日本の歴史と伝統を護る会のブログ -2ページ目

日本の歴史と伝統を護る会のブログ

主に当会ホームページにて紹介している記事を再掲しています。

 京都にある僧がいた。その僧は母に対しては至極孝を尽くしていた。
 家は貧しかったが、その母は生魚を好んで食べ、その時の食卓にこれがなければ、食べようともしなかった。なので僧は常に生魚を買って母が食べられるようにした。しかしその時の白河上皇は生き物を殺すことを禁止しており、なかなか魚を手に入れることはできなかった。食卓に生魚が並ばないので僧の母はほとんど食を絶ち、疲労困憊することあたかも死んでいるかのごとくであった。
 そんな母の状態をみかねた僧の気持ちは悲嘆の底に沈み、耐えられず桂河へ行き、みずから二匹の小魚をすくいあげた。しかしそれを官吏の者が見つけ、お触れに反したということで捕らえた。官吏は魚と一緒に役所へ僧を連行した。
 法吏は僧の罪を問い質した。僧は涙を流して言った。
  「(一般的に)法が禁じていること皆が守るものである。ましてや私は仏門に身を置いており、その戒律を破ったことは、(法律の面はもちろん)その方面からも当然罪に服すべきである。だけれども母は老いてしかも病を患っており、魚の肉でなければ食に手をつけない有様。今仮にこの魚を放ったとしても生き返ることはないだろう。もしこれを母の元へ送るという私の願いをお聞き願いくださり、母が食に箸をつけたと聞けば、私は刑に服するとも恨みに思うことは毛頭ありません」
 その言葉遣いは丁寧であった。僧の言葉を聞いていた官吏等もついに皆感激に泣き出した。
 この話は上皇の御耳に達し、金と絹を送って僧を釈放した。

クリップ公式サイト「孝の為に戒律と法律を破る