「血圧が高いですよ!このままだと、いつかライブステージで倒れることも…」風邪で近所の医院で高校の1つ下の医師から言われた。考えておくわ!と答えた。すぐに昔取材した免疫学の大家だった故・安保徹さんの著書を引っ張り出して調べた。私が40代初頭の頃。インタビュー後に、同席したカメラマンの血圧の話になった。私より一つ下のカメラマンは150あり、医者から降圧剤をすすめられた。安保さんは「私が医学生の時に、血圧の正常値は年齢に90を足しなさいと教わりました」と答えた。確かに、40歳のカメラマンなら130が目安だ。安保さんは、暴飲暴食の彼に、まず食生活と適度な運動をしてから医師に相談したら?とアドバイスしてくれた。

 日本人の2千400万人近くが降圧剤を飲んでいる高血圧大国。140くらいから医師は降圧剤をすすめる。でも、安保さんは「年を取ると血管が硬くなります。すると、血圧を若い頃より少し高めにして、抹消まで血液を押し出さないといけない。降圧剤を続けると、脳に血流が回らなくなり早く認知症の症状が出てしまいます」と言った。そして、当時は聞き流したが、降圧剤を飲み続けている人は、白内障、緑内障に罹りやすいとも。確かに、血流不足になれば、目や脳、腎臓にダメージがくるのは素人でも分かる。

 安保さんの「年齢プラス90」法則でいうと、古希の私は160で年相応の数字だ。高校の後輩医師の168の私の血圧に心配してくれるのは有り難いが老人なんだからいいんじゃないか!?と医者嫌いの私は自己判断した。ただ、気になったのが「ステージで倒れたらもうギター弾けませんよ!」のひと言だった。

 もう一人、お会いしたことはないが、信頼している精神科医の和田秀樹さんも、血圧170あり、心不全でもあり、降圧剤を服用したが!頭がフラフラして力がわかない!と、140まで下げているそうだ。何か気分的な面もあり、身体が火照るような息苦しい思いもあり、最後は主従医に相談した。

「倒れる!危険性を一日一錠のクスリで回避できるなら飲み続けた方がよくないですか?」

 好きな音楽をプレイしながら、舞台で死ねるなら本望!とは、さすがに決断できない。まだまだ、後10年は現役でいたい!そう思い降圧剤を飲み出した。

それまで、160~180あった血圧も120代に落ち着いた。私たち、高齢者が外食ランチした後には、全員がバッグからクスリを取り出して飲む光景を冷めた目で見ていた私もその仲間となってしまった(笑)

 まあ、70年も生きていれば、身体のどこかにガタもくる。今は従容たる態度で応対している。