日本市場にiPhone投入を決めたアップルCEOスティーブ・ジョブズ氏の戦略を考えてみましょう。
iPodになくてiPhoneにはあるもの、それは電話機能とカメラ機能です。それ以外、たとえば音楽を聴いたり、ビデオを見たり、という機能は両方にあります。
音楽を聴き、カメラも撮れて、ビデオも見れるケータイ、となると、一部でiPhoneのバッテリー駆動時間を疑問視する声もないわけではありません。しかし、一部報道によると、通話で8時間、ネット利用で6時間、ビデオ再生7時間、オーディオ再生24時間とまったく遜色のない水準だといえます。さらに、現在電池性能は日進月歩で向上していますから、バッテリー面でのマイナス材料はないでしょう。
しかもiPhoneの価格競争力はインパクトが大きい。iPodの最上位モデル、iPodタッチは約7万円するのに対し、ソフトバンクモバイルは23日、iPhoneの販売価格を2万3000円台からに設定する、と発表しました。この低価格と機能を考えると、これからiPodタッチを買う人はそう多くはありませんよね。
私はスティーブ・ジョブズCEOの戦略のカギはここにあるのではないかと考えます。
つまり、iPhoneが売れればiPodのニーズは減るという、アップルにとっては諸刃の剣といった存在になると思うのです。iPhoneを販売したことでiPodが売れなくなってはアップルにとっても喜べません。だから、ソフトバンクと手を結んだのでは・・・と想像します。
アップルはiPhoneの販売先としてあえてソフトバンクを選んだのではないか。もしドコモが扱えば、一気にiPodユーザーはiPhoneへの切り替えを急ぐことになり、iPodへの購買動機が起きなくなってしまいかねません。 ソフトバンクとiPodというと、2007年5月~7月にかけて、「iPodシャッフルが必ずもらえる」(当時のソフトバンクモバイルの広告キャッチ)キャンペーンを実施したのを思い出します。
毎度おなじみ、ソフトバンク側の広告戦略の1つですが、iPodシャッフルは無料で配布してもさほどコストがかからない、ということも言えるのかな、と当時思いました。
iPodシャッフルはメモリー容量が1ギガバイトで5800円、2ギガバイトが7800円で売られています。でも1ギガバイトのUSBメモリーは、いまや無料配布している時代です。
無料配布しているUSBメモリーとiPodシャッフルを単純比較はできませんが、iPodはハード面での新規開発投資がすでに完了している製品である上に、恐らく製造原価に対する利益率は大きいでしょうから、このまま売れ続けて欲しい製品です。
それが、iPhone発売と同時にiPodが売れなくなってしまう、なんてことがあってはアップルの戦略が大きく狂ってしまいます。
ならば、日本市場では携帯電話シェアが小さいソフトバンクと組んで、iPodもiPhoneも両方売れる体制を整えたい・・・と考えてもなんら不思議ではありません。
ペット化がiPhoneで一気に進むのではないか、と私は考えています。
iPhoneの登場で、iPodの専売特許だった「音楽を楽しむ」「音楽ライブラリーを持ち歩く」という新たな機能も吸収してしまいました。
従来の携帯電話とiPhoneが決定的に異なる点は、アプリケーションソフト開発をオープン化したことです。
様々な新しいソフトが登場し、“自分だけの一台”としてのiPhoneの位置づけは高まります。パソコンのOSで喩えれば、マイクロソフト型ではなくリナックス型です。多くのソフトハウスがユーザー1人1人に次々と魅力的な機能を提案することで、パーソナルにカスタマイズされることでしょう。これからのケータイは限りなくパーソナルユースに進化するでしょう。
かつて一世を風靡した「たまごっち」のようにケータイのAI(人工知能)化も進み、ご主人様(ユーザー)に話しかけたり反応してくれるようになるかもしれません。
「話し相手はケータイ」「親友はケータイ」「だれのいうことも聞かないけれどケータイの言うことなら聞く」・・・なんて人種が現れるかもしれません。
「おはようございます」と挨拶してくれるケータイはすでにあります。AIを搭載したケータイが誕生すれば、ここ数週間の使い方などから一定の傾向を分析して、「最近、○○さんと仲がいいんですね」とか「○○さんと喧嘩したの? ここ2週間電話してませんね?」なんて話しかけてくれるかもしれません。
ここまで人工知能が開発されれば、ペットから「神様」に昇格するケータイも現れないともかぎりません。
iPhoneの3Gは世界のシステムを変える、そのくらいの強烈なインパクトと可能性を秘めていると私は考えています。
同時に巨大なマーケットを形成します。だからこそ、早々に、NTTドコモはiPhoneに乗り出すべきでは、と考えています。
これまでの携帯電話と私たちのかかわり方そのものを変えるからです。
ケータイが神様になる時代。そんなブキミな妄想をしていると、なんとなく、若者の間で圧倒的な人気を誇る漫画との共通点に気付きました。
それは20代のビジネスパースンや学生の間で爆発的人気を誇る長編SFサスペンス漫画「20世紀少年」(小学館・浦沢直樹作・全20巻)です。この8月末には唐沢寿明、豊川悦司らのキャスティングで映画も封切られます。
ストーリーは、70年代の高度成長期を生きた小学生たちが、きたる未来に地球征服を企む悪の組織から人類を救う「よげんの書」を草むらの秘密基地に封印。ところが、20世紀末か近づくにつれて、そのシナリオ通りに世界のあちこちで異変が同時発生するのです。首謀者は「ともだち」というコードネームを持つ謎の人物ですが、あのとき、秘密基地に一緒にいたメンバーの1人でした。自作自演の地球防衛に、世界は「ともだち」を救世主として崇め、その支配下に置かれてしまいます。
「ともだち」の陰謀とその暴走を食い止めることができるのはあの時のメンバーしかいない・・・と、まぁこんな話です。
オープンソフトは必ずiPhoneにAI・人工知能(じんこうちのう,英:Artificial Intelligence, AI)を組み込むはずです。その可能性は、いちペットに過ぎなかったケータイが、気づいてみればパートナーとしての役割を担い、ケータイとしかコミュニケーションをとろうとしない人々、ケータイに判断を依存してしまう人々、ケータイに人生を委ねる人々・・・を急増しかねない。
ケータイが「神様」となり、ついには人類を支配下に置いてしまう時代の到来?
iPhoneを見ていると、そんな近未来小説が書けそうです。
経営コンサルタント・ジャーナリスト 中島 孝志 (なかじま・たかし)
ホームページ:http://www.keymannet.co.jp (中島孝志のキーマンネットワーク)
略歴 東京都出身。早大政経卒、南カリフォルニア大学院修了。PHP研究所、東洋経済新報社を経て独立。会社経営のかたわら、経営コンサルタント、経済評論家、ジャーナリスト、映画プロデューサー、大学・ビジネススクール講師など幅広い顔を持つ。ビジネスマンの研究会「キーマンネットワーク」を主宰。
[Nikkei Bizplus2008/07/23]
わたしは、ドコモなんですよ・・・・
AI入りのマックなんて、ちょっと楽しみですね、ドコモになったら買おうっと!!
