学校から帰って来ると近所のおばさん
数人が立ち話をしていた。
「ねぇ〜本当にかわいそうよね!」
「あの店もどうなるのかしらねぇ〜」
私の存在に気付くと会話はパタッと
終わり「あらー、お帰り!」と
明るく声を掛けてくれた。
その会話がMちゃんの事であり
八百屋⚪︎野商店である事は
直ぐに分かった。
おばさんもおじさんもMちゃんも
居なくなって閉じたままの
八百屋⚪︎野商店は一躍有名になった。
その後暫くの間、私は学校以外
どこにも外出しなくなった。🏫
それまでは学校から帰るとランドセル
を玄関に放り投げるようにして外に
出て行く子供だった🎒
修道院でMちゃんに会ってから、
ご近所のあちこちで噂話が
囁かれるようになってからは家で
1人、絵本を読むようになった。📕📙
幼い頃、父が買ってくれた
「マッチ売りの少女」と「人魚姫」
2冊の絵本は文字が少なく、あまり
鮮やかとは言い難い色合いの絵本
だったが
その頃の私にとっては心の
よりどころだったのかも知れない。
貧しいマッチ売りの少女の運命。
想いを伝えられず泡となる人魚。
悲しい定めの主人公はどこかMちゃん
と重なったからなのかも知れない。
そして絵本を見ながら泣いていた事も
あって、そんな私を母は心配して心を
寄せてくれた。
元々、強情っぱりで滅多な事では
泣かない子として知られていた。
そんな私が独り泣いている姿は
さぞかし珍しい事だったに違いない。
学校から帰り、夕食までの間を
いつまでも絵本を開いている私に
母が小さな皿に乗せて運んで
くれたのは
さつまいもの天ぷら1枚だったり、
のり巻きの具材が飛び出ている端の
部分だったり、南蛮漬けの
小あじだったり...
元々、食べ物に弱い私はその瞬間、
元気を取り戻したと思われ、まんまと
その策に引っかかった。
母の作戦は成功だったらしい。