コーチの名和です。
旅立ちの春といいますが、中学、高校にの新しい環境に進む選手も多いと思います。
新しいチームとなり、メンバーも初対面で緊張することでしょう。
スクールにも強豪私学に進学する選手が8名おり、4名が寮生活をして甲子園を目指します。
私にも過去にはそんな時期があり、親元を離れる心細さと、知らない環境に対してかなり緊張していたことを憶えています。
私が入学した愛工大名電高校野球部は、特待生は全員寮に入ることになっていました。
入学式の数日前に入寮するのですが、その日が近づいてくると期待感というより、不安がどんどん高まってきていたのを憶えています。
不安の理由は、そもそも私が愛工大名電野球部に入れるようなレベルではないと思っていたのと、説明会などで出席している一緒に入学する選手たちを見たとき、身体はでかいし私とは比べものにならない実績あるすごい選手たちばかりでした。
私はすでに入学前にレギュラーへの希望を失っていたと思います。
そんな私が入寮する前日の夜、父に言われたことがあり、今でも忘れられません。
その夜、父がここに座れと私に言い、私は父の前に座りました。
そして父が言いました。
「私は野球の経験がないから野球のことはわからないが、これだけ言っておく。理解できるできないは別として、その時になればわかるから憶えておけ。」
「叱られた、ミスをした、そんな時こそ前に出て声を出せ。」
「ミスをしてベンチに引っ込められてもベンチのすみに行くのではなく、監督の横に座って大きな声を出し続けろ。」
「集合する時は、人の後ろに行くのではなく常に一番前に出ろ。そして、行動するときは誰かと一緒にではなく、一人で先頭に立って行動しろ。」
「仲良くなるのはいいが、つるむんじゃない」
最後に
「監督や先輩が黒いものを白だといえば、それは白になる。黒ですけど?なんてつまらんこと言うな。」
これだけのことを言われたことを今でも憶えています。
今思うと高校に入学するというのに、学校生活の注意ではなく野球部で生活するための注意事項でした。
普通なら「学校の先生の言うことをよく聞け、授業中は騒がず集中して勉強しろ、友だちとは仲良くしろ」というのが一般的だと思いますが、そんなことは一切なく、野球部での生活に関することだけでした。
私も父も学校に入学するというより、野球部入部が意識の中でウエイトが高かったことがよくわかります。
父に言われた言葉の中で、入寮したその夜に理解できたことがありました。
その言葉は、「監督や先輩が黒いものを白と言えば、それは白いものになる」というものです。
上下関係は厳しく、入寮したその夜にこの野球部を選んだことを後悔した記憶があります。(笑)
これから新しい環境に飛び込む選手たちに贈りたい言葉は、
「前に出ろ」
「声を出せ」
「つるむな」
です。
前に出るためには積極性がないとできません。
前に出て自分をアピールしなければ、試合に出るチャンスすらもらえません。
自分の名前を呼んでくれるのを静かに忍耐強く待つのではなく、前に出て大きな声を出し「オレを使え!試合に出せ!背番号をよこせ!」とアピールして名前を呼ばせなくてはいけません。
また、打球が飛んできたとき、全力で前に出ることができなければランナーを刺せません。
声を出すこともそうです。
内に秘めた闘志?
そんなのダメです。
声を出すことで身体全体から覇気などのエネルギーが出てきます。
大きな声を出せと言いたい。
「つるむな」というのは意味はわかるでしょうか。
ネットで調べるとこのような意味です。
(連れ立つ。一緒に行動する。)
当時の中村監督の言葉を借りると、「弱い者が集まって傷をなめ合うな」ということです。
試合に出られない、努力を認めてもらえない、声を掛けてももらえないという状況にあったとしても、同じような状況の仲間と一緒にいるなということです。
中村監督は、このような弱い者、愚痴を言い合っている者の集団を「弱者共済組合」と呼んでいました。
こんな者が集まっても何も良いことはありません。
チームの仲間といってもレギュラー争いをするライバルです。
自分がレギュラーになるために、誰も助けてくれません。
弱い者の集団に入らず、一匹狼で努力を続けてレギュラーの座を掴んでもらいたいです。
下手くそだろうが何でもいいんです。
前に出て、大きな声を出し、一匹狼でライバルと戦う。
これさえやっておけば監督に名前が呼ばれるはずです。
私は現役時代に中村監督によく言われました。
「オレはお前の声にいつもだまされる。自信ありげに声を出しやがって、それで何かするだろうと試合に出してもいつも裏切りやがる。」
そんなことを言われても落ち込まず、いつも前に出て大きな声を出し続けました。
そして、その声で監督をだまし続けてチャンスをもらい、レギュラーとなりました。
前に出ろ!
大きな声を出せ!
一匹狼で戦え!
(つるむな)
新しい環境に飛び込む選手たち、毎年夏を楽しみにしてるぞ。