全盛期のペッパーは、聴く人をトリコにする | 続・公爵備忘録

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ジャズ・オリジナル盤の音質追及とエリントンの研究。

1950年代はアートペッパーの全盛期で、特に1956年後半から57年前半までの1年間が、神っているように素晴らしい。この時期のペッパーの魅力に取りつかれたら、もう離れることが出来ない。


筆者の場合は40才前後だった。若いころはアルトサックスといえばドルフィばかり聴いていて、それからウッズとかマリアーノとか。あるとき突然ペッパーが大好きになってしまった。

 

渋谷JAROで、イントロのペッパーを衝動買いしたのが始まり。衝動買いといっても、〇十万円もするピカ盤を突然買ったのには背景と理由があるが、長くなるので省略する。

 

そのオリジナル盤の素晴らしさに圧倒され、それからペッパーのレコードはたびたびJAROで買った。コンディションが良いものが買えるから。

 

お店の在庫にあった盤が気に入らず、『最高のコンディションの盤が欲しい』とダダをこねた時もある。柴崎さんは色んな方面に仕入れルートをお持ちだったから、数か月も探してくださった。

 

そういう時にお値段は問えない。もちろんプロの商売人は相場を理解しているので、無茶な値段は付けないけど、だまって言い値で買う。自分で探さずにお金で解決するとは、金欠サラリーマンとしてあるまじき行為だと知りつつも。

 

40才代の数年間、ペッパーのレコードを買うために、すべてのお小遣いをつぎ込んだ(気持ちとしては)。ペッパーの魅力が分かってしまったら、オリジナルを集めずにはいられない。

 

もともと音質重視で、音さえ良ければセカンドでも再発でも良いと思っていて、あまりオリジナルにこだわりはないけど、全盛期のペッパーだけは別だね。(こだわりがないから本物のコレクターにはなれなかったけど)

 


Return of Art Pepper 1956.08


ペッパーの吹奏はDiscovery盤の頃のように軽やかで爽やか。 Jazz Westは特にハイファイなわけではないけど、50年代のジャズの音がする。音がホントに素晴らしい。

今回初めて裏面解説を読んで、アルトサックスは独学だと知った。影響を受けたのはJoe Thomas、それからLester Young、Johnny Hodges、Ben Websterだと。

 

パーカーの名前がないのは頷けるけど、ホッジスとベンウェブスターは意外だね。エリントンを聴いて育ったのかな。

 


The Marty Paich Quartet Featuring Art Pepper 1956.08

軽やかな吹奏スタイルに、哀愁を帯びたサウンド。ペッパーの絶頂期を感じさせる名盤。

 

音質的には中域が盛り上がっていて、ジャズらしさがある。ただアルトにエコーが強くかかっているせいか、音量を上げて聴くのはキツい。


以前はセカンド(黄色ジャケ、ピンクラベル)も持っていたけど、カゼひきなので処分した。tampaのピンクラベルはほとんどカゼひきなので安いですけど、もし買うなら試聴してからご判断を。基本的にtampaはどのレコードも黒ラベルのオリジナルが良いです。

Chet Baker and Art Pepper Playboys 1956.10

軽快で溌剌なペッパーが聴けるレコード。録音カーブはAESみたいな感じ。オリジナルはフォノイコかトーンコントロールで調整してお聴きください。

 


Art Pepper Quartet tampa 1956.11


ペッパーの最高作はIntroのArt Papper Quartetだけど、本盤はそれに次ぐレコードだと思っている。哀愁を帯びたアルトが素晴らしい。

 

DUさんの買取情報によると、ジャケットの上下が割れてないものは希少だそうだ。所有盤も上部が2つに全割れする寸前の状態。このジャケットは弱いです。

 

楽譜はBesame Muchoだけ。I Surrender Dearはない。残念。

音質的にはTampaでのTP-28よりアルトのエコーが減って、音量を上げても楽しめる。中域が太くて音質的にサイコーだ。

 


Just Friends  1956.12


Bill Perkinsを聴く時にはA面、ペッパーを聴くときはB面から。ゆったりスイングするBill PerkinsとRichie Kamuca、それに対して切れ味鋭いペッパー。

 

Pacific Jazzの名盤たちの中では埋もれてしまうレコードだけど、聴くポイントを絞れば素晴らしさが分かる。

 


Free Wheeling 1956.12


大傑作Modern Artの直前の録音。相当に充実していたハズだけど、本盤では十分に実力が発揮されているとは言えない。ペッパーの出番が少ない。

 

ペッパーとマーシュのソロは個性的ですぐに分かる。残りのパーカー風フレージングのテナーがTed Brownかな、と思える。Ted Brownは個性が薄いね。

 

音質的にはシンバルがすごくリアルな再生音で、反対にベースはRVGよりもっとボアボア。録音エンジニアはMarc Aubortのハズだけど、らしくない感じがする。


Modern Art 1956.12


ジャケット、演奏内容、音質とも絶品で、ジャズレコードの王様。

 

キズやホコリなどによるプチ音ひとつない完璧な盤質。これより良い盤はたぶん存在しない。ジジイになって耳が悪くなってしまったら、レコードもオーディオも全部処分するつもりだけど、これだけは手放したくない。

 


Collections 1957.01

Red Norvoのリーダー盤ですけど、99%の人はペッパーが目的。ペッパーの吹奏は素晴らしいのに、出番が少なすぎる。ソロをまわしていく必要なんかない。もっとペッパーに吹かせてほしかった。Modern Artとの差はそこだけ。


Meets The Rhythm Section 1957.01

さんざんステレオを推奨してきたけど、もちろんモノラルも悪くない。

 

 

The Art of Pepper 1957.04

オメガテープとして有名な録音。レコード化したのは独Baccarolaが最初で、12吋LPでは本盤がオリジナルと言われている。ただ、音質的にはあまり良くない。

 

ちょっと怪しくなりかけた頃のペッパーで、運指がモタついている気がする。これを絶頂期の録音に入れるのは違うという意見もあるでしょうね。

 

Omegaはオープンリールのみで発売された。あまり売れなかったらしく、そのテープは超レア。でもOmegaはのちに12吋LPで発売された。それは残念ながら持っていない。

 

所有盤はVSOPの再発盤。裏面解説によると、Omegaセッションは58年1月録音となっているけど、Wikipediaでは57年4月録音。どっちが正しいのかよくわからない。

 

個人的には58年の方が正しいような気がする。というのも、57年1月録音のMeets The Rhythm Sectionからの落差が大きいから。たった3か月で切れ味が悪くなるだろうか?

 

Vol.1はBaccarola盤と同内容。Vol.2はBaccarolaでは発売されなかった音源。

 

音質的にはアルトの音はBaccarolaより良いけど、一部でBaccarola盤にはなかった歪みがあり、ドラムスの音も悪くなっている。マスターテープの劣化が進んだのかも。オリジナルと再発は一長一短かな。