『特等添乗員αの難事件I』 松岡圭祐著 清原紘(イラスト) 角川文庫

 278p

掟破りの推理法で真相を解明する水平思考に天性の才を発揮する浅倉絢奈。中卒だった彼女は如何にして閃きの小悪魔と化したのか? 鑑定家の凜田莉子、『週刊角川』の小笠原らとともに挑む知の冒険、開幕!!(amazon)

 

掟破りの推理法で真相を解明する水平思考──ラテラル・シンキングに天性の才を発揮する浅倉絢奈、22歳。新人ツアーコンダクターとして国内外を飛びまわる彼女は、旅先で発生するトラブルから難事件まで、予想もつかない手段で瞬時に解決する。中卒だった彼女は如何にして閃きの小悪魔と化したのか? 鑑定家の凜田莉子、『週刊角川』の小笠原らとともに挑む知の冒険、ここに開幕。人の死なないミステリ最高峰、αシリーズ第1弾!(Kindle)

 

ラテラル・シンキング(水平思考)とロジカル・シンキング(垂直思考)が双方に影響し合いつつ、最終的にはどちらかというとラテラル・シンキングで問題を解決していく物語です。

この小説の主人公浅倉絢奈は天才的なラテラル・シンキングの持ち主で、型破りとも言える推理法で問題を解決していきます。

例えばこの物語の冒頭に「ホールケーキを3回だけナイフを入れて8等分にするにはどうするか」という有名な問題が出てきますが、これはラテラル・シンキングを用いることで簡単に解答に導くことができます。

「これは簡単だ!すぐに分ったよ」という方ほど、先を読んで欲しいです。

扱う事件が大きければ大きいほど、その爽快感が増します。

 

とはいえ浅倉絢奈は秀才でも超優秀だったわけでもなく、ごく普通の添乗員です。

それがどうして次々に難事件を解決するようになるのか、その過程も面白いです。

特殊な才能を持っていても、それを見出してくれる人に出会わなければただの宝の持ち腐れになってしまうわけで、浅倉絢奈も最高のシチュエーションで大きく影響を与える人たちと関わっていきます。

時としてラテラル・シンキングはまやかしとも捉えられがちなので、下手をすると無用なものとして一掃されてしまいます。

でもある場面では必要不可欠であったりもするわけで、そこがこの物語の魅力となっています。

とてもテンポが良いので、どんどんラテラル・シンキングに慣れていきます。

 

そしてこの小説を読む上で忘れてならないのが「凛田莉子」の存在です。

松岡圭祐さんの『万能鑑定士Qの推理劇』を読んだ方ならすぐにわかるはずです。

この小説もとても面白く、映画化もされているので、別の機会にゆっくりご紹介します!

二つの物語の全く個性の異なる主人公が出会い、難事件を次々に解決します。

発端は身近に起こりそうな出来事ですが、次第にスケールが大きくなって行きます。

そして旅行代理店業界を巻き込むほどの大事件へ。

さらにより個性的な登場人物が物語をどんどん面白くさせて行きます。

 

私は『万能鑑定士Qの推理劇』から読んでいたので、凛田莉子が登場しただけで「松岡さんすごい!」と感激し、対照的な浅倉絢奈の性格や思考方法にしっかりハマってしまいましたが、もちろんどちらから読んでも面白いはずです。

ミステリーですが、人が殺められることはないので、そういう場面が苦手な方にも純粋に推理を楽しんでいただけます。

どの話も「そう来たか!」となること間違いなしなので、ミステリー小説で鍛えたロジカル・シンキングを駆使しつつ、ラテラル・シンキングで導く異質なミステリーの沼にハマりたい方は、ぜひ読むことをお勧めいたします!