平成19年10月1日現在推計人口
松本すみ子の団塊消費動向研究所
中高年のシングル男性市場 独り者向けサービスの開拓
2009年9月30日 NikkeiBP.com
離婚全体が減少するなかで、熟年離婚だけが増加傾向にある。そのせいもあってか、中高年男性のシングルが増えているという。そうした男性シングルへのサービスはほとんどない。であれば、彼らの不便や不満の解決策を提供することは、ビジネスとして成り立つ可能性がある。さらに、地域社会での高齢問題解決へのサポート事業としても有望なのではないだろうか。
50代・60代男性の4人に1人がシングルの時代へ!
気になるレポートを見つけた。中高年男性の単身世帯が増加しているというのだ。レポートは、みずほ総合研究所の「単身世帯の増加と求められるセーフティネットの再構築」で、2008年12月に発表された。まずは、その内容をかいつまんで説明したい。
日本では1985年以降、単身世帯の増加が顕著になった。1985年と2005年を比べると、80歳以上の年齢層では男女ともに5~7倍に増えた。ただ、これは長寿ということもあり、ある程度予想された傾向といえる。注目すべきなのは、50代と60代の男性の単身世帯が4~5倍に増えていること。特に、男性50代で3倍に増えていることだ。まだ高齢者とは言えない層で増えているというところに問題がある。
理由として考えられるのは、まず、人口の多い団塊世代が中高年になったこと。それだけなら「人口要因」として片付けられるのだが、「未婚」と「離別(離婚)」も増加傾向だ。レポートでは特に、「未婚」を問題視している。「未婚」とは生涯で一度も結婚をしないこと。50代男性の未婚は今後も増加する傾向にあり、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、05年には12.0%だったものが、30年には27.7%にまで高まるとされる。 「離別(離婚)」に関しても、こんな統計がある。厚生労働省の人口動態統計の離婚統計によると、2002年をピークに離婚全体は減少しているにもかかわらず、熟年離婚は増えている。同居後20年以上の夫婦の離婚は1975年に全体の6%だったが、2008年には15%となった。件数も、同居5年未満や5~10年未満の若い夫婦に次いで多い。
国立社会保障・人口問題研究所は2005年から2030年の25年間で単身世帯数は26%増加し、男性60歳以上は2倍に、50代と60代の男性のほぼ4人に1人が単身者になるという予測もしている。
リタイア単身者の生活とリスク
男性単身者が増える大きな理由は離婚と未婚の増加という分析だが、もうひとつ長寿という要因も忘れてはいけないと思う。単身になる理由は三つある。離婚、未婚、そして、配偶者との死別だ。高齢になればなるほど、3番目の数字は高まる。
従来、この傾向は男性よりも長寿の女性に当てはまると思われてきた。先のレポートでも、2030年に、80歳以上の女性の単身者は2005年の2倍になるとある。何かで読んだ記憶があるのだが、80歳以上の女性の80%以上に配偶者がいないそうだ。
ただ、これからは、高齢による死別で単身になるのは女性とは限らない。今や、日本人の寿命は、男性がほぼ80歳で世界4位、女性は86歳で世界1位。これだけ寿命が延びると、夫婦のうち、どちらが先に介護状態になるか、どちらが先に亡くなるかは分からないのだ。
これからは、看取られて先に夫が亡くなり、妻が一人残されるというケースだけでは通用しないのではないだろうか。その証拠に、妻を介護する夫や、妻に先立たれて一人暮らしになっている男性は周りでも珍しいことではなくなった。今後は、高齢男性単身世帯の増加も懸念されるのだ。
男性単身世帯であっても、現役で仕事を持ち、健全な社会生活を営んでいれば、さほど問題はない。心配なのは退職後の生活だ。まず、男性は一般に日常生活能力が女性に比べて低いといわれる。現役時代は会社や職場に行っていれば、組織のサポートや周りの人たちとの交流の中である程度解決できるが、退職すれば、それが途絶える。
二つ目は健康問題だ。退職とともに、健康診断を受診する機会を失うなど、健康への配慮が行きとどかなくなる。その結果、病気が悪化し、介護状態になりやすい。現役であっても、病気になれば働き手が一人のため、たちまち収入源を失うことにもなる。
三つ目は、地域社会とのつながりが希薄なことだ。普段から隣近所との交流がないから、急には地域社会に溶け込めず、引きこもりになりがちだ。 東京消防庁には、死者全体の半数以上を65歳以上が占めており、そのうち一人暮らしは64.5%、出火原因別は「たばこ」が最も多いというデータもある。こうした一人暮らしのリスクを回避できるサービスは急務だろう。
未開拓な男性独り者へのサポートサービス
今では「おひとりさま」という言葉が一般的になり、おひとりさま向けサービスもたくさん生まれている。ただ、多くは女性をイメージして提供されている。男性は社会的には強者だから、必要ないと思われているようだ。しかし、前述したように、中高年男性シングルはかなりの部分で弱者でもある。しかも、男性特有の事情や、それまでの社会的な経験や地位からくるこだわりやプライドもある。女性向けとは違ったアプローチをする必要がある。男性向けは「独り者サービス」とでも言ったらいいか。
では、どんなサービスが考えられるのか。まずは、生きる基本としての衣食住サービスが重要だ。掃除、片付け、洗濯。これをきちんとしていれば、生活も精神面もずいぶん違う。掃除も洗濯もうまく出来ないならば、ハウスクリーニングなどの生活支援サービスを利用できる。そのことを、もっとこの層にアピールしてはどうか。
次に、料理と食事。男の料理教室が中高年男性で賑わっているが、実際に、自分で日常的に作っているかというと疑問。であれば、無理をせずに、大いに中食を利用してもらう。デパ地下やスーパーにはもっと男性目線があってもいい。簡単で栄養バランスのとれた肴の作り方や晩酌おつまみセットの提供などはどうだろう。 コンビニのファミリーマートは「チーム団塊」が開発したこだわり弁当を販売して、売上No.1という。アイデアもこの層からもらえばいい。
この年代の男性が案外だめなのが、お金の管理だ。定年後の生活設計は大切なテーマ。そこに何かアイデアはないものか。
旅はどうだろう。バスツアーは、女性連れか夫婦の参加がほとんど。一人旅はいやだが誘う人もいない、かといって、気づまりな団体旅行は敬遠したい。こうした男性を誘う手段はないものか。うまくすれば新たな大量の顧客開拓につながる。リスクと問題点を探れば、かなりのニーズはつかめるはず。
とはいえ、高齢の独り者へのアプローチは難しい。手っ取り早く稼ぎたい場合には適さないターゲットかもしれない。今までの団塊・シニア向けビジネスがうまくいかなかったのは、手っ取り早く稼げるビジネスを志向したからだ。すぐに反応しないため、業を煮やして撤退したというのがほとんど。ただ、そこに活路を見出すことができれば、その後のお付き合いは長いものになる。これが大人の付き合いの特徴である。
●アリア
事業内容
・シニア世代の暮らしと行動研究
・シニア世代への情報提供
・シニアコミュニティの企画・運営など。
●NPO法人シニアわーくすRyoma21
「Ryoma21」は、主に50代を対象に、アクティブに生きるための仲間つくり、活躍の場作り、仕事作りを支援している会です。何かやりたいと思っている人が、それを実現するために仲間を募り、自己表現を行い、社会との接点を創り出す場です。モットーは、「いくつになっても、人は夢を語れる、学べる、成長できる、活躍できる」。
松本すみ子(まつもと・すみこ)

早稲田大学第一文学部東洋史学科卒業。IT業界で20数年、広報、販促、マーケティングを担当。シニア世代の動向に注目し、シニアライフアドバイザー資格を取得。2000年、団塊/シニア世代の動向研究とライフスタイル提案、コンサルティング、執筆などを主要な事業とする有限会社アリアを設立。2002年9月、シニア世代の仲間づくり・活躍の場づくりの会「おとなのオピニオンコミュニティRyoma21」を主宰。2007年、「NPO法人シニアわーくすRyoma21」となる。日経BP社のシニアサイト「セカンドステージ」で、「本当にやりたい仕事って何」、「充実生活見つけた」のプロデュースならびに「団塊世代のための定年準備講座」の執筆を担当。著書に、「自分分析!つまらない毎日なら『好きな』ことで独立しよう」、「心理系の仕事を見つける本」などがある。最新刊は「そうだったのか! 団塊マーケット 本気で取り組むビジネス戦略」(経済法令研究会)。
なんか、そんなかんじ、しますねーーー・・
