幻の映画、『怪談せむし男』やっと観れた…。
その存在を知ってから、はたしてどれくらい経ったのか。これまでも何度か観られるチャンスはあったものの、いつも気付くのが遅れては涙を飲んできただけに喜びもひとしおだった。
で、いつものように存在を知った時点でストーリー等の前情報を極力入れないようにしているためか、監督佐藤肇って完全に忘れていた。監督くらいは誰なのか見たと思うのだけど。名前見て、あれ…?!この人…。そう!『吸血鬼ゴケミドロ』作った人。今回まで全く知らなかった(笑)これはさらに期待が高まる。
だがしかし、こういうのって待たされた分、勝手にハードル上げ過ぎて肩透かしを食らうことも多々あり。ホラーとして真正面から超自然的なモノを描いていると見せかけては、結局は生きた人間が裏で糸を引いていただけのただのサスペンスでしたっていう興醒めするオチのものも多々あったり。あまり期待をしないようにと自戒を込めて観たけども…、いやぁ、想像を上回る面白さ。いやぁ、良かった!(笑)こういうホラー映画観て、久しぶりにワクワクして興奮して夢中になった。
霧に浮かび上がる洋館、ロウソク、十字架、地下室、カラス、エロス…全てが完全に西洋のゴシック・ホラー。正直に言うと、揺るぎないこのムード、妖しく漂うこの雰囲気さえあれば、話なんか実はどうでもよいのです(笑)もうその表現がとにかく素晴らしい!ロウソク持って、長いネグリジェを引きずりながら地下室の階段を登る姿…、最高です。
ああぁぁ~、こういう映画が日本にもちゃんと存在していたんだなぁと感動的ですらあった。記憶の限り、ここまで格好良い西洋的な怪奇ムードがある邦画作品を観たことがない。他には東宝の血を吸うシリーズが浮かぶけれども、自分の中では何か今一歩な感じが拭えず。このシリーズより10年程も前の作品になるんだもんなぁ。やっぱり時代的な要因も多分に含まれるのか。何はともあれ、60年代万々歳ですね(笑)
加藤武が主演級で出ているなんてことも全然知らなかった。この人が怪奇映画?と上手く想像出来なかったけども、意外とすんなりハマっていて驚いた。今にも「よぉーし、分かった!!」とか言い出すんじゃないかとハラハラしながら観てたけど。(←病気)
泥臭くない抑えた演技で、画面に重厚感が出てきて良かったな~。調べたら当時なんと35歳くらい。凄いすね、貫禄ある。この人が居ると居ないとでは全然映画の雰囲気が違った気がする。重みが出ると言うか。改めていい俳優だったんだなぁと。
西村晃は言うに及ばず。素晴らしい怪演。呪われた自らの運命に悲哀まで滲ませる。女優陣の影が薄いのがちょっぴり残念だけど。もっとフェロモン撒き散らして欲しかった(笑)
観て良かったな~。とても楽しめた。こういう作品がこの日本にもちゃんと存在しているということを多くの人に知ってもらいたい。手軽に観られないのは残念極まりないけども。この先も、恐らくソフト化されることはないんだろうかね。
怪談の名を借りた和製ゴシック・ホラーの最高峰、興味があれば是非。ビジュアルもむしろこっちの方が合ってる(笑)