A男は妻のB子と、家事はお互いに協力してやっていこうと話し合ってきました。
たとえば洗濯については「洗濯はB子、乾いた洗濯物を畳むのはA男」と、きちんと役割分担をしていました。
A男はそれに不満もなく、特に苦痛を感じることもなく、日々の家事はうまく回っていました。
ところが、ある日何気ないやり取りが心を大きく揺らします。
「言われたからやりたくなくなった」という感情
その日、A男は仕事を持ち帰っていて忙しく、洗濯物を畳む時間がなかなか取れませんでした。
夕方になってようやく仕事が片付き、「これから畳もう」と思ったタイミングでB子が帰宅。
そして、「畳まないの?」と声をかけてきたのです。
その一言に、A男の気持ちは一気にかき乱されました。
「やろうと思っていたのに!」
「言われたから、やる気が失せた…」
「まるで責められているようだ」
怒り、否定されたような気持ち、反発心――さまざまな感情が湧き起こり、結局その日は畳まずに就寝。
翌朝、洗濯物はB子が畳んでいました。
その姿を見たA男は、またもやモヤモヤとした気持ちに。
「やれなかった罪悪感」や「負けたような気持ち」が混ざり合い、複雑な感情が渦巻いていました。
過去の記憶が今の反応を作っている
A男は幼少期、怒鳴る父と気遣いが苦手な母のもとで育ちました。
家庭内には常に緊張感があり、父の顔色を伺いながら過ごしていた日々。
その中で「怒られないように」「責められないように」と身につけた行動パターンが、今も彼の中に生きているのです。
「やらなきゃ」と思っていたところに、指摘される。
それだけで、「責められた」「否定された」と感じてしまう。
これは、アダルトチルドレンに多く見られる特徴のひとつ、「否定への過敏さ」です。
過剰な自己防衛が感情をこじらせる
こうした反応の背景には、「過剰な自己防衛」があります。
ほんの一言に対して、怒りや罪悪感が強く出てしまうのは、「これ以上傷つきたくない」「自分を守らなければ」という心の働きの結果です。
けれど、この感情は“今この瞬間”に生まれたものではありません。
過去の記憶や体験が引き金となり、条件反射のように出てきてしまうものなのです。
自分を見捨てないで、少しずつ優しく
このような感情の波を完全に消すことはできません。
しかし、自分がどんなときに過敏に反応しているのかに気づくことで、感情の嵐を少しずつ穏やかにしていくことは可能です。
大切なのは、「自分を責めずに見守ること」。
「ああ、また反応してしまったな」と認めるだけでも、心は少しずつ落ち着いていきます。
過去の痛みに気づきながら、今を生きる。
感情に飲み込まれそうなときは、一度立ち止まり、自分の心に優しく声をかけてあげてください。
おわりに
「畳まないの?」というたった一言に、大きく揺れる心。
それは、あなたがこれまで必死に生き抜いてきた証でもあります。
だからこそ、自分を責めないで。
少しずつでいい。自分を大切にする選択を積み重ねていくことで、あなたの毎日はもっと楽になっていきます。
一緒に、生きやすい日々を目指していきましょう。
