歌手・三山ひろしの「落語歌謡厩火事」を苦笑いしなが楽しく聴いている。

姉さん女房のお崎さんは腕のよい髪結。年下の旦那はろくに働きもせずに昼間から酒ばかり飲む絵に描いたような髪結の亭主。お崎さんが惚れて一緒になったが喧嘩が絶えない。別れてしまえばいいものを、この遊び男の亭主はすぐに自分の方から謝ります。でも、また些細な事で喧嘩になる。夫婦喧嘩は犬も食わない仲みたいだがある日、堪忍袋の切れたお崎さんは仲人の所に愛想がついたから別れたい!と相談にくる。仲人が「あんな遊び男はダメ!だと結婚には反対したけどお前がどうしても…というから嫌々仲人を引き受けたんだ。別れろ!」と答えると「何もそんな言い方しなくても!あの人だって優しいとこあるんですよ!」と今度は亭主をかばう。じゃあ、「亭主の了見を試してみろ!」と提案する。それには、亭主の一番大事にしているモノを壊してみろ。そして、二つのたとえ話をする。中国の孔子が大切にしていた白馬が火事で死んでしまった。弟子たちは叱られると戦々恐々。孔子は「家の者たちにケガはなかったか?」と使用人たちの無事を心配し馬のことはひと言も触れない。それを境に「ご主人様のためには命もいらない!」と全員が感服した。かたや、麹町のある殿様は大の陶器好き。ある日、奥方に一番大事な皿を来客用に持参するよう伝えた。二階から皿の入った箱を持って階段を降りる時に奥方は滑って落ちてしまう。その時「皿は無事か、皿皿皿」と陶器のことしか口にしなかった。後日、奥方の家から使者が来て「妻よりも皿を大事にするような人に娘をおまかせできません」と離縁の申し出。この殿様は、その後一人で寂しい晩年を過ごした。仲人は大事している茶碗をわざと落として、その時に亭主がどんな態度を示すかで本心が分かると…。

サゲは「おい、ケガしてねえか?」と、麹町じゃなく孔子様だった。お崎さんは感涙しながら「そんなに私のことが大事かい?」「あたりめえよ、お前にケガでもされてみろ、明日から遊んで酒が飲めねぇや!」

 三山ひろしくんは、立川流の噺家の弟子になり、落語を勉強中とか。三波春夫の講談風の浪曲歌謡ではなく、落語歌謡の道を進んでいる。落語を聞かない人は多い。吉本の漫才なんかより何十倍も楽しく勉強になると思うのだが…。

 もともと他人の夫婦円満には、とにかく先に謝ることだ!と言うのは噺家・立川談慶さん。元都庁出身の作家、童門冬ニさんは「過度の忖度は控えること。忖度は、相手の気持ちを察するということで善意です。あまりしっこいと、相手の迷惑になる。愛情も善意も八分目でおさえておいた方が無事であり長続きする」そうです。夫婦円満も適度な距離感で付き合うことですね。自分はどう思われているかを確かめる方法も落語みたいに着地すればいいのですが現実は大喧嘩になるかも!私がギターを壊されたら…、やはり許さないかも?!