梶原しげるの「プロのしゃべりのテクニック」
あぁ残念な話し方
2010年12月24日 Nikkei BP
「与党は今回の支持率低下を深刻だとして、党員の引き締めに躍起です。菅総理はさらに厳しい政権の舵取りを迫られることになりそうで、今後の成り行きが注目されます」(某テレビニュース)
「だとして」の「として」。普通ではまず聞くことはないがニュースには頻繁に登場する「として」。「官邸では東アジア情勢での緊急事態の発生もあり得るとして」のようにしばしば使われる常套句。「として」とは、何をどうして?というのか。普通は「受け止めて」ではないのか?
また、「政権の舵取り」という紋切り型表現も問題だ。海運業に従事するものが国民の何パーセントか知らないが、
何かにつけて政治を一業種になぞらえるのはもうやめたらどうか? 「成り行きを注目する」などと他人事のように言わず、お前らメディアがきっちり取材して報道しろ!との声はないのか? 「○○には当分、目がはなせませんね」という紋切り型もおなじみだ。しかし、それを口にしたアナウンサーやキャスターは、目がはなせないと言った舌の根も乾かぬうちに、そのニュースから目をはなし、次に伝えるスポーツニュースの原稿に目を移しているじゃないか!
「現場は報道陣や近所の人達で黒山の人だかりとなっています」 (某テレビニュース)
冬の夜の事件ならまだしも夏の昼日中でもこんないい方を耳にする。群衆がほぼ全員白いTシャツ姿なのに「黒山」なのか? 疑問が残る問題な紋切り型の表現だ。メディアの影響は個人に及ぶ。我々の日常会話がメディアのせいで「紋切り型」におかされてしまっているとすれば大問題だ。
陳腐な表現が人の心を離す 拙著『口のきき方』『そんな言い方ないだろう』(いずれも新潮新書)にも詳しく書き「警鐘を鳴らした」にもかかわらず、テレビのニュース番組には、いまだに紋切り型で陳腐な表現が「あふれかえって」いる。
ニュースはスピード勝負。表現を吟味している暇がないから、どうしても、マニュアルに当てはめた言い方が蔓延しやすい。その点は同情する。しかし、取材者や、伝え手が、実際に感じたことを自分の言葉、自分の表現で伝えてくれたらもっと状況をリアルに感じ取れるのになあ、と残念に思ってしまう。
スポーツ選手の「応援よろしくお願いしまーす」、イベントや何かで感動した観衆がマイクを向けられた時の「勇気をもらいました」「感動をありがとうと言いたいです」という表現もマニュアル的で、実に残念な気がするのは「私だけだろうか?(投書にある常套句)」(「」内はすべて紋切り型で残念な常套句である)。
紋切り型を多用した会話は相手の心に響かない。
今回は頭が悪いと思われる「紋切り型の口癖を排除するヒント」を述べていく。
常套句、
紋切り型、とは、説明するまでもなく頻繁に耳にするお手軽でステレオタイプな物言いのことをいう。逆に言うと(これは、本当に「逆」という意味で使っている。このあとに逆の文脈がつながっているところに注目)、これだけ多くの人に馴染み、愛されている言葉とも言えるかもしれない。
そうだとすれば「
あぁ残念な話し方」という表現も、さらに多くの人に、紋切り型!と認知してほしいものだ。なぜなら新年早々発売、私の最新著作のタイトルだからだ。
紋切り型は、考えずに口を突いて出てくれる。手間暇いらずで便利な表現だ。しかしそのおかげで、話し方に工夫のない手抜き言葉と揶揄される。聞き手に対する敬意が損なわれるからやめろ!などさんざんに言われてしまう恐れがある。
多用は危険。連発すると、頭の悪い人、とか、感じの悪い人、と疎まれるので控えた方が賢明だ。
「言葉癖5兄弟」、使っていませんか?
さてここからが本論だ。「残念な話し方」の1つ、「紋切り型の口癖排除」実践編に進んでいただこう。すなわち、日常会話の中にみる「残念」な常套句「言葉癖問題」に迫る。
なおここで1つご注意申し上げる。年内に仕事を仕上げなくてはいけないという忙しい人は以下のやりとりをお読みになることはお勧めできない。イラッときて、むかっとするからだ。
「逆に言うと」(これは本当の意味で「逆」なので悪しからず)年末年始の休みに入り時間に余裕が出てきたならば、暇つぶし、および、新年度のあなたの「しゃべり」をさらにスキルアップする機会にもつながりそうなので、その際には是非お読みいただきたい。
では、注意書きを読み、納得した方だけ以下に進んでほしい。
「残念な紋切り型」を連発する会話を得意とする、20代半ば。メーカーの営業マンとして働く、A氏とB氏との日常のやりとりの一部を抜き出した。
A:逆に言うと、ある意味、結果を出す、といった部分で、変な話し、どうでもよくなくねぇ的、形って部分が、まあ、ある意味、あったりするじゃないですか。
B:うんうん。いわゆる、逆に言うと、変な話し、ある意味、言えたりするよね的な?
A:そうそう。逆に言うと、要はぁ、変な話しぃ、良い悪いは別にしてぇ、ここだけの話ぃ、それって、正直な話し、実は、あったりもなかったりもしたりしてぇ。俺的な部分では、逆に言うと、変な話しぃ、ある意味、とりあえず、まあ、一応の、結果を出したっぽい?みたいなあ?
B:へー?そうなんだー。要はあ、逆に言うと、ある意味、変な話し、それって、正直ぃー、あり!OK!みたいなあ感じじゃないっすかねー。良い悪いはべつにしてぇ? つーか、ある意味、はあ?みたいなぁのはないっすよねぇ。
A:ピンポーン!それってさあ、逆に言うと、ある意味、変な話し、俺って、要はぁ、上なんか、全然大丈夫だったりする人だったりする訳じゃないですかあ。
B:マジっすかあ?つーかさあ、逆に言うと、ある意味、スゲッ!的、形っすよねえ。
A:まあまあ、逆に、ある意味ねえ。
お正月、休み疲れた頃にじっくりと読んで、この二人の会話分析をしてみるのも一興かもしれない(ここまでの馬鹿はいないとの突っ込みを覚悟しておりますよ)。
上の会話。要約すると仕事をやり遂げたA氏に対しB氏がそれを評価しているやりとりだ。
A氏は自分の手柄を自慢げに話すことを避ける工夫に心を砕き、B氏は、その成果をねたむことなく自分のことのように喜んであげている。麗しき友情が感じられる1コマだ。ところが脇で聞いている我々の多くは、そんな美談が語られていることなど露とも感じ取れない。二人の過剰な「言葉癖」のせいだ。
言葉癖の主役。これを便宜上「
言葉癖5兄弟」と呼ぶ。「逆に言うと」「変な話し」「要はぁ」「ある意味」「ここだけの話」この5つ。あなたの周りにも、連発する人がいるかもしれない。ひょっとしてあなた自身も知らぬ間に?
「5兄弟」のここがダメ!
通じ合える同士には良好な関係作りに資する会話だが、端から聞いているとむかついてくる。二人の知的レベルに問題があるのではないかと小言の1つも言いたくなる。
傍観者や話す両方が同じレベルならいいかもしれない。問題は、いかに素晴らしい内容であっても、この手の会話に不慣れな人。相手から連発される言葉癖が気になって、話の中身に入っていけない。
これは大変残念なことである。そういう「言葉癖の連発」に不慣れな方のために、上の会話に出てくる言葉癖5兄弟を解説しておこう。
1:「逆に言うと」を文字通り聞けば、その後の文脈は、反対の議論が展開されるはずなのに、ここではその徴候はみられない。逆のことなど言っていないのだ。
2:「変な話」というから、よほど意外な話、怪奇な現象が語られるのかと思いきや、あまり変な事柄は登場せず、その後も実に真っ当なことが語られている。
3:「要はぁ」という言葉で、それまでの話をうまく整理して、要約してくれるのかと期待するが、その気配は一向にない。話は逆に拡散するばかりだ。
4:「ある意味」という言葉の裏に、どんな意味が隠されているのか、含みがあるのか、興味津々で聞いてみても、その意味が語られることはない。なんの意味も背後にあるわけではない。
5:「ここだけの話」が、ここだけであることはまず無い。「ここだけ」と言いながら、あちこちで語られるのが普通だ。文字通りに受け取って、こちらもその気になって、大事な秘密を打ち明けたりすると大変なことになるので要注意だ。
「的」「部分」「形」も、特段の意味を持たない。ストレートないい方を避け、相手を傷つけないよう配慮した「曖昧化」を目的に使われている?と言うより、実は、これも言葉癖にすぎない。言葉癖3姉妹と名付けよう。
「どうでもよくなくねぇ?」「良い悪いは別にして」「つーかさあ」も、意味としては「どうでもいい」レベルで、話のテンポに変化を付ける役割の方が大きい。リズム担当、お囃子3人衆と名付ける。
「ないっす」「マジっす」「形っす」の「っす」は丁寧語「です」のカジュアルな表現。タメ語よりは話す相手との距離を取り、敬語よりは近づいた、微妙な距離感を取るのに便利な言葉。
大学の「先輩後輩」関係から学んだ学生時代を慈しむように使い、同年代の時代観を共感しあっているものと思われる。しかし、端から見ているおじさんや年配者達は「いい加減で学生気分は卒業しろ」という冷たい目で見がちな「残念は話し方」である。これらを気遣いトリオと名づける。
言葉癖5兄弟+言葉癖3姉妹+お囃子3人衆+気遣いトリオ。
この連中がよってたかって、会話をしまりのない、残念なものに仕立てていく。新年早々発売『あぁ、残念な話し方!』(青春出版社 税込み900円)には、接待、面接、合コン、会議、プレゼン、恋人、夫婦、部下上司、様々な関係、状況をよりよくするための実践的、戦略的方法が盛りだくさんだ。本コラムと合わせてお読みいただければ幸いだ。
梶原 しげる(かじわら・しげる)
1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーになる。92年からフリーになり、司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員を担当。【梶原しげるオフィシャルサイト】
著書に『すべらない敬語』『図解版 口のきき方』『そんな言い方ないだろう』『老会話』『話がうまい人はやっている「聞き管理」』『最初の30秒で相手の心をつかむ雑談術』『毒舌の会話術』ほか。4月開校のプロ講師養成講座『梶原しげるの梶原塾』受付中。
なんだーー・・あぁ残念・・大して面白くなかったっす!!??
最近はーー大してなにもしていないのに、振り、逃げの言葉を使うひとが多い・・
政治のせいと感じます・・
しかしーー、アヤパンからーー、ショーパンに、変わってー・・
カトパンも頑張っているけど・・・
やっぱり、アヤパンのがーーぜんぜんよかったーー・・あぁ残念・・