茶杓(ちゃしゃく)というのは、
抹茶をすくう道具です。
象牙素材の茶杓から始まったとのことです。
現在ではたいていの場合素材は竹ですが、
象牙やべっ甲、古材(木製)の場合もあります。
家元をはじめ、高名な茶人は、
自分で竹を削って作成することもあります。
高名になるには、本当に何でも万能でないと勤まらないのですね。
茶杓は、茶杓を入れる為の竹の筒である「共筒」に入っています。
共筒にはおおむね作者の署名、花押や、銘が書かれています。
この銘によって席中の道具との取り合わせをします。
銘はおめでたいもの、季節に応じたもの・季語、禅語からくるものなどです。
つまり茶杓には原則として銘があるものなのです。
銘がある茶杓は高価ですので、
茶道教室の稽古用の茶杓としては、
まず使いません。
が、点前の稽古の流れで、
茶杓も含む茶道具拝見の場面があり、
手前をしている亭主役が道具それぞれの由緒や、
素材、形、銘などを客に伝える必要があります。
稽古で使う茶杓に銘がないなら、
正直に「茶杓は稽古用のため、銘はありません」
といいたいところでありますが、
その場の雰囲気にあった、四季折々や、
心意気が感じられるような言葉が、
銘(本当はないんだけど)として語ることができるのはすばらしいものです。
また茶杓の独自の銘を考えるために、
季語を調べる、言葉を知ることも、茶道の勉強のうちです。
ふさわしい銘を即座にいうのは、
正直なところ何年茶道を経験しても難題です。
俳句や短歌に心得がある人はともかく、
一般人は、知っている季語の数も限られており、
とっさにぴったりと合う、皆をうならせる銘が浮かばないものです。
茶道は先駆けを大事にするので、
実際の季節より、すこし早い季語を使いますので、
それも悩ましいところ。 ですから稽古の前に、
今日はなんという銘にするか考えておくと、本番で慌てませんね。
いつ使ってもよい万能型の銘としては、
吉祥、好日、和敬、和楽、千歳、無事というところが代表的でしょう。
季語が思いつかないときのために、覚えておかれるとよいでしょう。
では今回のお題である、
12月の茶杓の銘として適切な言葉を考えてみましょう。
1)12月といえば?
年末、別の呼び方では師走ですよね。
さらに四極月、極月、春待月、梅初月という異名もあります。
二十四節気という切り口では、
大寒、冬至があります。
そういった言葉をそのまま銘にするのは、
何も言えないよりはましですが、
ちょっとつまらないので、ひとひねりしてみましょう。
冬至ではなくて冬至粥とかどうでしょうか。
実のところ年間で一番寒いのは1月の終わりから2月一杯だと思うのですが、
日本の季語では、12月が一番寒そうな字を使います。
先駆けだからですよね。
冬で寒い、年末、食事という切り口で考えてみましょう。
冬で寒いというところで:冬ごもり、冬木立、短日、木枯らし、初氷、うす氷、氷柱、六花、寒月、風花
年末ということで:千秋楽、惜年、年の瀬、年忘れ
冬の食べ物で:冬至粥、冬至南瓜
どうでしょうか、きれいなことばが多いですね。
またまた余談ですが、茶道は相撲や落語とも、
共通の用語を使う事があるのです。
千秋楽などいい例ですね。
日本の伝統文化は何でも知っていると、茶道の学習にも役にたちます。
2) ついでに、、年初の1月は、どんな感じ?
睦月の1月は暦の上では春です。
新年最初の稽古は初釜といい、
どちらの社中でも最初の稽古のお菓子は「花びら餅」と決まっています。
実際にはこれからが冬本番なのに、
すでに初春なんですよ、
先駆けですから。
よって新年おめでたい、初から始まる言葉が1月の銘になります。
立鶴、高砂、常磐、瑞雲、振袖、神楽、
春光、千歳、福俵、初音、初茜、福寿、玉椿などいかがでしょうか・
銘の例について、
あえてふりがなをふりませんでした。
読めないもの、意味がわからないものがあれば、
ぜひ調べて皆さんの言葉の引き出しのこやしにしてくださいね。