コーチの玉川です。
前回の続きを書きます。
私はそれまで、公立高校の試合はあまり興味が無く、
わざわざ見に行った事は一度もありませんでした。
ですが、この日は、たまたま
「高1になった息子が先発するから一緒に見に行きませんか」
と、その子の父親に誘われ、軽い気持で見に行きました。
季節は8月の終わり頃、ちょうど甲子園では
ベスト8ぐらいが出揃う頃です。
この時期、翌年の選抜甲子園大会の予選がスタートします。
その一回戦でした。
まず驚いたのは、その高校には監督がいない事でした。
聞く所によると、公立の進学高校の部活動は、
顧問の先生が未経験というのは珍しくなかったそうです。
この高校の先生も数学の先生と言う事で、
野球の指導は、全くできていませんでした。
全て子供達が、キャプテンを中心に自分達で練習し、
自分達でサインを出し合って試合をしていました。
父親の話しでは、学問が優先されたスタッフが揃うため、
そんなに珍しい話しではないという事でした。
私は一生懸命に自分達で声を掛け合い、真面目に頑張っている
選手達が不憫でたまりませんでした。
相手チームには監督と言う存在があり、ちゃんと指示を
していました。
でもこちらのチームは指揮する人がいません。
それでも何とか中盤までは食い下がり、同点のまま
終盤に入りました。
そして魔の回がやって来ます。
センターを守っていたキャプテンがエラーをしてしまったのです。
そのプレーをきっかけに、張って糸が切れたように
指導者の居ないチームはガタガタと崩れ、
そのまま負けてしまいました。
試合後、沈黙する輪の中心にはやはりキャプテンがいました。
自分のエラーで負けてしまった苦しみと、それでも自分が
輪の中心で話さなければならない苦しみ、
17歳の少年は二重の苦しみを背負い、何度も声を
詰まらせながら、
「あんなエラーしちゃって本当に悪い・・
二度とエラーしないように頑張って練習するから、
みんなも、俺見たいな奴がキャプテンで悪いけど・・
がんばろう・・・」
なんとかそこまで話し、後は泣くだけでした。
沈黙の中、一人の選手が、
「お前のせいで負けたんじゃねぇ! 」
と叫びました。
自分達がどうすればいいのか誰も教える人はいません。
どう進めばいいのか分からない絶望の中で、
泣いている子供達を見ながら私は、
彼らの真面目さと純粋さに本当に心を打たれました。
彼らの力になりたい。
心からそう思ってしまいました。
次回は私が子供達と接触し、選手達がどのように
夏の大会に向かって行ったかをご紹介します。
つづく