いつもお付き合いいただきありがとうございます。
今日は読書の記録です。
『夜明けのはざま』町田そのこ ポプラ社 2023年11月6日第1刷発行
まずは帯の紹介文を引用させてください。
自分の情けなさに歯噛みしたことのない人間なんて、いない。
自分らしく生きることを取り戻す
『52ヘルツのクジラたち』の著者による渾身の感動作
せめて、自分自身にはウソをつかずに生きていきたい。
地方都市の寂れた街にある葬儀社「芥子実庵」。
仕事のやりがいと結婚の間で揺れる中、親友の自死の知らせを受けた葬祭ディレクター、元夫の恋人の葬儀を手伝うことになった花屋、世界で一番会いたくなかった男に再開した葬儀社の新人社員、夫との関係に悩む中、元恋人の訃報を受け取った主婦……
死を見つめることで、自分らしく生きることへの葛藤と決意を力強く描き出す、本屋大賞受賞作家、新たな代表作
これを読んだだけでもヘビーだなと思いますね😅
物語は、家族葬専門の葬儀社「芥子実庵」を舞台に、第1章から第5章まで、そこに関わる人々のそれぞれの人生を拾っていくように進んでいきます。
心に残ったセリフをいくつがあげさせてください。
第1章、
芥子実庵での葬祭ディレクターという仕事にやりがいを持っているけれど、結婚相手に「仕事はしても良いが、死に関わる仕事はやめてくれ」と言われ、悩んでいた佐久間真奈に、親友なつめが「自分の葬式はサクマにやってほしい」という遺書を残して自死しました。
そんなサクマに、なつめとは長い付き合いの久米島が言った言葉です。
逃げてほしかったんだけどなあ。(中略)戦場から逃げ出すこともせず、勝ち進むこともできねえなら、あとは戦死しか終わりはない。(中略)俺にはできねえな。
(中略)
なつめは、戦えって言ってたんじゃねえかな。(中略)なつめはあなたがこの葬儀を拒否して、ただの参列者になったら戦場から降りろって言いたかったんだ。仕事を辞めろ、って。でも担当したのなら、これからも戦えってことじゃないかな。
第2章、
芥子実庵に祭壇用の花を納めている生花店に努める千和子に、別れた夫野崎速見の現在の恋人上津の葬儀のための花を納めてほしいという、亡くなった上津本人からの依頼が入りました。
佐久間真奈の「仕事か結婚か」という悩みに対して、千和子が言った言葉です。
せっかく助けてくれたひとを、自分の中の「正解」に無理やり当て嵌めてしまったのよね。大事なひとがどんな風に生きたいか、何をしあわせに感じるかなんて考えてなかった。それが、離婚の理由なんだけど(中略)
一緒に生きていくために大切 なのは「しあわせな瞬間」だけではなくて、「相手のしあわせを考える時間」も大事なんだよ。
その、元夫の現在の恋人の遺書にあった、なぜ別れた妻にこんなお願いをするのかを記した部分です。
速見くんがどれだけ弱いかを知った上で、彼がどういうことを考える かを想像できた上で、叱咤して前を向いて歩かせることのできるひとは、あなたしかいない。 ぼくは、彼を甘やかすことが己の愛情の示し方だと思っていました。真綿で包むようなやさしい日々を送らせたいと考えていた。でもそれは、彼をやさしく殺める行為だった。ぼくがいなくなったあとのことを、ちっとも考えていなかった。
野崎速見に対して、成長を期待しともに幸せになろうとした千和子と、何不自由なく楽しく過ごさせてあげることがお互いにとっての幸せだと思った上津。
人を育てる時のバランスって難しいなあと、子育てを想定しながら思いました。
第3章、
芥子実庵で総裁ディレクターとして働く井原は、妻と生まれたばかりの娘を、一度に亡くした経験から、芥子実庵で働くことを決めました。
大事な人を喪った心は、血を葺くような痛みを覚え、悲しみがあふれる。それに触れることで、自分自身の心の傷もまた血を噴く。その痛み、悲しみこそが、二人が間違いなく自分のそばにいてくれたのだと感じさせれてくれるのだ、と井原は言ったという。
(中略)
「彼はたくさんの大切なものを喪って、いまもそれに囚われている。ちっとも、豊かじゃない。 彼だけじゃない。どれだけ幸福そうに見えても、みんな、それぞれが何かを背負って生きてる。情けなさに歯噛みをしたことのない人間なんて、いないんだよ。」
そんな話を聞いた、母一人子一人で社会の底辺で育ち、その母の葬儀すら満足にできなかった後悔から、芥子実庵で働くようになった須田が語った言葉です。
自分が情けない。ばかだと、自分が誰より分かってる。でも、それでも、誰か不幸な 人間を見たかった。情けないと見下せるひとが、ほしかったんだ。
(中略)
誰かと比べて優劣を感じるのは愚かなこと、意味のないことだろう。分かってないわけじゃない。でも、それでも。見下げられることが常だった母に、誰かより幸福なことだってあったと言ってやりたかった。
うん、わかっていても、そう思うことってあるよね。
「人の不幸は蜜の味」なんて言葉がある程だものね。
そうすることでしか、自分の心のザラザラを宥められないことって、あると思います。
「そんなこと思うな」なんて、私には軽々しく言えません。
第4章、
「仕事か結婚か」を佐久間真奈に突き付けた、彼女の恋人純也は、自分の姉良子に、良子の元恋人壱の葬儀が芥子実庵であることを伝え、そこで真奈の仕事ぶりを見て、報告してほしい、できれば真奈の考えを改めさせてほしいと頼みます。
そんな純也に良子が言った言葉です。
「それくらい、って言わないで。自分がそうやって簡単に言い捨てたことが、相手の大切なものだったりするんだよ」
こう言った後に、良子は、夫に対して、元恋人の壱に対して、自分はどうだったかを思い浮かべて悩みます。
良子と、壱の兄星との会話です。
「何にもしていないくせに、勝手に壱を諦めて、見限って…(中略)だから、壱がどんなふうに、どんなことを感じて生きていたのか、上っ面でしか知らない。あんなにも大事だった人の事を、私はどうして今まで軽んじてしまったんだろう。どうして、もっと見ようとしなかったんだろう。」
「もっと話しておけばよかったな。(中略)もっともっと、タイミングはあったのに。」(中略)
「そういう後悔を、しないようにしていきたいね。(中略)ぼくたちはあまりにも、明日に任せすぎている」
明日が必ず来るとは限らないんですよね…
第5章、
葬儀社の社長なのに死が怖くて仕方がない、なのに祖父から受け継いだ芥子実庵を手放すこともできない、そんな自分が情けないと言う芥川に、佐久間真奈が言った言葉です。
わたしたちは、何かを手に入れて、何かを失う。何かを望み、手に入れられないことに絶望する。己の手の中に残ったものと失ったものを数えて、嘆いたりする。
でも、大事なのは「持っていること」ではなく、「持っているもの」「持っていたもの」でもない。そこから得た喜び、得られなかった哀しみ、葛藤やもがきこそが大切なのだ。それらは、誰かに繋がれていく。(中略)「繋げていけばいいんだよ。(中略)掴めなかったことを悔やまなくていい。繋げるほうが、大切なんだ」(中略)
きっと誰もが、自分の中の苦しみと闘っている。
大切な人の死と、生きざまとに、とことん向き合うことはしんどいかもしれないけれど、それはこれからを生きていく自分の生と向き合うことでもありますね。
「夜明けのはざま」という題名で、作者さんは何を伝えたかったのだろう?それを暗示する明確な一文はなかったけれど、
ああ、これは「お通夜」だな、と思いました。
お通夜って、一晩中、お線香を切らさず焚きながら、亡くなった方に付き添うことですよね、
今は簡略化され他地域もありますが、元々はそういう風習でした。
それは、故人の思い出を振り返る時間だと思います。
「一晩中」です。
「一晩中」そうやっていれば、その内必ず「夜明け」が来ます。
大切な人を亡くすことは、それはそれは辛いことです。
でも、「一晩中」、故人との思い出をみんなで話しあったり、思いを馳せたりしているうちに、自分の知らなかった故人の一面に気付くこともあるでしょう。
故人に抱いていたわだかまりが、溶けるようなエピソードを聞くことも、できるかもしれません。
「一晩中」、大切な人を喪った、自分の中にある悲しく暗い気持ちと向き合っていれば、ある時ふっと、光に気付き目を上げるきっかけになる瞬間が来ることでしょう。
それが、「夜明けのはざま」なんだろうなと、思いました。
人は人を、自分に面している一面でしか見ることはできないのでしょう。
それは仕方のないことです。
仕方のないことだと知った上で、それでも、わかろうとする態度を、持ち続けることが大事なんだろうなと思いました。
さて、今日のおやつは
明治屋の春季限定、さくらマシュマロです。
桜の花エキスと、和三盆糖と、能登の塩が入っていて、桜の形をしています。
春らしいおやつでした🌸
今年の桜の開花は、もう少し時間がかかりそうですね🌸
それではまた!
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楽しい育児クラブで子育てカウンセリングをして10年になります。
仕事は好きだけれど、それとは別に、
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