僕が、この世界にこうして生きていて、最も興味深いものは、他のどんな物よりも、僕自身の心の動き、移ろっていく気持ち、です。
    長く生きていると、とにかく色々な事があるけれど、それに伴って自分の思いがどんどん変わって行って、いつだって、もうひとりの自分が、その心模様を見つめながら、(ほほう、人間って、こういう状況になると、こんな気持ちになるんだなあ、面白いなあ…)と感じているのです。

    年齢を重ねれば重ねるほど、ますます現実に新しい局面が現れて、僕の気持ちも味わったことのない気持ちが生まれてきます。

   誰だったかが「何のために生きてるのかわからない」と言っていたのを思い出しながら真っ青な空を見上げる時や、老いた母とバス停のベンチに並んで腰掛けたら、母の様子が可愛らしい少女みたいで、ああ、母を自分が守ってあげなきゃと強く思う時、師走の街角で買い物をしていて振り返ったらネオンに照らされた街が、気がつくと、いつのまにか未来世界みたいな風景になっていて、すごーく遠くに来てしまったような気持ちになって、でも、まだ自分の中にやりたい事や夢が幾つも瞬いているのを感じたりする時…etc.  この年齢になって、こうい体験、経験をすると、こういう気持ちになるのだなあと感じて、そのやって来る気持ち、心の色みたいなものが、とても面白くて、何よりも興味深いのです。

    人間の人生って、結局は、そういうことを味わうために在るような気がします。

    さて、師走です。今年最後の出勤日に、お得意さんの年配のおじさんが、うちの服をクレジットカードで買ってくださって、お会計の際、レジで「何回払いになさいますか?」と訊かれて、「100回払いにしてください!」と言った後、ガハハハ!と大声で笑っていらして、その渾身のギャグが決して嫌な感じでなく、とても周りを明るくして、和む感じだったので、素晴らしいなあ!& 今の時代は、特に、ユーモアって大切…!と心から思ったのでした。

    来年は、いったいどんな年になるのでしょう?

    今の自分の気持ちをじっと覗いてみると、ただ嬉しいのでも、ただ悲しいのでもなく、無数の色々な気持ちが混ざり合って、言葉に出来ない或る色彩のようなものを持って、ちゃんと生きているのを感じます。決して、それは自分の嫌いな色じゃない感じ。自分だけの大切な、心の色です。

    そうした今の気持ちというのは、次の現実を咲かせる小さな蕾のようなものではないかなと思います。
    或いは、現実という海の海図であり、羅針盤です。

    きっと、今の自分の、この気持ちが、次の現実の行方を決めていくんです。

   大事な相棒である、この心を抱いて、来年は、どこに向かって歩いて行こうかな、と考えたりしています。