23:伸びない曲 | クラフトPとろのブログ

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クラフトPという名前で、ボーカロイド曲を作っていたり

自分の曲がなぜ伸びなかったかっていうのは、今になってみればよく分かる気がする。上手く言えないけど、今はそれでよかったとも思う。

思えば、今まで自分が好きだったミュージシャンの曲は、アルバムのB面の2曲目(自分的に一番地味な場所・・っていうか死語)だったり、ヒット曲のカップリング曲だったりした。私はちゃんと自分好みの曲を作れてていたのだと、いい方に解釈しておくw

音質的、クオリティ的なものも、もちろんある。それはちゃんと身の程を理解できてる気がする。私は他のボカロPさんに早く追い付きたかった、と以前書いたが、それは今でも・・・つい、この間までも変わらなかった。

特に最近のボカロ曲はすごくレベルが高い。3年前、私が投稿始めた頃にこのレベルだったら、きっと自分は投稿していなかっただろう。ここ1年くらいのニコニコの企業っぽい雰囲気も、初めて見たのが今だったら、嫌っていたかもしれない。

今、ボカロPやってる方で、自分は何で伸びないかなあと悩んでる方は多いだろう。私も表向きは平然を装ってても、内心悔しいなあと思ったこともよくあった。

兼ねてから思っていたが、私は世の中の大抵の曲はいい曲だと思う。ソラで歌えるくらいに覚えてしまえば、人はたいていの曲は好きになるんじゃないだろうか。

では、あとはクオリティの問題なのかと言うと、それもまたそうではない。めちゃめちゃクオリティが高いと個人的に思うけど、伸びてない曲はいくらでもある。そういうことは今、ボカロ界の誰もが知っている。

それはまた、実際の音楽界でもよくある事のように思う。私が一番好きなミュージシャンは小山卓治と言う方だけど、周りで彼を知ってる人は一人もいない。

数年前のニコニコでは、「次は伸びる曲を作ります」と、狙ってヒットを出したPさんも確かいたように記憶している。でも、今は無理だべと、素直に思う。

今のニコニコで、メジャーデビューを目指してない、そういう野心のないおっさんボカロPが、楽しく創作活動をやっていく方法は、みんなに気に入られる大ヒット曲を作ることよりも、今まで自分が作りたいように作ってきた作品を、いつも聞いてくれる人を大事にする事じゃないかな。前にも書いたけど、そんな創作活動が一番幸せな活動だと思う。

反対に、プロ志向のPさんたち、メジャーを目指す若者Pさんたちは、ボカロを踏み台にでも何でもして、なりふり構わず上を目指すべきだとも思う。

やり方が汚いと言われても、売名のためにボカロブームを利用したと罵られても、とにかく貪欲に上を目指していくべきだ。

聴衆の好みを徹底的にリサーチし、そのニーズに答える売れるための曲を作ってゆくべきだ。自分の好みは二の次にしてでも。


私は音楽でプロになったこともなりかけたこともないが、プロとして仕事をするときの厳しさってのは、他の仕事でも同じだろう。

世の中のオヤジたちは、誰もがどこかの世界でのプロだ。その仕事に妥協は許されないし、利益を確実に出してこそのプロだ。儲かる見込みの根拠がないと世に製品は出せない。

プロになりたいのなら、製品は売れるものを徹底的に作り上げるべきだと思う。世間は、そういういろんな世界のプロが集まってできている。誰もが自分の好みを排除し、売れるためのものを作っている。音楽業界だって何ら変わるものではないだろう。


いつも仲良くしてくれた磯Pが言ってた。ニコニコの投稿は、擬似的な市場体験でもあると思う、伸びなかったらそれは必ずどこかに原因があると思います、と。

きっと、クオリティが高くて伸びないPさんが伸びない原因は、売れるための、ニコニコ的にいえば、伸びるためのマーケティングの不足ではないだろうか。

そしてそれはきっと、単純に音楽が好きで作ってるPさんにとっては、どうでもいいことなのかもしれない。

プロになることがゴールだと思ってないPさんにとっては、伸びる曲を作るよりも優先すべきことは、自分が作りたいように作ることだ。だから私は、今のニコニコで伸びなくても、それは全然気にすることはないと思う。


中学高校の頃は、世の中のミュージシャンはみんなやりたい音楽をやってると思っていた。でもきっとそれは、一握りの、ある程度売れて余裕ができたミュージシャンだけだったのだろう。

私はボカロ界を体験して、その界隈のすみっこでいろんな人を眺めて、本当に聞きたい音楽、作る人が本当に作りたい音楽と言うのは、今はもうアマチュア界にしかないんじゃないかとさえ思った。

私はここ3年くらい、ほとんどプロの曲を聞いていない。ボカロの「めっちゃ作りたかった感」を知ってしまったら、あまり聞いてて面白いと思わなくなったし、ドキドキもしなくなった。どのプロ作品を聞いても、販売戦略企画会議を通ってきた作品に聞こえて仕方がない。

そういうPさんは多いだろうなと言う気がするんだけど、自分で一番作りたかった作品が一番伸びてる作品、じゃないよね。一番出来がいいのが伸びてるのでもないだろう。

うちでは「やきとりはちゅね」が一番再生は多いけど、一番作りたかったのは「遠いいざなみ」だし、一番出来がいいのは「何もなかった顔で」「ブラインドレック」だ。

今作りたいものを作って、それが伸びてるPさんはすごく幸せなPさんだと思う。でも、思い出してみたら私もすごく幸せだった。

こんなに何曲も作りたいもの作りたいように作って、それを評価してくれる人がいて、見知らぬ土地で誰かのipodで再生されたり、部屋の掃除をしながら鼻歌で歌ってくれたり、通勤の車のカーコンポから流れていたり、そんなことは奇跡としか思えない。

大学の時に私じゃプロは無理だと自覚した時に、そんな夢は断たれてしまったのだと思っていた。


事あるごとにいろんなところで書いてるので、そろそろありがたみが薄れた頃だろうと思うが、私は、私の曲を聞いてくれた皆さんに本当に感謝している。

君たちはよく私に「ありがとう」と言ってくれたが、本当に救われたのは私の方だ。

あんまり言うともっとありがたみが減るのでここら辺にしとく。でも、ありがとう。

伸びないボカロPさん、君のやってることは間違ってない。クオリティが負けてないと思うのなら、伸びてないことは媚びてないことと同じだ。自信を持って!