都筑道夫 「袋小路」

中村文則 「惑いの森」

湊かなえ 「夜行観覧車」

米澤穂信 「満願」

原田宗典   自選恐怖小説集「屑籠一杯の剃刀」

伊岡 瞬 「いつか、虹の向こうへ」






「惑いの森」恐らく10年近く前に読んだ「銃」以来。モヤモヤと胸に抱えてるものをズバッと言ってくれるような気持ち良さがあって、とても共感出来る。想像よりもストレート。ただ、ちょっと青臭くて、読んでて小っ恥ずかしくなる。昔の自分と対面させられるような(笑)




「夜行観覧車」とても読みやすくて、冒頭から世界に引き込まれて一気だった。登場人物それぞれにそれぞれの思いがあって、誰が悪いとか一概に言えず、視点が変わると善悪みたいなものがすぐ覆されてしまい翻弄される。そうだよなぁ…てね。その振り幅が大きくて読み応え抜群。手をかける時って実際あんな感じなのかもなぁ。もう何もかも終わらせたい、ただこの状態を終わらせたいて一心で。リアリティあってドキドキした。最後は少し性急な気も。




「満願」全体的な雰囲気、妙に冷めた視点の主人公達も好み。飛び抜けて「万灯」が良かったな~。冷静過ぎるが故に、加速度的に暴走していく様が恐くなった。頭は冴えに冴えているのに、身体だけが熱にうなされて勝手に震えているような。スピード感溢れ、ラストの余韻も深い。
ただし、全体的には何かもう一つ足りないような…。連城三紀彦の再来と書いてた人が居たが、なるほど~。でもん~、それは言い過ぎな気が。




「屑籠一杯の剃刀」腑に落ちない出来事にあった時、自分ならこうするだろう、こうしたいって欲求と主人公達の行動とが上手くリンクしない。謎に迫ろうとしないと言うか。そこから一歩動き出すミステリー的な展開があるともっと好きなのにな(笑)高橋克彦なら、憑かれたようにそこへ迫って行こうとするのに。
駆け引きに彩られたバブルの香り漂う「ポール・ニザンを残して」が良かったな。




「いつか、虹の向こうへ」タイトルからして、もっとしっとりしてるのかと思いきや全然違った。
うらぶれた主人公のおっちゃんが哀愁を誘う。格好いいんだよなー。なんで俺こんなことしてんだ…?と素になる自分を自虐的に笑い飛ばし、言い訳せずにタフに行動してね。それは「大事なものを守るため」。その理由が分かる時、こそばゆいような居心地の悪さと何とも言えない温か味が胸に沁みる。いい作品だった。絵本の挿話も。横溝正史ミステリ大賞作てイメージとも全然違ったけども、全く別の切り口で楽しめた。ページが少なくなるに連れ、この人達とももうすぐお別れかとちょい寂しくなったよ。