曽根圭介 「熱帯夜」


曽根作品二つめの読了。
「鼻」ですっかり魅了され、この作品では日本推理作家協会賞短編部門を受賞とのことで期待は否が応にも高まるばかり。

しかし、その受賞作「熱帯夜」はそれほど…。ハードル上がりまくってしまったかな。なんと言うか、期待していたよりは普通な感じだった。なんかイヤな予感が…。魔法がかかったように前作が余りにも良過ぎたかと。不安になりながら次へと進んで行ったけども、そんなの要らぬ心配だった。次の「あげくの果て」、「最後の言い訳」と読むに連れて思いっきり加速してくれます。


社会派ってむしろこういう人を言うんではないかと。なにも真面目臭ったものばかりが社会派な訳ではなく。ブラックな笑いを散りばめて力を抜いて面白く読めるのに、その問題への漠然とした不安や焦りみたいなものが澱のように残る。本当に色々とこじらせていったら、近い将来こんな世界になり得るかもとザワザワするような妙なリアリティーがあって。一体どこまでふざけているのか、どこまで真面目なのか。そのあやふやなラインが凄くいい。説教臭くなり過ぎず、社会問題をブラック・ユーモアで遊んじゃってます!的な鼻につく尖りも無く。どっちにしろどこか冷静で冷めた感覚と言うか。ん~、冷めた感じっていうのも違うかなぁ(笑)フラットな感じって言うのか…。それは道尾秀介を読んでも感じるのだけど、ダークな所を描いてもモラトリアム的な臭みが無いんだよな~。やっぱり、そこが凄く新しく感じる。特に「最後の言い訳」「あげくの果て」は読み応えあって夢中になりました。


また次も読みたくなる。