Johnny Hodgesの古い録音を復刻したLPをご紹介したい | 続・公爵備忘録

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ジャズ・オリジナル盤の音質追及とエリントンの研究。

ホッジスの発掘盤・海賊盤はたくさんあるけど、音質がイマイチのものが多く、もし入手するなら、オススメ盤はコレ、というお話。


ホッジスが独自の吹奏スタイルを完成させたのは1930年代後半で、それから亡くなる1970年まで、30年以上無二のサウンドを聴かせた。その期間のレコードならどれを聴いても、すぐにホッジスだと分かる。

彼の奏法上の特徴は、非常に滑らかなポルタメント(ギターのチョーキングみたいな、音程の上げ方)にあって、その奏法はホッジスが確立したと言っても過言でない。

エリントン楽団在籍時も、独立して自分のバンドを率いていた時期も、ホッジスの吹奏には好不調の波がない。だから『ジョニー・ホッジスのレコードはどれも平均点以上』なんて評論もある。

ただ、それはホッジスのレコードをあまり聴いていないと思われる評論家の説であって、1960年代のVerveレーベルの諸作は、残念ながらジャズとしては駄盤揃い。

 

ホッジスの吹奏自体は良くても、イージーリスニング的だったり、リズム&ブルースだったりで、とてもジャズファンにオススメできるレコードではありません。

Verveにはそういうのが10枚以上あって、良いと思えるレコードは1~2枚だけなので、ハズレを引いてしまう確率が高い。もしホッジスを聴いてみようと思ったら、50年代のMercury~Norgran盤から、というのが筆者のオススメ。

それが気に入っていただけたなら、今回取り上げるような発掘盤とか海賊盤に手を伸ばしてみるのもアリかな、と思います。

ホッジスの魅力は何と言ってもクリーミーな音色。発掘盤とか海賊盤は音質的に問題があることが多いので、音の良し悪しを中心に紹介してみます。


Johnny Hodges In Disco Order 

Vol.1

Vol. 2

Vol.3

Vo.4

この4枚は1930年代、エリントンが主要メンバーをリーダーにして録音したもの。エリントンは他にもクーティとかビガードのセッションもやったけど、Ajaxレーベルが取り上げたのはホッジスだけ。

 

ホッジスのリーダー録音のうち、OKテイクはすべて網羅されている。実質エリントン楽団の演奏なので、エリントンのコレクターなら必携でしょう。

ただ、音質的には平凡で、世間のジャズファンには向いていません。Ajaxは古い録音のLP化を専門にしていて、他にもたくさんの発掘録音シリーズがあるけど、音質的にはホメられないです。


Love In Swingtime

上掲のAjaxと同じ音源から16曲をピックップしたLP。音質的にAjax盤より数段良く、30年代のホッジスを聴くのに向いていると思います。

スェーデンのTaxレーベルはエリントン関係の古い録音を大量に復刻していて、コレクターには貴重な存在。エリントンマニアならAjax盤だけど、逆にコレクターではない人には、1枚に集約して音も良いTax盤の方がオススメ。


Duke Features Hodges

1944年から46年にかけての、エリントン楽団のエアチェックから、ホッジスの見事なソロが入った曲をピックアップしたLP。

本盤の音源は他にLP化されていて、特に新しさはなく、音質的にもまるでダメだけど、ホッジスの名演奏だけを集めるという、マニアックな編集がエリントンコレクターにとっては魅力的なLP。


Unique Jazzはイスラエルの海賊盤レーベル。ジャズファンにはミンガス~ドルフィーのライブ盤が有名ですね。


Ellingtonia!

Onyxレーベルは、プレスティジでプロデューサーを務めたDon Schlittenが70年代に興したレーベルで、Onyxでは古い録音のLP化を扱った。

本盤では1946年、1950年、1963年の録音がピックアップされている。ホッジスに焦点をあてた編集のハズなのに、ホッジスのソロがない曲も入ってるのが不思議。

細かい文字でビッシリ書かれている裏面解説を読んでみても、Don Schlittenの意図がわからない。他レーベルでLP化から漏れた曲を集めたのかな?

コレクター的には評価が難しいLPだけど、音質的には標準より良い。RCAのエンジニア、Paul Goodmanがマスタリング担当としてクレジットされていて、音質に注力したことがわかる。



The Rabbit In Paris

エリントン楽団が1950年に欧州ツアーをしていたとき、御大抜きで録音された音源をまとめたLP。これは復刻盤で、LPのオリジナルは仏Vogue12吋盤。

エリントン色は薄くて、ややR&B的な要素が入った、ホッジスが志向するスイング演奏になっている。1年後に独立する前兆のような雰囲気を感じる。


音質的には平凡。スクラッチノイズがあるので、オリジナルSPからマスタリングされたようだ。


Johnny Hodges and His Friends at Buckminster Square

ホッジスがエリントンから独立して、自身のバンドを率いていた時期の音源をレコード化したもの。エアチェックなので音質は推して知るべし。

ジャケットには曲目以外に何の情報も書かれていないけど、マニアによって研究され、1951年10月、マサチューセッツ州ボストンでの録音と言われている。

研究によって判っているメンバーは名前が通った人ばかりで、羽振りの良さをうかがわせる。
Emmett Berry : tp
Lawrence Brown : tb
Johnny Hodges : as
Al Sears : ts
Leroy Lovett : p
Lloyd Trotman : b
Joe Marshall : ds

残念ながら音は良くない。海賊盤ですから、マニア以外にはオススメできません。


Enigmaという海賊盤レーベルは、他にもエリントン物を何枚も作っている。白の汎用ジャケに紙片を張り付けた、典型的な70年代の海賊盤。


Johnny Hodges At A Dance, In A STudio, On Radio

このEnigma盤には3つの異なる録音が収録されていて、1954年のダンスパーティの録音では、コルトレーンの初ソロも聴ける。その他は1956~57年のスタジオ録音と、最晩年のエアチェック。

コルトレーンのコレクターにとって価値のあるレコードかもしれません。60年代と同一人物とは思えない、大人しい演奏ですけど、コルトレーンらしい節回しが聴けます。


Johnny Hodges All Stars

1961年3月14日、スェーデン・ストックホルムでのコンサート録音。

エリントンが映画『Paris Blues』制作に関わっていた時期、ホッジスはエリントン楽団を率いてツアーしたので、その頃の録音だと思われる。

演奏内容はエリントン楽団そのもの。1951年から56年まで、独立していた頃は独自色が濃い演奏をしていたのに、60年代の演奏がエリントンという点が面白い。たぶんエリントンの譜面をそのまま使ったのでしょう。

Spook Jazzというのは英のレーベル。ただこの他に持っている盤がなく、良く分からない。たぶんテレビ局が撮影したフィルムを音源として制作された盤だと思う。、音質的には並レベル。


Johnny Hodges/Harry Carney Sextet

1961年3月22日のライブ録音。上掲盤と同様に御大抜きのエリントン楽団で、欧州のどこかでのコンサートでしょう。

Raritiesは珍しい録音を発掘してLP化した英のレーベル。ただ本盤は音質的にとても劣悪で、エリントンのマニア専用。世間のジャズファンにはオススメできません。