿して、でもやっぱり思うようには伸びなくて、
それでも、そんな作品を何度も投稿し続けるのは、
投稿した後の2日間くらいの、いろんなリスナーからの褒め言葉がまた欲しいからだと思う。
そしていつかは、それが2日間じゃなくて、1週間になり、1か月になり、1年になり、
いつまでも話題にされる作品になる日が来るんだと信じてるからだと思う。
反面、私はよく思うが、
投稿する曲が毎回殿堂入りするようなPさんは、
一体胸の中にどれほどのストレスを抱えているのだろうとも思う。
自分くらいの位置に居るPには実感できなかったことだったけど、
想像を超えるストレスじゃないだろうかと思う。
リスナーは優しくもあり、残酷でもある。
いきなりプロと比べてダメ出しされることもあれば、
非常に狭い観点から非難されることもある。
前作と似てると笑う人もいれば、前作と違うとがっかりする人もいる。
もし自分が投稿した曲が、3日くらいで殿堂入りしてしまったら、
私は次にどんな曲を投稿するだろう。
伸びた曲と同じような曲を作るだろうか、それとも全然違う曲を作るだろうか。
そして、その次の作品が全然伸びなかったら、私はどれほど落ち込むことだろう。
私はそのストレスに耐え、次回作のプレッシャーに耐え、
そして、ちゃんと次回作もきちんと伸びてるPさんたちは、
それはとってもすごいことだなあと思う。
ボカロ作品っていうのは、
伸びてる人にも、伸びてない人にも、それぞれにそのPさんの想いがある。
決して単純に、伸びてない人が手を抜いてるのでもないし、
伸びてる人が鼻を高くしてるわけでもない。
それぞれに、その位置でのストレスや、誇りや、想いや、こだわりがある。
誰もが一生懸命作っているし、
そしてどのPさんも、自分の作品がとても好きなはずだ。
DECO27さんの曲の歌詞にもあるけど、
Pにとって、自分の曲っていうのは、自分の子供である。
出来が悪くても評判が悪くても可愛いし、
出来が良すぎて評判が良すぎても、その欠点も自分は知ってる。
こんなに大きく肥大化したボカロ界だけど、
そのひとつひとつは、君となんら変わらないただの人間でできている。
このブログにいつもペタをつけてくれるみなさん、いつも読んでくれてありがとうね。
どうやら、歌い手さんも多く読んで頂いてるようだから、
1曲、知り合いのPさんの曲を紹介します。
歌い手さんだけじゃなくて、全ての創作者のみなさんへ。
よかったら聞いてあげて下さい。