いつでも旅に出たい

いつでも旅に出たい

プロのオンライン家庭教師&塾講師であり、現役の編集・ライターです。家庭教師は主に「マナリンク」で稼働。
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授業での気づきなどを書いています。

大学入試で一般学力試験が少なくなり、

記述問題を入試で取り扱う生徒も減っています。

 

どうしても国語の対策は共通テストか小論文がメインに。

記述問題対策の依頼は共通テスト後、二次試験までの

短い期間に集中するのがほとんど。

 

そこで常々思っていたのが、

裏を返すと二次では記述問題が

「勝負の分け目」になっているのではということ。

 

そもそも記述問題は独特の難しさがあって、

短くても「伝わる文章」を書く必要があります。

 

 

「伝わる」ことを前提に据えれば

記述問題にまつわる色々な疑問が解決します。

 

「模範解答を見るとこんな言葉、本文に書いてないよ!」

といったことが頻発しますが、

相手に「伝わる」ために必要と思われる要素は

自分で補足しなければなりません。

“似たような表現”は、本文に必ず出てきています。

 

ここで活躍するのが「語彙力」。

字数制限の中で端的にまとめるために

言い換えの力が試されるのです。

 

そもそも読解力も必要だし、

ピックアップした言葉をつなげる文章力も必要だし。

受験生がひっかかるポイントもまだまだあります。

 

これを約1カ月の対策でクリアできる人が

はたしてどれだけいるのか……。

 

常々試験とはマルチタスクだと思っていますが

国語でその最たるものが「記述問題」なのではないでしょうか。

 

 

ちなみに、高校の定期テスト。

生徒と解きなおすときに見る模範解答が

「伝わらない」ものばかりでげんなりします。

特に進学校がひどい傾向があります。

 

あれをもとに指導するのは

無理ゲーだと思う講師は多いはず。

せめて見直しのときに解説したって、高校の先生。

いろんなタイプの子どもたちを見ていると、

「わかる」とはどういうことなのか

ふと考えることがあります。

 

脳科学者の山鳥重氏によると、

私たちが「わかった!」と感じる瞬間には

二つの異なるパターンがあるそうです。

 

 

一つ目は、「重ね合わせ的理解」

 

頭の中にあらかじめ

「用意されたモデル(お手本)」があり、

それと目の前の問題を重ね合わせることで

「わかった!」となるタイプです 。

 

学校教育の多くはこれ。

「正しいモデル(解き方の公式や暗記項目)」を

先生や教科書が教えてくれます 。

 

テストでは「習った公式(モデル)」を、

問題にうまく「重ね合わせる」ことができれば、

点数がもらえます 。

 

知識の土台のためには、

とても大切なステップです 。

でも、これだけだと、

応用問題や初見の問題で

パニックになってしまいがちです 。

 

 

もう一つは、「発見的理解」です。

 

頭の中にモデルがなく、

自分で新しい仮説を立てて試行錯誤しながら

答えを発見していくタイプの「わかり方」です 。

 

現代の入試(特に難関校の記述や小論文)や、

これからの社会で必要とされるのは、

まさにこの自分で仮説を立てて解決していく力 。

 

 

 

学校の授業や集団塾は性質的に

前者の「重ね合わせ的理解」が

中心になりがちです 。

 

もちろん中には何も言わなくても

「発見的理解」の動きをする子もいます。

 

でも多くの場合、自分で気づいて

自分で仮説をつくり出し、

観察まで実行するのは難しいです。

 

そこで大人ができることは少しだけ呼び水を使って

自分の足で歩くことを後押ししてあげることなのかと思います。

小論文は推薦入試や国公立後期で必要になり

学校では授業をすることはほぼないため、

個別での対策が必要になります。

 

課題文をベースに書くタイプ、

テーマだけポンッと出されて書くタイプなどがあります。

 

小論文の定義を勝手にもう少し広げると

一般的なタイプに当てはまらない

ユニークな課題を出している大学があります。

 

今日はそんな大学の変わり種を紹介したいと思います。

 

 

私がこれまで「特に変わっているな」と思ったのが

立教大学異文化コミュニケーション学部の

推薦入試の課題作文です。

 

 

    

あなたは、異なった惑星から、今から25年後の地球にやってきた。そこであななたは、奇妙に思われるさまざまな特徴に満ちている社会に遭遇した。あなたは手持ちの装置を使って、それらの特徴の内の1つに介入する。その結果、あなたは、ある成果を得ることができたが、それと同時に、あなたの介入は、意図せざる結果をもたらすことにもなった。そしてこの経験を通して、あなたはこの社会について当初は持っていなかった理解と、ある新たな能力を得ることとなった。


6つの下線部に焦点を当て、以上のSF的なシナリオに肉付けして、ストーリーを創り出してください。
ストーリーの創作にあたっては、以下の2点に留意してください。

 

①25年後にあなたが見た地球の状況についてのリアリティー
(現在の地球社会との関連性、25年後にそうなっていることに対する説得性)


②ストーリーに意外性を備えていること

 

 

このような創作的な課題で必要なのは

“想像力”だと思います。

25年後の地球をリアルに描ける想像力。

異なる社会で得られる成果と

意図せざる結果(デメリット)を予想する想像力。

未来に必要な理解と新たな能力を

先見できる想像力。

 

そこにはもちろん25年後を予想できる

知識や知見も関わってきます。

 

「違う」ということが前提の異文化を学ぶ学生に大切なのは

きっと「違い」を想像できる能力。

 

文学部や芸術学部に多い創作課題ですが

国際系の学部での試みだからこそ斬新で

今も強く印象に残っています。

 

こういう課題は高校生が陥りがちな一般論に収束しなくて

個性が大爆発するので添削していてもおもしろい。

 

「意外性を備えていること」って

どんな基準!? とか

ツッコミながら考えるのも味わい深いです。

限られた文字数の中で、自分の意見を書く小論文。

決められた紙面の中で、写真や文章を魅力的に配置する雑誌。

 

この二つはまったく異なる分野のようでいて、

実は共通点があると考えています。

 

その共通点を5つ、ピックアップしてみました。

 

 

①「企画」を立てる(テーマ・ターゲット)

 

雑誌を作るとき、まず決めるのは

「誰に、何を伝え、どう動いてほしいか」です。

 

小論文もほぼ同じ。

小論文に置き換えると、

 

ターゲット:出題者(大学の先生)

ゴール:「この受験生は我が校にふさわしい」と思わせること

 

となるでしょうか。

 

ここがブレると、どんなにアイデアが斬新でも

企画はボツになってしまいます。

 

 

②「取材」と「セレクト」(リサーチ・要素抽出)

 

次に欠かせないのが、リサーチ・裏どりです。

 

膨大な資料を集めて精査し、

ときには足を運んで自分の目で確かめ、

その中から誌面に載せるべき情報を

決め込んでいきます。

 

情報(ネタ)や選定が良くないと

編集長や先輩編集者にやり直しを命じられます。 

 

小論文でも、蓄えてきた知識や課題文の中から、

論証に必要となる要素をピックアップし、

どの情報を使うかセレクトする作業が欠かせません。

 

 

3. 「ラフ」を描く(デザイン・構成)

 

編集者は、1ページまたは見開き2ページの空間に、

「ここに写真を、ここにコピーを、ここにはあしらいを」と

ラフ案と呼ばれる下書きを描きます。 

 

このラフ案は、まさに小論文における「構成メモ」。

 

「限られた文字数(スペース)」の中で

意見、根拠、例示、結論の要素を配置し、

読み手が迷子にならない論証を考えます。

 

小論文は序論・本論・結論の型が決まっています。

 

4. 「発注」して「ピース」を集める
 

雑誌では、カメラマンやライター、デザイナーなどに

素材を依頼しますが、

小論文ではその何役も自分でこなします。

 

写真:説得力のあるエピソード

文章:論理を繋ぐ的確な言葉

デザイン:読みやすく伝わる段落構成

 

これら一つひとつのピースが揃って、

説得力が生まれます。

 

 

5. 「読者の行動」を促す(クロージング)
 

「この服が買いたい!」

「ここに行きたい!」

と思わせるのが雑誌の力。 

 

小論文の出口も同じ。 

 

読み終えた瞬間に、採点者が

「この子の考えをもっと詳しく聞いてみたい(合格させたい)」

という欲求を抱くかどうか

ではないでしょうか。

 

 

「書くことがない」

「書くことが整理できない」

という悩みは小論文ではあるあるです。

 

それはまだ「編集」の技術を

習得できていないだけとも言えます。

 

こうして書き出すと

生徒がどこでつまずいているか

分かりやすくなりました。

 

編集者としての経験を生徒に伝え、

彼らが最高の1ページをプロデュースする

「編集者」の視点を持てたとき、

小論文はもっと面白く、

そして強くなりそうな予感がします。

 

 

 

 

 

子どもはどうして宿題を早くやらないのか?

 

 

その原因について調べていた時に

「先延ばしのメカニズム」に出会いました。

 

実は、子どもが勉強を先延ばしにするのは、

単に「やる気」や「根性」がないからではありません。

私たちの脳がもともと

「先延ばしするようにできている」からだとか!

 

 

狩猟採集時代、人間にとって

「目の前の食べ物を今すぐ食べる」ことが

生き残るために有利でした。

 

そのため、私たちの脳には

「衝動性(今この瞬間だけを考える性質)」が

強く刻まれています。

 

受験勉強のような「将来のため」の行動は、

脳の進化の歴史からすると、

とても苦手な分野なのだそうです。

 

 

 

組織行動学とモチベーション研究の第一人者である

カナダ・カルガリー大学のピアーズ・スティール教授は、

先延ばしの仕組みを次のような方程式で表しました。 

 

期待 × 価値 ÷ 衝動性 × 遅れ = モチベーション

 

勉強が進まない子どもに当てはめると

こんな感じでしょうか。

 

期待: 「自分にもできそうだ」という自信

価値: 「これをやると良いことがある」というご褒美の価値

衝動性: 目の前の誘惑(スマホやゲーム)への弱さ

遅れ: 報酬が手に入るまでの時間

 

「結果が出るのがずっと先(遅れが大)」で

「スマホが近くにある(衝動性が大)」状況では、

モチベーションが下がりやすいということ。

 

ここで思い出したのが

「先延ばしの報酬」の話です。

 

 

「報酬の先延ばし(遅延満足)」は、

将来の大きな成果のために

目先の欲求を我慢する心理的能力のこと。

 

心理学では、これを「満足遅延」と呼びます。

 

一方、目先の誘惑に負けて

行動を後回しにする傾向を

「現在バイアス」や「遅延割引」といいます。

 

現在バイアスや遅延割引は

もう少し複雑な仕組みだったのですね。

 

 

将来の大きな成果=受験の成功のために

役に立つのは当然「報酬の先延ばし」の能力。

 

1970年代にスタンフォード大学の

心理学者ウォルター・ミシェルが行った

有名なマシュマロ実験でも、

誘惑を我慢できた子どもたちは

学業成績や経済的成功など

ポジティブな傾向を示したとか。

 

遅延への耐性を身につければいいと思うのですが

個性もあるし子どもだから情緒も不安定だし

そううまくはいかないですよね。

 

どんな対策ができるのか。

価値にフューチャーすると、

目的意識を持つことが挙げられます。

課題が目標を達成するのに

役立つものと結びつけること。

 

価値が大きく感じられれば

先延ばしのリスクが下がるという仕組み。

 

もう一つ。

生産的な先延ばしを許容すること。

どうしても重い腰が上がらない時は、

まずは「漢字10分だけ」など、

少し楽な課題から手をつけます。

 

一旦始めると、脳が

作業モードに切り替わりやすくなります。

 

 

先延ばしには「意志の弱さ」だけでなく

「脳の仕組み」も関わっています。  
 

子どもの意志が弱いと感じるから「ただ叱る」では

負の無限ループを脱出することはできません。

 

勉強の「価値」を上げたり、

周りの「誘惑(衝動性)」を減らしたりする工夫を

一緒に考えてみては。