国交省と観光協会の不透明な関係 | 東京リーシングと土地活用戦記

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ヤクザの組織には上納金というものがある。それを悪びれずに役所がやっているのだから、あきれる。

 3月5日水曜日に行われた地方分権改革推進委員会で、僕はこの役所の“上納金”システムを明らかにする資料を提出した (提出資料) 。国土交通省の天下り団体である社団法人日本観光協会が「全国広域観光振興事業」という名目で都道府県に入る地方交付税の4割をよこせ、と要求している資料だ。各都道府県の観光協会にお金を出し、観光協会が上部組織に“上納”する。

国交省と観光協会の不透明な関係

 地方分権委員会で、この資料を示して、国交省と日本観光協会の関係を問うた。答えたのは国土交通省の西阪昇大臣官房審議官である。

「日本観光協会が全国的な観光振興の事業をするにあたって、各地方の観光協会から、一定額の寄付を頂いて、地方の観光協会と協力してやっているしくみでございます。国が、特にこのしくみにかかわっているというものではございません」 僕はさらに質問をつづけた。 「元事務次官が観光協会のトップでいる。それは都道府県に対して心理的に強制されていると理解されませんか」 西阪審議官はこう答えた。
「私どもは、国のしくみとしてこれを運用しているわけではございません。各都道府県の観光協会と、民間でございます日本観光協会とのなかで、日本観光協会の事業にたいして、各都道府県の観光協会がどのようなかたちで協力するかという問題だと考えております」 埒があかない。国交省所管の公益法人は役所と一体であって、「民間」ではない。 「では、運輸省の観光のセクションとこの観光協会とは、実施している中身がどう違うんですか。観光協会と政策当局とはコラボレーションがあるのかないのか。整合性が取れているのか。僕は、実態は三重行政だと思っています。地方に中央省庁の出先機関がある。それから各都道府県があってさらに日本観光協会がある」

西阪大臣官房審議官の回答はこうだ。 「地方運輸局は、私ども国がやる仕事を、より地方公共団体に近いところで地方公共団体と協力してやるというのが一般的です。具体的には、海外で日本の観光プロモーションをする場合に、私ども国が全体のプロモーションをやります。けれども観光のプロモーションは、『こういう魅力的なところがあるので来てください』とパッケージにしていうことが必要です。その場合には、私ども国と該当する地方公共団体が海外へ行っていっしょにプロモーションをする。あるいは海外から人をお招きするということをやっております」。 「特に最近は、いくつかの県が広域的に協力的にプロモーションしたほうが海外の方に魅力を感じていただける部分がございます。東京都のように、都だけで外国人の方を充分引きつけられるところはすくない。こういう場合は、地方にある運輸局が自治体といっしょになってプロモーションをしたり、情報交換をやっております。こうしたことが観光関係において運輸局にやっていただいているところでございます」

まわりくどくてよくわからない。丹羽宇一郎委員長(伊藤忠商事会長)から簡潔に、と注意が入る。

運輸省と総務省が働かせたワル知恵


 国土交通省の答弁が要領を得ないから、説明をしなければいけない。都道府県は毎年、日本観光協会にこたえて2007年度までの8年間で、19億円を拠出してきた。天下り公益法人があたりまえのように要求している“上納金”に、都道府県が応じている。国民のまったく知らないところで。要望書ではこのように説明している。

「平成4年度に創設された観光事業振興助成交付金事業は、地方自治法第232条の2の規定に基づき支出される補助金であり、国内観光の振興に大きく貢献してまいりました。この制度は自治事務次官通知に基づき、特別地方消費税(都道府県税)の2パーセント相当額を都道府県から都道府県観光協会(連盟)に補助交付し、そのうち(略)40パーセント相当額を社団法人日本観光協会に配分する仕組み(出捐金)」

 かつて飲食や宿泊料金には料理飲食等消費税(料飲税)という都道府県税がかかっていた。消費税導入のときに「二重課税だ」という観光業界の反発にこたえるかたちで、料飲税から名称がかわった特別地方消費税の一部のお金を、県から観光協会に補助するしくみができた。問題はそのあとだ。特別地方消費税は廃止されたけれど、観光協会への補助を維持してもらおうと思った運輸省が、総務省と一緒になってワル知恵を働かせた。

 日本観光協会の「全国広域観光振興事業について、地方交付税による総額12億円の財源措置が講じられることとなったものです」(要望資料より)と指摘し、この地方交付税は実質的にはヒモ付きなので40パーセントを上納してくれ、というわけだ。

朝日新聞に解説を譲ろう。
「総務省は00年度から自治体の観光振興を行政需要として年間12億円分算入していると説明。日観協は『措置額のうち各県が地元で使う分を6割程度と想定し、残りを出してほしいという趣旨だ』と話している」(朝日新聞3月4日付)

用途が自由な地方交付金の“上納”を“お願い”

 都道府県の歳入は「地方税の税収」「補助金」「地方交付税」で成りたっている。補助金は使用目的がしっかりと決まっている、ヒモ付きのお金だ。たいして交付税は、都道府県の裁量で自由につかうことができる。いわば国から地方への“仕送り”のようなものだ。その額を算出する“変数”に観光振興が加わったからといって、観光振興に支出する義務はない。

しかし社団法人日本観光協会は、その変数のなかに、昔の料飲税の“しっぽ”のようなものがあることをもって、ずっともらっていた金額なのだから、その一部を拠出せよといっているのだ。『全国広域観光振興事業拠出金制度の経緯等について』によると、「商工行政費」のなかの「観光及び物産振興費」がその“しっぽ”だ。「強制ではなくお願い」というタテマエだが、上納金の催促に違いない。

 日本観光協会は国土交通省の天下り団体で、会長は元運輸事務次官の中村徹氏である。理事長は総務省、5人の常勤理事のうち国土交通省(旧運輸省)と総務省(旧自治省)からの天下りが2人ずつポストを分け合っている。

 国交省の態度に、地方分権委員会の丹羽宇一郎会長も怒った。分権委員会では僕はもう一度問うた。
「観光協会を縮小するとか廃止するとか。そういう方向で検討します、ということだけでも言ってくださいよ」 「国の機関ではございませんので、私どもがどうこうするという立場ではない」と西阪大臣審議官は答えたが、丹羽宇一郎委員長(伊藤忠会長)が言葉をさえぎった。 「それは表向き。OBの人がたくさん行っているんだからね。国交省がまったく知らないということはあり得ないんだから」
 しかし西阪大臣官房審議官も繰り返す。 「機関としては公益法人ということでございまして……」
国交省の観光部門は、10月に国交省の外庁として発足する「観光庁」へ業務を移転する予定になっている。日本が観光立国を目指し、観光振興に本腰を入れる姿勢を内外にアピールするのが目的だが、「観光庁長官」というポストをつくりたいためと思われても仕方がない。

別に「観光庁」でなくてもアピールはできるだろう。東京は、自力でしっかりやっている。

地方自治体が行政コスト削減をして得たお金をつぎこむのは観光行政だ。これこそ地方の仕事であって、国が公益法人を使って地方をあごで使うような仕組みはもはや許されない。

猪瀬 直樹 (いのせ・なおき) 作家。1946年、長野県生まれ。

1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年度文藝春秋読者賞受賞。以降、特殊法人などの廃止・民営化に取り組み、2002年6月末、小泉首相より道路関係四公団民営化推進委員会委員に任命される。政府税制調査会委員、東京大学客員教授、東京工業大学特任教授、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターなど幅広い領域で活躍中。東京都副知事。最新刊に『東京からはじめよう』(ダイヤモンド社)がある。

(2008年3月11日 Nikkei BP Net)


 地方再生で期待される、日本の観光振興、どうなっていくでしょうか????