田原総一朗の政財界「ここだけの話」
鳩山・小沢のダブル辞任か、衆参同日選挙か
2010年4月19日
ワシントンで開かれた核安全保障サミットの夕食会で、4月12日夜(日本時間13日午前)、鳩山由紀夫首相とオバマ大統領の非公式会談が行われた。
日本側は正式な会談を求めていたが、アメリカ側はそれを受け入れなかった。
鳩山首相は普天間問題について2分も話していない
鳩山首相とオバマ大統領の非公式会談はたったの10分間。通訳を介していたので正味5分間というところだろう。
その中身は、アメリカ側が最も関心を持っているのはイラン問題であるから、おそらく5分のうち3分がイラン問題。鳩山さんがオバマさんと話したかった普天間問題は2分以内、つまり「ほんのひと言」のやりとりだったのではないか。
鳩山さんはこの非公式会談で「大統領もぜひ協力願いたい」と伝え、5月中に普天間基地移設問題の決着をつけると念を押した。5月中ということは、残りわずか1カ月ちょっとしかない。
オバマさんは鳩山さんに対して「本当に大丈夫か」「信用してよいのか」とかなりの懸念を示したのではないか。
オバマさんは、昨年9月に民主党政権が誕生してから今まで普天間問題がまったく進展していないことに相当苛立っている。
新聞各紙は、この鳩山・オバマ会談をかなり否定的に報じた。
時事通信が4月16日に4月の世論調査(9~12日実施)を発表した。それによると、鳩山内閣の支持率は何と前月比7.2ポイント減の23.7%。30%を大きく割り込んだ。これはもう、危機状態にあると言っていい。
さらに、19日発表の朝日新聞の世論調査(17~18日実施)では、内閣支持率は25%という結果になった。こちらも前回調査より7ポイントも下落した。不支持は急増して61%に上った。
こうなると一種、つるべ落としの状況になる。30%を切れば、世論はむしろ「ならば叩こう」となり、「やはり次なるものを待ちたい」という風潮になるだろう。
結局は辺野古ではないか、という声
それにしても一体、鳩山さんは普天間問題をどうするつもりなのだろうか。
ここにきて、結局は辺野古(沖縄県名護市)ではないだろうか、という声が出始めている。
普天間基地の移設問題は、1996年に橋本龍太郎首相がモンデール駐日大使と「普天間基地の移設条件付返還」で合意し、その後、小泉純一郎内閣が2005年に辺野古沿岸部に移設することで米国と合意している。
「辺野古ではないだろうか」というのは、民主党は発表していないと言っているが、ある時期から事情通の間では「公然の秘密」となっている。
それは、普天間基地を米軍キャンプ・シュワブ(名護市辺野古)へ移し、そしてゆくゆくはホワイト・ビーチ(うるま市)沖合に人工島を造り、そこに大がかりな基地を持って行くというものだ。あるいは鹿児島県の徳之島にヘリポートを造るという案も出されている。
ところが、これらの案はあまりにも現実味がない。なぜならばホワイト・ビーチ沖合に人工島を造るとなると、これから10~15年はかかる。そして徳之島案については、地元が大集会を開いて猛反対している。
そういうことで、結局は辺野古ではないか、と言われているのである。
辺野古であれば、名護市の島袋吉和・前市長が辺野古への基地移設推進派であったため、地元がいったんは了解している。そして、アメリカもこの案で了解している。つまり体制ができているわけだ。
実際、14日付の産経新聞は一面トップで『普天間移設 辺野古浅瀬案 提示へ」と見出しを打ち、「米軍キャンプ・シュワブの南方沖の浅瀬に滑走路を建設する「浅瀬案」を検討、米側に提案する方向である』と書いている。
名護市長選前に決めていれば裏切りにはならなかった
しかし、いまさら辺野古と言うならば、なぜ昨年のうちに決着しなかったのか。
実は昨年11月には、岡田克也外相と北澤俊美防衛相が辺野古ということで決めていたようだ。ところがこの時、鳩山首相は「ノー」と言ったらしい。
その理由についてはいろいろな説がある。
たとえば、社民党の福島瑞穂党首がもし辺野古にすれば連立政権から離脱すると言ったからとか、あるいは当時、鳩山さんは予算を通したいという思いが先行したから、というものである。
その翌年、つまり今年1月には名護市長選があることはわかっていた。そして、基地移設反対派が勝つこともわかっていたはずだ。現に反対派の稲嶺進氏が勝利した。
なぜ名護市長選の前に決めなかったのか。もし、名護市長選の前に移設を決めていれば、沖縄に対する裏切りにはならなかったはずだ。
反対派が勝ったのだから、辺野古沿岸部に決めても、キャンプ・シュワブに決めても、裏切り行為になる。どうするのか。
16日の各紙朝刊が普天間問題の「5月末決着」は不可能とトーンで一斉に報じている。いくつか見出しを拾ってみよう。
産経新聞
『普天間問題 来月末の合意断念 官房長官 首相引責に予防線』
読売新聞
『普天間「5月決着」 「米・地元・与党合意が条件」 首相明言 自ら窮地に』
朝日新聞
『5月決着 ぼかす動き 普天間移設 責任回避狙う』
鳩山さんがまだ「5月末決着」にこだわりを見せている一方で、平野博文官房長官が「『合意』という解釈に幅があるような気がする」と言い、鳩山さんをかばうというか、首相の責任論を回避する発言をしているのである。
京都の鳩山・小沢・稲盛会談で話されたことは何か
実は、あまりマスコミでは取り上げられていないが、4月3日に重要な会談が行われている。
場所は、京都にある京セラのゲストハウス。京セラ名誉会長の稲盛和夫さんが鳩山首相と小沢一郎幹事長を招いて2時間半にわたって会談した。
おそらく鳩山さんと小沢さんが切羽詰まって稲盛さんに相談を持ちかけたのだろう。
会談の内容は何か。三つある。
一つは普天間問題。
二つ目は、報道各社の世論調査を見ると、小沢氏は幹事長を辞めるべきだという意見が70%を超え、その数値が落ちないという問題。
そして三つ目は、夏の参議院選挙にどう臨めばよいか、である。
新幹線の中で不愉快そうな顔をしていた鳩山首相
こうした内容が話し合われたのは確かだ。会談が終わってから、鳩山さんは新幹線の中でずいぶん不愉快そうな顔をしていたと言われている。
つまり、鳩山さんにとって都合のいい会談ではなかったということだ。なぜ不愉快になったのか。
鳩山さんにとっても小沢さんにとっても、今最大の問題は参院選に勝つことだ。しかも過半数をとって。参院選での勝利は両者に共通する最大の目標である。
だが鳩山さんの胸の内には、内閣支持率がどんどん落ちて行くのは小沢さんの「政治とカネの問題」が大きいという思いが、おそらくある。だから参院選に勝つためには、小沢さんに幹事長を辞めてもらいたい。そうしたことを稲盛さんから小沢さんに言ってもらいたいと思っていたのではないか。
ところが3者の話し合いでは、小沢さんの問題よりもむしろ、参院選に勝つためには普天間問題を決着してほしいと言われたのではないか。だから、鳩山さんは不愉快そうな顔をしていた……。
この会談の後、鳩山さんは辺野古説を考え始めた。それも非常に強く、「どうしてもけりをつけるとしたらこれしかない」と。
繰り返しになるが、移設先が辺野古になれば沖縄に対する重大な裏切りとなるだろう。
おそらく、平野博文官房長官はそこで全責任をとって辞任するつもりだろう。
だが、平野さんの辞任だけで収まるのか。下手をすれば、責任問題は鳩山首相にまで及ぶ可能性もある。普天間問題の本当の責任者は鳩山さんなのだから。
普天間問題が辺野古で決着ということになると、国民からは「何だ」と落胆され、支持率はさらに落ちるだろう。もし、20%を切るようなことになれば、やることは二つしかない。
鳩山さんと小沢さんが二人とも辞任をするか、あるいは衆議院も解散して衆参同日のダブル選挙となるか、である。
私はどちらかというと、ダブル選挙の可能性が強いのではないかと思っている。鳩山政権は今後、重大な局面を迎えることになる。
田原総一朗(たはら・そういちろう)
1934年滋賀県生まれ。早大文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経て、フリーランスのジャーナリストとして独立。1987年から「朝まで生テレビ!」、1989年からスタートした「サンデープロジェクト」のキャスターを務める。新しいスタイルのテレビ・ジャーナリズムを作りあげたとして、1998年、ギャラクシー35周年記念賞(城戸賞)を受賞。また、オピニオン誌「オフレコ!」を責任編集。2002年4月に母校・早稲田大学で「大隈塾」を開講。塾頭として未来のリーダーを育てるべく、学生たちの指導にあたっている。最新刊に『田原の眼力 嘘ではない真実の取材ノート』(扶桑社新書)、『オフレコ!スペシャル 2020年、10年後の日本』(アスコム)、『田原式 つい本音を言わせてしまう技術』(幻冬舎)がある。
鳩山さんと小沢さんが二人とも辞任しないでしょーー・・
