メキシカン・ドリーム | 会社を辞めてXXを season 2

会社を辞めてXXを season 2

自分の原点に戻るべく57歳にして東京の商社を辞めて農業分野への転職を決意。年齢フィルターに苦戦しながらも農園への転職に成功するも1年でリストラに。再び彷徨いはじめた自分探しの備忘録。



 

 

 

 

みなさん、こんにちは。

WBCで日本はメキシコと対戦し見事勝利した!村神様の逆転タイムリーは本当に素晴らしかった。メキシコも強敵で強打者を揃え、体格の違いを見せつけた。スタメンがみなメジャーリーガーで大金を稼ぐ選手もいるそうだ。私はメキシコといえば思い出すことがある。

諸兄は2011年9月にアメリカの金融拠点であるニューヨークのウォール街が民衆によって占拠された事件を覚えておいでだろうか。東日本大震災後のことで国内では大きく報道されることはなかったが大規模なデモ、占拠は2週間ほど続いたようだ。

アメリカにおいて1%の富裕層が総資産の99%を所有しているという実態を受けてウォール街を占拠しようという呼びかけにつながった。それに呼応して多くの貧困層が給料をあげろとデモに参加した。スローガンは「We are 99%」だった。

このデモに参加したマク〇ナルドの店員が制服で座り込みマスコミのインタビューを受けていたのが印象的だった。確かな話かわからないが何年か後、この店員が立っていたマク〇ナルドのレジにはタッチパネルのセルフオーダーレジが設置されたというエピソードを何かでみた記憶がある。

低所得層が富裕層に歯向かうと必ず仕返しがくるのがアメリカだ。欧米、アメリカの富裕層は労働力にお金を払うことがキライだ。高いスキルを持たない低所得層に対しては特にそうだ。

基本給が安いのでタクシーや飲食店などのサービス業は客からチップを直接受け取る文化が定着した。そして今のアメリカの低所得者層と言えばヒスパニック系だ。

私は不正をやった転籍社員が持ち込んだ事業の関係で2004年、2005年の秋にアメリカ西海岸に長期出張したことがある。一次製品の工場の品質管理だった。

工場から遠く150Kmくらい離れた都市部から2時間かけてメキシコからの不法移民が労働力としてバスで運ばれてくる。老若男女、少年少女まで動員されていた。

労働者の最低賃金は州によって違うが一時間当たり9ドル前後が当時の相場だったと記憶する。だが彼らは違法入国者なので法律は関係がない。

その工場のメキシコ人労働者は一人当たり半分の4,5ドルで働いていた。そして作業が終わるとまたバスに乗って150Kmの道のりを帰っていく。しかもバスはタダではない。往復の運賃を払うと更に半分になる。

彼らは家族単位の季節労働者で夏は南部の綿花の収穫で働き、冬はこの地域にきていくつかの工場ではたらくのだ。

ニューヨークに行った1990年代はまだ黒人が下層労働者でハーレムなどは犯罪の巣窟だった。しかし今や黒人の地位は上がり大統領まで生まれたが人種的にはマイノリティになった。

そして今はメキシコ人などのヒスパニック系が下層労働力のマジョリティとなり全米を席巻している。影響は道路標識にもおよび、むかしは英語だけだったがスペイン語との併記があたり前になった。

彼らは貧しいながらも住まいはあるが電気代が払えない。テレビもなく娯楽のない毎日を大家族で暮らしている。こういう環境はなぜかコウノトリが好むようでたくさん子供が生まれる。

若い子では12歳で母親になる子もいた。こうして家族が増えると低賃金でもアタマ数で稼ぐことができるのだ。そして生まれた子供はアメリカ人になる。アメリカ国籍が取得できるのだ。

国籍さえ手に入ればシメたものだ。義務教育を受け奨学金を使って大学まで行ける。いい職にもありつき大家族を養っていけるようになる。しかもアタマ数だ。

こうして中流アメリカ人になったメキシカン・ドリーマーがだんだん増えてきている。アメリカの消費経済をまわすけん引役になりつつあるか、もしかしたらもうなっている。

当然、彼らには選挙権があるので次第に政治的影響力も増していく。トランプ大統領はこれを嫌がってメキシコとの国境に不法入国を防ぐ巨大なフェンスを作ろうとした。トランプはWASP(White Angro Saxson Protestant)だから白人至上主義だ。ヒスパニック系にアメリカを渡すわけにはいかない。

しかし、この勢いだと恐らくあと半世紀もすれば黒人のオバマが大統領になったようにメキシコ人が大統領になる日がくるのではないか。そうなればきっとメキシコとの国境はなくなっていくのかもしれない。

翻って日本だが、世界でも有数の薄給の国に落ちぶれつつあり、勝手に衰退して貧困化している。岸田総理は賃上げを企業に要求しているが経済界はどこ吹く風だ。日本人はメキシコ人のような貧困に対する耐性が失われていて、彼らのように陽気に重労働はできないだろう。

先々月、すでに独立している子供から電気代の請求明細の写真がLINEで送られてきて「ギャー!」とコトバが添えてあった。やがて日本人も住まいはあるが電気代が払えず電気が使えない日常がやってくるのかも知れない。

でも、もしかしたら…。コウノトリがたくさんやって来る、効果的な少子化対策になるかもしれないナ。最後まで読んでいただきありがとうございます。

Live long and Prosper.  ||//_