6月30日 公務員法が成立、それでも天下りはなくならない | 東京リーシングと土地活用戦記

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公務員法が成立、それでも天下りはなくならない

 6月30日未明、改正国家公務員法が参院本会議で可決・成立した。この法律は、いわゆる「天下り」をなくすことを目的としたもので、これまで各省庁が個別に行ってきた再就職の斡旋を、新しく設置される「官民人材交流センター」に集約するというものだ。政府によれば、このセンターで人材斡旋を一括することにより、天下りの弊害である利権構造や官民癒着をなくすことができるという。

 だが、これで本当に天下りがなくなるのだろうか。百戦錬磨の官僚たちが、そんな程度のことで天下りというウマイ話を捨て去ることができるのか。わたしにはそうは思えない。

 そこで思い出されるのが、ある役所の事務次官と酒を飲んだときのことだ。ほろ酔い気分になったあたりで、わたしはこんな質問をした。「事務次官をやってきた4年間で、どういうことに一番心を砕きましたか」。すると、彼はこう答えた。「いかに新しい法律をたくさん通し、それに付随して、いかに多くの天下りポストをつくるかですね。それが事務次官の仕事なんですよ。もう、このことに全精力を注いだといっていいでしょう」

 官僚というものは、あらゆる手段を使って自分たちの既得権を守るものだ。中途半端な法律をつくっても、必ずあれこれと理屈をつけたり、抜け穴を見つけ出したりして、天下りの復活を図るに違いない。

 公務員制度改革について、国民が求めていることははっきりしている。退職後も民間企業で高給をとり、個室と秘書を与えられ、黒塗りの専用車で送り迎えされ、いくつもの勤務先を転々とすることで濡れ手で粟の退職金をもらう「天下り」を根絶することだ。

 ところが、いまの政府案では、そうした天下りが根絶できるとは到底思えないのである。

出世競争に敗れた中高年官僚を雇いたい?

 6月14日、わたしがパーソナリティを務めているラジオ番組、ニッポン放送「朝はニッポン一番ノリ!」のゲストに、公務員制度改革委員長である片山虎之助自民党参院幹事長を招いた。片山さんには、今回の公務員制度改革法案について根掘り葉掘り聞いたのだが、それでも安倍総理の意図がさっぱりつかめないのだ。

 そもそも、なぜ天下りが利権構造や官民癒着の温床となるかといえば、特別職に上がれない官僚のキャリア組を対象に、各役所の秘書課が再就職先を斡旋することから起きる。 もちろん、再就職先に対して露骨にメリットを説明するわけではないが、大人同士の暗黙の了解として、「そういう人を引き受けると、いいことがありますよ」—— 例えば、公共事業を分けてもらえたり、許認可で恩典があったりしますよと双方が理解しているわけだ。

 わたしは片山さんに言った。「利権と癒着をやめたいのなら、そんな面倒くさいことをしないで、パッとリストラして、あとはハローワークに行ってもらえればいいじゃないですか。わざわざ人材斡旋機関などつくったら、国全体で天下りを後押しすることにならないですか」。

 すると片山さんは、「そんなことはない」と反論する。「国家公務員には身分保証があるんだよ。そうした身分保証があるなかで、あえて辞めてもらうのだから、人材斡旋機関を設けて再就職の面倒を見てあげなければまずいだろう」。

 「でも、結局は利権と引き換えに天下りを押し付けることを、政府全体が行なうことになるのではありませんか」とわたし。「そんなことはない。天下りをなくすための法案だ」と片山幹事長は言い張る。「優秀な人材だから、民間企業からぜひこの人が欲しいと求められる人を斡旋するのだ」とまで言うのだ。

 いくらなんでも、それはおかしいだろう。役所のなかで出世競争に敗れた中高年の人材を、利権とは無関係の業界が「ぜひ来て欲しい」などと言うだろうか。

社会保険庁ではリストラできるのに…

 ここで、中央官庁におけるキャリア組の出世システムを簡単に説明すると、30歳前後で課長補佐になるのが一般的。そして40歳ほどで課長に昇進する。ここまではいいのだが、問題はそれからである。

 定年まで20年も残しているのだが、課長の上のポストというと局の審議官しかない(部長を置いてある部署もあるが)。これは、局に1人か2人である。その上は局長で、これはもちろん局に1人。

 局の数は省庁内で七つか八つ程度、審議官はせいぜい20~30人である。となると、幹部に昇進できないキャリア組は、課長のうちに外に出さないと、中央官庁のピラミッド構造が維持できないわけだ。このシステムこそが、天下りの温床となっているのである。


 民主党の天下り廃止案は、出世競争に破れたキャリア組も定年まで雇って、仕事をさせろというものだ。それはそれで一理あるが、かなりのコストがかかってしまう。

 だからわたしは、民間企業と同じく、パッとリストラしてあとはハローワークに行ってもらえばいいと主張しているのである。

 わたしは、片山自民党参院幹事長に、社会保険庁の改革関連法案について尋ねた。「社会保険庁は日本年金機構に移行するといいますが、その際に本人の働きぶりを見て、優秀な人材を機構に受け入れるそうですね。じゃあ、優秀でない人はどうするんですか」。

 すると、「分限免職にする」
と片山幹事長は明確に答えた。分限免職とは、簡単にいえば公務員に対するリストラである。担当する事業そのものがなくなるなどして人材が余ってしまった場合、このように公務員でもリストラは可能だ。

 では、なぜ社会保険庁はリストラできるのに、中央官庁のキャリア官僚はリストラできないのか。多少の割増退職金を払ってもいいから、同期の中で昇進ができなくなったキャリア官僚もリストラすればよい。

 片山さんは「森永君のように、きっぱりと二分法で考えたらいけないんだよ」と苦笑いしていたが、そこまでやる覚悟がないのでは中途半端である。今度の法律も遅かれ早かれ官僚に骨抜きにされることは間違いない。そう考えると、今回の公務員法案もまた、単なる選挙向けのポーズだとしか思えないのだ。

「天下りがないと有能な若者が来ない」は本当か?

 わたしも役所にいたことがあるから分かるが、天下りに対するこだわりというのは大変なものである。天下りをして甘い汁を吸いながら、老後を楽に暮らしたいと考えているのだろう。財務省や国土交通省のように、強大な許認可権をもっている省庁では、特にその傾向が顕著である。

 もし天下りを本当になくそうと思ったら、バッサリと天下りをするルートを断ち、天下りをしたら厳罰に処すという法律をつくらない限り、絶対に天下りはなくならない。

 何度も言うように、リストラした官僚はハローワークに行ってもらうのが一番なのだが、それでは気の毒だというならば、こんな案はいかがだろうか。籍は役所に置いたままにして派遣に出すのである。能力が落ちるようだったらディスカウントしてでも働いてもらう。そのうえで、一切の兼業を禁止すれば、利権と癒着は防げるような気はする。コストもたいしてかからないし、どなたか検討していただけないだろうか。

 いずれにしても、天下りを根絶できないのは確かな理由がある。それは、天下りをなくしたら「有能な人材を集められない」と、官庁も政治家も深く信じているからなのだ。

 しかし、いまの若者は、金だけで動かなくなってきた。ホリエモンのような特殊な人間は別として、そこそこの生活ができれば、国のため社会のために働きたいと考えている若い人は結構多いものだ。官僚を採用するときも、まじめに日本のこと考えて、社会のために奉仕したいという人を選べばいい。むしろ、いま国家公務員に求められているのは、そういう人ではないか。

 「天下りも利権もなくなりました」と公言して、それでもやりたい人を採用する —— そういう人を採用することこそ、この国の腐敗や利権をなくす最適の方法ではないだろうか。

森永 卓郎氏森永 卓郎氏(もりなが・たくろう)



【略歴】
 1957年東京都生まれ。東京大学経済学部卒。日本専売公社、日本経済研究センター(出向)、経済企画庁総合計画局(出向)、三井情報開発総合研究所、三和総合研究所(現:UFJ総合研究所)を経て2007年4月独立。獨協大学特任教授。テレビ朝日「ニュースステーション」コメンテーターのほか、テレビ、雑誌などで活躍。 専門分野はマクロ経済学、計量経済学、労働経済、教育計画。そのほかに金融、恋愛、オタク系グッズなど、多くの分野で論評を展開している。

【ホームページ】
http://www.rivo.mediatti.net/~morinaga/takuro.html


 さすが、天下りの主役・東大、今の天下りのシステムをよく理解していますね。まさに、亡国です。

 この改革案の根本的な矛盾は、企業は別に各省の早期退職した人をほしがっているわけではないってことです。

 その人とつながっている各省の権益がほしいだけです。

 あきれたことですが、人材バンクに対して各省が口出しできることになっています。
 これだと、今は曲がりなりにも民間企業には2年は天下りできないようになっていますが、それすら出来るようになってしまいます。

 明らかに天下りを合法化してしまうだけの案なのです。(ひどい話だ!!)

 そういえば、昔、履歴書を見た、政府系銀行の幹部さんは、退職後、きっちり2年弱で。民間の会社を4か所以上渡り歩いていたようでした。