竹原信一氏特別対談・地域再生を阻むモノ『正しさ』は要らない
自立する地域社会2011年8月 2日 07:00 ネットアイビーニュース
閉塞した行政組織のなかで戦い続けてきた前阿久根市長・竹原信一氏。竹原氏と同郷で、国内外を問わず地域再生への志に燃える建築家・有馬裕之氏。そして、組織と戦った元公務員の福岡市議・寺島浩幸氏。彼らは、この国の実態について、どう見ているのか―。
<特別対談>
前阿久根市長・竹原信一氏、建築家・有馬裕之氏、福岡市議・寺島浩幸氏
竹原 国家の官僚システムとは、「使うもの」ではなく「抑えるもの」だと思います。国家システムが憲法を守らない。それを守らせるのが政治家でなければならないはずなのに、逆に喰われている。憲法は国家に対する命令ですよ。それをないがしろにされています。憲法と法律の立場の違いは明確なのに、法律の上にくっついているような感じで認識されていて憲法が完全に無視されています。
有馬 なぜ、僕が『地域』を考えはじめ、中国ではなくモンゴルに行っているのか。『仏教至上主義』という意味ではないのですが、『地域』にあるものを愛する力、たとえば山にしてもそこに生まれたものを愛するようなものが残っていると思うからです。それは日本にもまだ残っていると思います。しかし、行政は、中央で生産をするということだけでオペレーションをしようとする。そこに無理が生じているのではないでしょうか。今、考えを整理してみる段階が来ているのではないかと思います。
たとえば阿久根もあまり他の都市と変わらない状況なっていると思います。それでも、一本道を入れば昔ながらの村落があったりして、われわれが誇るべき"もの"が残されています。
竹原 そういうことを地域の自治体の職員たちや首長が気づいてやるときに、まず邪魔になるのが国です。竹原がいると阿久根には金がおりなくなる」と宣伝して回るわけです。
有馬 今は、そこにいるおばあちゃんの沢庵漬けをしようという人が必要なんですよ。江戸時代、ひとつの藩が自立しなさいというプログラムがあったと思います。江戸はいちおう緩く統括していたわけですね。
竹原 今の職員たちは、住民の敵、国家の兵隊です。日本中、どこも銭をもらおうという乞食根性がしっかり植え付けられていて、とくに役所というのは「国家公務員準拠だから国と違ったことをしたら俺たちの給料は下がる」。だから議員たちにも「議会で決めることではなくて国が決めたことなので通さないと違法ですよ」というものの言い方をするわけですよ。だましですよ。
有馬 モンゴルのエルベグドルジ大統領は、私に「美意識で国をつくろう」と私に言いました。その方法論をきいたときに「それはモンゴルだからできるな、日本ではできない」と。可能性があるのはモンゴルのほうかもしれない、その後、革命が起きてひっくり返ってしまうかもしれませんが、なんか面白いことをやるかもしれないと思いましたね。だから、やるべきだと思うんですよ、首長が。
竹原 「べき」といっても、させないようになっているんです。「べき」をすると私のようになってしまいます。佐賀県玄海町の岸本町長は「やり手だ」という評価ですよ。あの人がいると税金がおりてくるから「まあ、いいや」と票が集まるんです。そういう町がほとんどです。阿久根でも、住民たちが原発をつくってくれと署名を集めてくるんですから。川内につくってくれれば、労働者にこっちに泊まりに来てもらいたいとか、そんな程度ですよ。まるで失業対策事業です。
有馬 竹原さんは、自衛隊におり、会社を経営し、その両方の視点から見てどうすることが結果を出すか経験でわかっていると思います。公務員組織は、それをないがしろにしようとするわけですよ。さらに、この国の場合は、警察、検察、裁判所は完全に犯罪組織です。
寺島 市職員のなかにも、表立ってやると組織からつぶされるので応援はできない。けれども影で応援する職員はいませんでしたか。
竹原 応援というよりも、職務として私の質問に対して嘘をつく職員と正直に答える職員がいました。ほとんどが嘘を言いました。正直にいう職員は「竹原派」といわれる。おかしな話ですよね。ほとんどが背任ですよね。クビにして当たり前でしょ。それがほとんどです。
はっきり言いますよ。自治労は『組合犠牲者救援規則』をもっています。組合のためには罪を犯すことも構わないという規則を持っていて、インターネットで公開している。なんであれが取り締まられないのか。自治労の組合員は犯罪予備団ですよ。それが選挙事務をするんです。やらせてはいけないですよ。職員にはそれに入るかどうかの権限がないので責められないけれども、組織としては犯罪組織です。
寺島 私は3回左遷させられています。ただ、福岡市のいいところで戻って来ることができます。市職員のなかに志がある人がいて、僕が議員になった今、応援してくれています。ただ、自分が表立ってやると、僕みたいにやるとつぶされて役人のステップアップがなくなってしまうのです。
竹原 組織としては犯罪組織なんです。「入ってみたら強盗団だった」ということです。
有馬 経産省の古賀茂明氏なんかもそうでしょう。僕はフィンランド、スウェーデンに何度も行っていまして、両国は『小さな政府』を目指しており、消費税は25%です。フィンランドは人口500万人、スウェーデンは700万人、デンマークも500万人くらい。世界に冠たるデザインや文化を売り物にしてやっていこうとしている。どう思われますか。
竹原 いいことだと思います。学校なんかでは「日本は小さな島国」といわれますが、とんでもなく大きな国ですよ。世界で6番目に大きな国です。これは分けなければならないと思います。1,000万人くらいに分けて考えたほうがいいと思います。大きさはイギリスの倍あるんだから。
有馬 私は、江戸時代に戻す感覚がいいと思っています。『道州制』には大反対です。『道州制』をやるとミニ国家になってしまいます。なぜかというと、九州だけでも人口が一国家ぐらいあるからです。もう少し、市町村に徹底的に自立性を求めるぐらいにもっていかないとこの国はつぶれると思っています。
竹原 阿久根は全部を一旦解体しないとだめです。
有馬 補助金ばかりに頼るのではなく、過疎の町とか駄目になった町こそ、首長は地域の持つパワーを世界に直接PRする。それは首長の役目だと思います。
竹原 中身を放棄することで乞食っぽい自治体になってきていますよね。お金は『アヘン』です。アヘン漬けになっているんですよ。アヘン漬けになっているものを止めないことには自分たちの良さを発見する余地がないわけですよ。
有馬 グーグルの社是には「利益を上げない」と書いてあります。嘘でもいいから言い切ることで次の段階に入っていけると思います。
竹原 民主主義の阿久根では、もらってきたアヘンを取られたら禁断症状をおこします。住民というのは、きょうの暮らし、あすの暮らしが大事なんです。
有馬 でも、それだけではジリ貧になってつぶれていきます。
竹原 それを本人たちが気づかなければいけないんです。民主主義だから。
寺島 シンプルにいえば、市民が政治家を選ぶ以上、市民のレベル(民度)通りになるのが現状ですから、主権者がおかしいわけです。そこを喚起するのがリーダーであり、竹原さんは積極的にやっていらっしゃる。『経済至上主義』でお金も大事なんだけれども、経済よりももっと喜びや感動があるということに気づく人が増えています。竹原さんを応援している人もそうでしょう。僕を応援してくれる人もそういう人なんですよ。そういう人をいかにつないで増やしていくか、ケネディがいったように「国家が何をしてくれるか」ではなく「あなたが国家に何をできるか」を考えようと。
有馬 僕は、みんなの党にこそやってもらいたい。世界は動いていますよ。
寺島 僕らは問題意識から具体論を悩んでいます。市役所にどうやって仕掛けていこうかと考えています。福岡市役所には、まだまともな人がいます。そこをなんとかしたいです。
竹原 言うべきことは言う。仕事はきっちりする。面倒見がいい。しかし、良心は売らない。そういう人間たちを増やしていかなければなりません。そのためには、正しいことをする人間はいらないんです。正しいことは世のなかにないんです。正しいといった瞬間に権威なんです。正しいかどうかではなく、その結果どうなるかを感じられる人間、魂を役所に売らない人間を大事にしなければならない。正しいということに強迫観念があります。「『正しさ』は要りません。私は『正しい』を求めていない」と言葉として言ってあげなければならないと思います。政治家こそが議会で言うのは「何で『正しく』しなかったんだ」。ずるい奴らは『正しい』にかこつけてサボる理由にする。『正しい』という言い訳は要らない。結果として、子供たちが育つ社会、その先の満足だけが大事です。そういうことをするのが本当の政治家のあり方です。
寺島 僕は、アップル社の社長・スティーブ・ジョブズ氏がスタンフォード大学の卒業祝に贈った言葉「明日死ぬつもりで今を生きる」が大好きです。ジョブズ氏は、毎朝、鏡の前で「もし明日死ぬとしたら今日のスケジュールはどれくらいするだろう」と、問いかけるそうです。また、「しないこと」が増えてきたら、何かを大きく変える時期だとしています。
有馬 アップル社はiクラウドをやろうとしている。ホストコンピューターという数千億円かかるものをやめて、全世界のさまざまなノウハウをどんなに小さなエリアでも個人でもネットワーク化することで最高のものがつくれるというものです。このような考え方に社会は入っています。そのことを政治家が確信を持って、ぜひ、ノレッジメントや情報というものを世界にとりながら、各地方の劣化しはじめたエリアがリアライズできるようになっていってもらいたいというのがジョブズ氏の座右の言葉なんですよ。
寺島 僕が言いたいのは精神論で、明日死ぬかもしれないと思うことで、目の前にぶら下げられた経済的利益、損得勘定から自分が乗り越えられるかどうかが、僕の日々のテーマということです。インターネットによる世界のマーケットに可能性があることは感じていますが―。
有馬 儲かるだけではなく、プライドが生まれるわけです。経済的に儲かるだけではダメです。その地域のプライドや地域に対する忠誠心、これは首長や行政に対する忠誠心ではなく、ここに住む満足度は経済に変えられないものです。たとえば、阿久根は素晴らしいんだと思うようにもっていくことがインターネットを道具にしてできると思います。
ただし、民間の立場で見ると、行政と民間の遊離感をものすごく感じています。みんなそのことを批判しています。
竹原 住民と離れているというのもありますが、私は何か社会を全部説明する時の説明材料が足りていない気がします。何かが見えていないんですよね。
有馬 バックボーンとしての思想だと思います。どういうまちをつくりたいのか、どういう市民でありたいのかということを持つべきですよ。
竹原 その基本とは何でしょうか。
有馬 東京や大企業中心ではなくて、地域ごとに素晴らしいものがあるということをもう1度フォーカスをあててやりつづけるべきです。
竹原 その『素晴らしいもの』とは。
有馬 その本人が『素晴らしい』と思うか、ですね。
竹原 住民が「自分とは何か」を忘れているんですよ。「自分がこの世に生まれて死ぬ。その意味は何か」という原点を見失っているから次に進めないんです。私自身はそれに気づいている気がしていますが、ほかの人にどう説明するか難しすぎるのです。
有馬 単純な例で、たとえば、あるところに桜が咲いているとします。その桜の美しさを地域の方が忘れているときにもう1回再認識することから始まるかもしれません。経済だけで生まれているような価値観になってしまっているから。そこをもう1回見直すべきです。
竹原 よそから来た人が「素晴らしいところですね、自然が」と言っても、田舎にいる人はそれが日常ですから。
有馬 日常だからこそ見直していいのではないですか。外から見てそれだけ素晴らしいと思うことも価値だと思って欲しいんですよ。そこまで見直さないといけません。
竹原 よそ者の交流地点に『文化』が生まれますからね。ただし、アヘン漬け(※1)になった人たちには、かえって試練を与えたほうがいいのかもしれない。ぶたれないと目が冷めないのではないか。痛いのから逃げるほうが良くなるのではないか。お年寄りの方は、これ以上ほしいと思うのではなく、「痛い思いをしたくない」という意識が強いです。(私を)応援してくれる人は日々痛みを感じています。痛い思いをしてはじめて"麻薬"が抜けるわけです。"麻薬"を抜かなければ、痛さがわからなくなっている。"アヘン"を抜いてやらなければ、元気が出ないのです。
官僚組織は敵で、役人は官僚組織の兵隊だということをわからなければならない。それがわかったのは最近でした。今やるべきことは『知ること』。説明できてない。『何か』が抜けている。ひとりでインターネットを通じて書くのは戦いの感覚です。自分の精神的に痛いところに踏み込んでいくと発見があります。敵は自分です。不思議なことに自分が気づくと、他の人も言わなくても気づきます。もしかしたら、気づいていたことに気づくのかもしれないけれども...。
同じ瞬間に同じ発明をするということがあるじゃないですか。そんなふうに私たちは内側でつながっています。内側でつながっているから、外に対してものを言う話ではなくて、自分の内側におりていくことがみなさんの目を開くのと同時なんです。以前ビラを配っていたとき、他人の扉を開こうとしていました。そうではなくて、自分の内側の扉と一体なんです。作業としては一緒です。
寺島 自分が変わった瞬間に周りも変わるんですよね。ものすごく同感です。
有馬 TPPを含めて『グローバル化』というのは、大企業を中心とした経済戦略です。そこに中小企業が生き残る方法論は、今の日本の政策ではありません。『グローバル化』というのは大企業が利用しているだけです。賃金が高くなることによって日本国内で生産できなくなったから、中国、インド、べトナム、アフリカまで行くんですよ。日本国内の賃金が高くなることで、雇用の確保ができなくなったということなんです。その『グローバル化』に日本がなぜのるのかと言いたい。日本国内のGDPの20%以内だけが輸出高です。あとの80%以上は内部需要です。今の日本経済は『グローバル化』と言いながら、結果的にいい意味で内需によって生き延びています。
誤解を恐れずにいうと、僕は、対外開放はOKだと思うけれど、今の方法論では、国内の総生産の十数%しか輸出に委ねられていない状況です。韓国も中国も四十数%です。彼らは関税を撤廃したほうがプラスだけれど、日本が関税を撤廃したら完全に中小企業はつぶれます。だから、情報とかさまざまな個性のグローバル化は推進しながらも、関税はいましばらくあのままにしながら、ぜひ、日本の自立、プライド、竹原さんを『生贄』にしてでも「日本の未来は地域にあるんだ!」と言って欲しい。みんなの党こそ、その政策ではないですか。
もうひとつ、日本の農業の自給率は今、41%です。先進国では最低です。十分に開放されています。もっと言えば、日本の関税は12%、ヨーロッパは20%なんです。だから、『グローバル化』という言葉に踊らされないで欲しい。であれば、阿久根こそひとつの重要なポジションだったわけです。竹原さんが市長でなくなったとしても、やったことは全国にすごいインパクトを与えた。
寺島 有馬さんのおっしゃるように、地域ごとに『光るもの』に気づいていけば、ITを使うことで成り立つ可能性がありますね。
竹原 国が「ウォーターフロントなんとか」を入れたら、役所はまねをして、すぐどこかに発注して流行り物をする。オリジナリティをやろうとすると猛反対があちこちからくる。阿久根でシャッターアートを始めたでしょう。住民は「国が認めてないのに自分たちでやったことが気に入らない」といって反対運動をするんです。マスコミも一緒に...。
――三者三様の立場から、地域再生について意見を交換するなかで、いわゆる「お題目」では見えてこない現実的な"障害"が浮き彫りとなった。地域再生の障害となるのは地域、そこの住民の意識であることだ。「自分を変える」「自分が変える」という発想に立たなければ、独自性も生まれてこないのではないか。そして、竹原氏の言う「まずは知ること」が、あらゆる面において、その第1歩であると感じた。(NET-IB編集長 山下 康太)
(了)
【文・構成:行政取材班】
※1 アヘン:本稿では「国や地方自治体からの交付金、補助金」などをはじめとする公的機関から配られるお金を意味する。本連載第3回を参照。
<プロフィール>
竹原 信一 (たけはら しんいち)
前阿久根市長・1959年、鹿児島県生まれ。元航空自衛官(88年退官)。阿久根市議を経て08年、阿久根市長選で初当選。ブログでの情報発信や市職員の給与明細全面公開など数々の"掟破り"の手法で市政改革に取り組んだ。11年、市長リコールにともなう出直し選挙において864票差で敗れ失職。同年、鹿児島県議選に出馬するも落選。
有馬 裕之 (ありま ひろゆき)
建築家・デザインプロデューサー・1956年、鹿児島県生まれ。京都工芸繊維大学卒業後、80年に(株)竹中工務店に入社。90年、「有馬裕之+Urban Fourth」設立。さまざまなコンペに入賞し、国内外で受賞歴多数。さまざまな地域活性の町づくり委員も務める。
寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
みんなの党福岡市議会第7支部長、同福岡市議団副代表・幹事長・1961年、福岡県生まれ。福岡大学法学部法律学科卒業後、87年に福岡市役所に入庁。総務企画局総務部情報公開室、市長室、議会事務局調査法制課などに務め、2010年退職。11年に西区から市議選に立候補し初当選。
日本だけが・・・閉塞しているんだろうか・・
