本物のハングリー精神 | 日本人サッカー監督 松田裕貴 [海外での挑戦]

日本人サッカー監督 松田裕貴 [海外での挑戦]

日本人プロサッカー監督 海外挑戦
これまでに18ヶ国を渡り歩き、
イングランド 日本 ベトナム シンガポール タイ フィリピン ラオス
で指導経験を持つ。
フィリピンとラオスではトップチームの監督を経験。
日本人指導者の可能性を模索している。

先日、3月22日でフィリピン滞在10ヶ月となった。

この国は今まで渡り歩いてきた国の中でも比較的、生活がし易い。
フィリピン人のマザータンはタガログ語であるが、
ほとんどの人が英語でのコミュニケーションが可能だ。
また、アクセントも聞き取りやすく日本人にも容易に理解ができる。

これまで、東南アジアはシンガポール、マレーシア、ベトナム、タイ、フィリピンと
計5ヶ国で生活やショートステイをしてきたが、フィリピンの貧困差は特に際立つ。

私の所属するサッカークラブのオーナーの父親は
マイニング・カンパニーを経営し、フィリピンでも有名な富豪だ。
何度か自宅に行ったことがあるが、とてつもなくデカい。
敷地内には犬を20匹飼い、メイド、ナース、セキュリティーガードなどのスタッフが
10名弱、常駐している。
また、プライベートジェットやクルーザーも所有しているという。




一方、都心にも貧困層が多く暮らす地域がある。
ボロボロの衣類に裸足でゴミを漁るホームレスや、ストリートチルドレン。
炎天下、交通量の多いポリューション地獄の道路脇で力尽き、
死んだかのように倒れて(寝て)いる者。
家とは言い難いトタン屋根で隙間だらけの簡素な住居。
飲み差しのコーラを強請る未就学児。

劣悪な環境下で多くの人が生活を強いられている。




この貧困層出身の者にとって人並みの生活ができる可能性は極めて低い。
そんな中、運良くスカウトに見出され我がチームに在籍している選手がいる。
名前は Daniel (170cm/67kg, MF)
体格的に恵まれた選手ではないが、彼の"闘争心"と"ボールへの執着心”は
チーム1だと随所に感じる。

アシスタントコーチのフィリピン人も、彼の執着心を比喩的にこのように表している。

「相手⑩番をマークしろ!と指示すれば徹底して相手を潰す。
 例え相手がトイレに用を足しに行く時も、彼はプレスし続ける!」

Danielはまだ21歳でスキルが決して高い訳ではないが、
彼の運動量や闘争心は相手にとって脅威となる。

「ハングリー」の度合いを図ることは不可能だが、
貧困からの脱却(家族を含め)を目指す選手のモチベーションは計り知れない。

給料、勝利給を稼ぐため、彼らは今日もピッチで戦っている。