中国ビジネスリスクを克服するキーワード
筧 武雄 (横浜銀行国際部)
金を出さない中国側は初めから絶対に損しない
中国側は交渉を開始するとき、必ずと言っていいほど、この事業がいかに日本側にとって有意義で、メリットがあるかということについて押しつけがましく演説してきます。こちらにしてみれば余計なお世話なのですが、このときからすでにマインドコントロールは始まっているのです。
何故、日本人は中国人の巧みな弁舌にからめとられてしまうのでしょうか? 彼らは、彼らの争える土俵を良く知っています。まず、そこから外には決して出ようとしません。日本側がそこから無理矢理引っぱり出そうとしても、絶対に乗ってきません。
中国人は基本的に人間不信です。個人主義に走るのも、万事コネに頼るのも全て人間不信から発しています。「自分は天国、他人は地獄」というのが彼らの考え方です。なんとも貧困な精神ですが、これが現実です。そんなせちがらい中国社会で切磋琢磨してきた強者達とサシで渡り合うには、日本企業は基本的に修行が足りません。
中国工場では、現地人社長による現地式管理が最も向いていない
ある農協が中国の公司と合弁して養鶏場を始めました。最初は日本式の鳥かごをつくって鶏をたくさん飼育し、卵をどんどん産ませて、食品加工することにも成功しました。もう大丈夫ということで、日本人が日本に帰国したところ、急に生産高が減り、品質も劣化してしまいました。現在では配当など望むべくもなく、売上利益も人民幣のため日本で受け取ることができません。結局、投資全損で泣き寝入りとなっています。
現地調査に行ったところ、日本式の鳥かごは壊され、中国式の地面での放し飼いになってしまっていたというのです。たしかに鶏がかわいそうということは言えるでしょうが、これでは合弁事業の趣旨が元の木阿弥です。
同じ様な話はほかにもあります。
工場管理に慣れてきたので、思い切って日本人は引き揚げ、短期間中国人の副総経理に任せてみることにしたところ、彼は夜遅くまで操業し、休みも返上して一生懸命働いています。感心していたところ、実際の生産高はそれほど増えていません。あれだけ頑張っているのに原因がわかりません。その後の現地調査でわかったことは、実は、「余暇時間」に勝手に生産ラインを動かして、製造したものを勝手に販売していたのです。あるいは、本業と関係ない私物を製造、修理していたことがわかりました。中国人管理者による適切な管理は望むべくもないのでしょうか。
一面的な見方かもしれませんが、筆者が過去見てきた中国公司の伝統的な現地式経営とは、だいたい次のようなものです。
公司には人事、給与、販売、購買、貿易、財務、開発、研究などの自主経営権はなく、単に決められた数量、規格の製品を製造するだけの工場でしかありません。供給が不安定なために、材料が手に入るときにまとめて購買し、数ヶ月で作りだめするために、一年の後半は工場は稼働していません。したがって売上高に匹敵するぐらいの製品在庫と材料在庫を抱えています。売上代金を回収できないために、多額の売掛金(=未収金)とほぼ同額の買掛金(=未払金)残高があります。
従業員は九時に出勤し、新聞を読み、十一時半頃から昼休みに入ります。幹部は帰宅し、一般社員は食堂で食べて、二時まで昼寝します。四時頃から帰宅が始まり、五時には全員が退社します。それ以前に、従業員の三分の二ぐらいはそもそも出勤せず、「退休扱い」として隠居しているか、「待業扱い」として自宅待機となっています。三交替でやっているという言い訳は、多くの場合、嘘です。
ビジネスの世界は厳しいですね。先日、スーパーで、中国うなぎのバーゲンをやっていました。とてもびっくりする程、安かったです。米国は輸入禁止になりましたからね。

