国民国家を造り上げていない民族・地域はいかに弱いものかが、パレスチナとユダヤ人国家(イスラエル)の間に見える。第一次大戦後、オスマントルコによる緩い統一がなくなった。イギリスがこの現在のエジプトからシナイ半島、イラン、イラクまで統治下においた。この時期パレスチナにはアラブ人による国家を成立させるべきだったが、国家を成立させるリーダー集団もおらず、住民にも国民国家と言う概念すらなかった。明治維新当時の日本の一般市民と同じだと言える。


よってユダヤ人国家の必要性を必死に求めていたシオニストには歯が立たなかった。アラブ諸国はパレスチナ国家成立に力を貸すべきだったが、パレスチナに国家を求める集団やリーダーが居なかったため、国家を造ったとしても、アラブ諸国の傀儡政権になってしまう恐れがあり、その傀儡政権に対する反抗さえ生まれる可能性もあったと思う。

国家、国民国家を造るのはいかに大変な事なのか。土地があり、人が居て、生産があり、人民を導くリーダー層が居ても成らない。統合できる、人々をまとめ上げるイデオロギーが必要なのだ。

これを考えると日本を統合するイデオロギーは何か、アメリカを統合するイデオロギーは何か、中国を統合するイデオロギーは何か、ロシアを統合するイデオロギーは何か、パレスチナを統合するイデオロギーは何かを考えると面白い。パレスチナの場合あるとすると、今までイスラエルから受けた数々の殺戮・被害の歴史(ナラティブの集積)になるのかもしれない。するとパレスチナ国家成立が成立するにはイスラエルとの融和はあり得なくなる。

現在のハマスとイスラエルの戦闘を終わらせるには、イスラエルと同居するパレスチナ国家を成立させる事しかないと思われるが、パレスチナ、イスラエルともども双方の戦争・紛争による被害と憎しみを国家結束のイデオロギーに組み込んでいることから、成立したとしても憎しみあい、戦争・紛争を起こす潜在的動機は潜んだままだ。

今回の様なハマスによるイスラエル攻撃がまた起きる可能性と、イスラエルによる隠れたパレスチナに対する工作・圧力が始まるだろう。

そこに国連が関与し、イスラエルを中心に世界から支援を募り、パレスチナ人が経済駅に豊かになり、人々が幸せを得られれば、何とか戦争・紛争を抑えられるかもしれないが、根本的な問題は解決しない。

中国はかつて、人々の所得が増え、外国からの安全保障上の問題も無くなれば、平和を希求する民主国家になると世界(特にアメリカ)が予想していたが、実際は成らなかった。アフガニスタンもかつてソ連・アメリカが関与したが成らなかった。

それぞれの民族固有に、統治されるためのイデオロギーや概念や仕組みは異なり、その中で民主主義は単なる一つの選択肢でしかない。

あるいは、パレスチナ・イスラエルを抱合する新しい国家イデオロギーを作り上げるか、太古のユダヤ教、イスラム教が成立する前の、パレスチナにともに暮らしていた民族としてのイデオロギーを再発掘するかだが、そんなこと無理だと言われれば反論出来ない。

パレスチナ、イスラエルの問題はそんなに簡単に解決できる問題ではない。様々な安易な発言が世界に飛び交う、しかし世界で発言が途絶えれば放置される。

あらゆる人が、間違ったとしても、たとえパレスチナ人がイスラエル人が激高したとしても、発言し、意見し、アイデアを出すべきだ。