『人の財布〜高畑朋子の場合〜』 第四境界著 双葉社

 264p

 

「完全新感覚」ミステリー小説
書籍内の登場人物からメールが来る!? 
小説内のサイトを実際に調べてみると……
物語が読者の日常を侵蝕するーー。

あらすじ
夜中に何げなくフリマサイトを眺めていた主人公は、とある商品に目がとまる。
それは、高畑朋子という人物の保険証が入ったままの、中古の財布だった。主人公は、娘を誘拐された高畑朋子という母親、当時ニュースでも取り上げられていたこの誘拐事件を思い出す。
なにかに吸い寄せられるように、その財布を購入し、入っていた保険証やレシートを手掛かりに当時の事件の真相を解明しようと奮闘するのだったーー。 

話題作を続々と生み出す第四境界の代表作『人の財布』が待望の書籍化! 
『人の財布』は、中身が入った財布を購入するところから体験が始まる全く新しいゲームとして、多数のTV番組や雑誌で話題に。今なお販売と完売を繰り返しており、最長で半年待ちになるほど、注文が殺到している作品です。

書籍版である本作では、ゲーム版はと異なる物語が展開。レシート調の帯に包まれた財布型小説となっており、フリマサイトで買った他人の財布を開き、保険証やレシートなど、その中身を確認していく、という体験を書籍という形で表現。その財布の元の持ち主に迫っていく主人公の奮闘を追体験することができます。

また本作品には、『人の財布』とは全く異なる、第四境界が手掛ける“新たな物語”も収録されています!

初めての作家さんです。

とにかく想定からして意表をつかれます。

さまざまな工夫がされているので、折り込まれている物の一つ一つに驚きがあります。

ゲーム版があったのですね。

今までにない読書体験をしたい方にはお勧めです。

『いい子のあくび』 高瀬隼子著 集英社

200p

 

第74回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞

芥川賞受賞第一作。
公私共にわたしは「いい子」。人よりもすこし先に気づくタイプ。わざとやってるんじゃなくて、いいことも、にこにこしちゃうのも、しちゃうから、しちゃうだけ。でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人をよけてあげ続けるのは、なぜいつもわたしだけ?「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作(「いい子のあくび」)。

郷里の友人が結婚することになったので式に出て欲しいという。祝福したい気持ちは本当だけど、わたしは結婚式が嫌いだ。バージンロードを父親の腕に手を添えて歩き、その先に待つ新郎に引き渡される新婦の姿を見て「物」みたいだと思ったから。「じんしんばいばい」と感じたから。友人には欠席の真意を伝えられずにいて……結婚の形式、幸せとは何かを問う(「末永い幸せ」)ほか、社会に適応しつつも、常に違和感を抱えて生きる人たちへ贈る全3話。

高瀬さんの2作目です。

ごく普通の人の生活を描いた短編なのですが、どこか違和感を覚えます。

確かに「割に合わなさ」はあって、特に女性にはこの感覚はつきものです。

だからこの主人公は多分正しいことをしていル、それは分かるのです。

それでも結果はどうも後味の悪いなんともやりきれない感じがしました。

 

結婚式に出ないお話は、理屈では分かっても同調できませんでした。

言っていることは確かにその通りなのです。

でもここでそれを振りかざすことは良いことなのだろうか、と考えてしまいます。

それは社会に迎合してしまっているせいなのでしょうか。

どの作品も分かるからこそ共感できないという、複雑な感じがしました。

 

読みやすいのだけれど、なぜかとても読むのに時間がかかる小説です。

今の状況には合わないのかもしれませんね。

もう少し若かったらまた別の捉え方ができるのかもしれませんが。

女性であるが故に我慢してきたことはたくさんあります。

そしてそのツケがまさに今押し寄せているのも、理不尽だなと感じます。

ただそれをどこにぶつければ良いのかもわからない、というのが現実です。

同情を買っても今更どうにもならないし、なんか愚痴を言いたくなってしまいます。

それがこの本の狙いだったりして。

『杏のパリ細腕繁盛記』 杏著 新潮社

 112p

 

今まで生きてきて、初めて自分のことが好きになれそうな気がする――。
36歳、海外移住を決めた。子ども3人と犬を連れて、行先は最先端の流行と伝統が詰まった宝箱のような、大好きな街パリ。でも、到着して気が緩んだその日から、私はポンコツになった――。子どもたちの自転車の特訓、LAへ飛んでアカデミー賞授賞式に参加、深夜ジグソーパズルに熱中する大切なひとりの時間、ドラマ撮影のための家族そろってのフィンランド滞在、子育てを見守ってくれた愛犬の看取り……ドタバタながら愛おしい日々、そしてこの先叶えたいこと。9年ぶり、待望のエッセイ集。

ドラマ、映画、CMで活躍されている杏さんのエッセイです。

一度本屋さんで見かけて、次の日買いに行ったら売り切れでした。

それ以来ずっと読みたかった本で、今回は数ヶ月待って図書館で借りました。

とにかく行動力がすごいです。

子どもを3人抱えてパリへ移住するなんてそう簡単にはできないです。

 

経済力があってのことではありますよね。

そしてたびたび日本に帰国して、撮影ではフィンランドに3ヶ月住むとか。

その間子どもを連れて行くこともあれば、フランスでお留守番のこともあります。

これは普通の主婦には到底できないことです。

やはり何よりも財産と収入があってのことだなと感じてしまいました。

 

エッセイとしては面白くて、フランスの様子もよくわかりました。

子育てをする場所としては良さそうです。

また周囲の方々も温かいからできるのかもしれませんね。

引っ越しを決めてからフランス語を習っていらしたそうです。

女優さんとしてのお仕事もある中で、意志の強い方だなと感じました。

ついていった子どもたちも大変だったろうけれど、現地に馴染んでいましたね。

この先帰国されるのか永住するのかはわかりませんが、等身大のパリをもっと知りたいです。